PLANT MORPHOLOGY
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表紙
特集 最先端可視化技術による植物解析~見る顕微鏡から捉える顕微鏡へ
  • 朝比奈 雅志, 豊岡 公徳
    2020 年 32 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    近年,顕微鏡技術の発展と装置の高度化により,組織・細胞の構造や変化を,3次元または4次元的に捉えることが可能となってきた.さらに,遺伝子発現やタンパク質, 植物ホルモンをはじめとした代謝物の様々な可視化・分析手法を用いることで,微細構造の観察と同時に細胞内での分子の動きを直接捉える試みが進められている.今回,最先端可視化技術を用いた時空間的解析を進めている研究者が集い,これらの技術的基盤,ノウハウ,応用例などを紹介するとともに,今後の課題について議論する場として,日本植物学会第83回大会シンポジウム「最先端可視化技術による植物解析~見る顕微鏡から捉える顕微鏡へ」を開催した.

  • 豊岡 公徳, 若崎 眞由美, 武田(神谷) 紀子, 佐藤 繭子
    原稿種別: 総説
    2020 年 32 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    走査電子顕微鏡(走査電顕 scanning electron microscope: SEM)は,細く絞った電子線で試料表面を走査させることで生じる反射電子や弾き出された二次電子などを検出し, 像を得る電子顕微鏡である.これまで医学・生物学分野においてSEMは, 光学顕微鏡(光顕)の分解能では捉えられない表面微細構造の観察に用いられてきたが,その利用は主に試料の表面解析に限定されていた.近年,SEMの検出器や電子銃といった機器の高度化, そしてオスミウムコーティングや固定法など試料調製法の改良により,様々な観察法にSEMを活用できるようになってきた.本稿では,切片 SEM法や光-電子相関顕微鏡法(CLEM),イオン液体観察法,凍結割断法など,表面解析に限らないSEM による組織・細胞の新しい捉え方を示し, それにより得られた知見を紹介する.

  • 永田 典子
    原稿種別: 総説
    2020 年 32 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    走査電子顕微鏡(走査電顕 scanning electron microscope: SEM)は,細く絞った電子線で試料表面を走査させることで生じる反射電子や弾き出された二次電子などを検出し, 像を得る電子顕微鏡である.これまで医学・生物学分野においてSEMは, 光学顕微鏡(光顕)の分解能では捉えられない表面微細構造の観察に用いられてきたが,その利用は主に試料の表面解析に限定されていた.近年,SEMの検出器や電子銃といった機器の高度化, そしてオスミウムコーティングや固定法など試料調製法の改良により,様々な観察法にSEMを活用できるようになってきた.本稿では,切片 SEM法や光-電子相関顕微鏡法(CLEM),イオン液体観察法,凍結割断法など,表面解析に限らないSEM による組織・細胞の新しい捉え方を示し, それにより得られた知見を紹介する.

  • 大井 崇生, 山根 浩二, 谷口 光隆
    原稿種別: 総説
    2020 年 32 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    試料を薄切片にして透過観察すると,組織や細胞の内部構造を平面像として捉えられる.二次元の平面像の解釈は研究者の知識や経験に基づく想像力に補われて三次元の全体像が理解されてきたが,複雑に入り組んだ構造や,切断方向によって異なる断面像を示す構造を精確に把握することは困難であった.しかし,試料を何十,何百枚という連続切片にして一枚ずつ撮影し,それらを画像解析ソフト上で順々に積み上げる三次元再構築法を用いることで,細胞やオルガネラを立体的に捉えることが可能となる.本稿では,走査型電子顕微鏡(SEM)に集束イオンビーム加工装置(FIB)を内蔵した装置内において切削と観察を繰り返すことで精確に連続切片像を取得できるFIB-SEMを用いた三次元解析について,イネ(Oryza sativa L.)葉身の葉肉細胞の解析例を紹介する.細胞の端から端までを超薄切して三次元再構築することで,イネの葉肉細胞のような複雑に入り組んだ細胞の外形や,その内部の葉緑体などのオルガネラの構造を立体的に捉えることが可能となることに加え,二次元の断面像からは精確な推定が難しかった体積や表面積の定量も可能となる.対象の一部分のみを見る断面観察だけではなく,全体を包括的に捉える三次元解析を行う意義についても議論したい.

  • 坂田 桃子, 児玉 豊
    原稿種別: 総説
    2020 年 32 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    葉緑体に含まれるクロロフィルは高輝度の自家蛍光を発するため,植物細胞において蛍光タンパク質などの外来蛍光物質を観察する際の妨げになる.著者らは以前,タイムゲート法によって葉緑体の自家蛍光を完全に回避することで蛍光タンパク質イメージングが明瞭にできることを報告した.最近では,タイムゲート法を利用できる共焦点レーザー顕微鏡と光変換型蛍光タンパク質を組み合わせて,苔類ゼニゴケにおいて青色光受容体フォトトロピン(Phot)が葉緑体周囲に局在する過程の追跡に成功した.本稿では,タイムゲート法を用いた研究の一例として,ゼニゴケPhotの細胞内局在と細胞内移動に関する研究を紹介したい.

  • Ryo Nakabayashi
    原稿種別: review-article
    2020 年 32 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    Imaging mass spectrometry (IMS) is an analytical method for visualizing the localization of metabolites. IMS analysis involves performing spatial mass spectrometry in coordinates specified on cross-section or longitudinal section of organisms, including plants. The localization of detected metabolites can be visualized using the m/z value and signal intensity acquired in IMS analysis. The development of genome or transcriptome sequencing technologies enables us to perform extremely local part analyses at the level of the cells, tissues, or organs. Using the sequencing technologies, phytochemical genomics researches have shown that specialized metabolic pathways have associations between gene expression and metabolite accumulation in a tissue- or organ-specific manner. These findings suggest that the identification of specialized metabolites in the local parts through IMS analysis makes narrowing down biosynthetic genes more simplified. The IMS analysis is potentially capable of increasing the efficiency and accuracy in phytochemical genomics. Herein, I provide recent updates on IMS analysis in plants.

  • 朝比奈 雅志, 中野渡 幸, 山田 一貴, 湯本 絵美, 佐藤 忍
    原稿種別: 総説
    2020 年 32 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    レーザーマイクロダイセクション(Laser Microdissection; LMD)法は,顕微鏡とレーザー照射装置が接続された機器を用いて,切片を観察しながら標的細胞・組織をレーザーで切断して対象領域を回収する方法であり,組織特異的な遺伝子発現解析などに活用されている.LMD法はこれまでに動物組織を中心に多くの研究成果が報告されてきたが,植物においても,LMDを応用した様々な研究成果が報告されるようになっている.近年,LMDによって回収した組織は,遺伝子発現解析の他,DNA,タンパク質,代謝産物など,様々な解析への適用が実現しており,細胞・組織レベルでの時空間的定量解析が可能となっている.本稿では,我々が用いているレーザーマイクロダイセクションを用いた植物凍結切片からの組織回収と遺伝子解析,植物ホルモン分析の概略について紹介する.

学会賞受賞者ミニレビュー
  • 江崎 和音, 塚谷 裕一
    原稿種別: 総説
    2020 年 32 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    生物の最小の構成単位である細胞は,組織ごとにそのサイズを制御されている.特に分裂組織の細胞を見ると,植物・動物を問わず均一な細胞サイズを示すことが知られている.シロイヌナズナの花序分裂組織での観察から,多くの細胞が非対称な細胞分裂によって細胞サイズのばらつきを生みだす一方で,このばらつきはその後,細胞周期の長さおよび相対成長速度の調節によって解消されていることが明らかとなった.このような分裂組織でのサイズ制御には,細胞分裂と細胞成長とのバランスが欠かせないが,細胞はどのような仕組みによって均一な細胞サイズを維持するのだろうか.シミュレーションと実験を組み合わせた複数の研究から,細胞サイズ依存的に細胞周期の進行を制御することが,細胞サイズの維持に重要であると示唆されている.また,周囲の環境やストレスに応じて細胞サイズを適切に調節することも必要である.ここにはTORの関与する経路,植物ホルモンなどが細胞周期や細胞成長に作用することが考えられる.さらに分裂組織の細胞サイズは,器官形成時の遺伝子発現のパターンや器官レベルでの物質の濃度勾配の形成にも影響することから,細胞サイズ制御が器官形成において重要な役割を持つことが示唆される.

  • 松永 幸大
    原稿種別: 総説
    2020 年 32 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    エピジェネティック・プライミングは遺伝子発現変化を伴わずに,遺伝子発現前の待機状態を創り出す潜在的な分子メカニズムである.ヌクレオソームを解きクロマチンをオープンな状態にすることで将来の遺伝子発現に備える状態を創り出す.エピジェネティック・プライミングは,幹細胞の分化や細胞のガン化の前段階や薬物中毒の進行段階に見られるが,植物再分化への関与の報告はなかった.今回,私達はシロイヌナズナの変異体スクリーニングによって,植物のエピジェネティク・プライミング因子として,ヒストン脱メチル化酵素LYSINE-SPECIFIC DEMETHYLASE 1-LIKE 3(LDL3)を同定した.カルス形成中に,LDL3はH3K4me2を取り除くことで,将来のシュート誘導に備えてシュート形成遺伝子群を遺伝子発現の待機状態にする.今回の研究から,植物の再生力を支える分子機構に,エピジェネティック・プライミングが関与することがわかった.

  • Yuuta Imoto, Yuichi Abe, Masanori Honsho, Kanji Okumoto, Mio Ohnuma, H ...
    原稿種別: review-article
    2020 年 32 巻 1 号 p. 59-73
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    GTPase dynamin-related protein (Dnm1)-mediated membrane fission is an important membrane remodeling event supporting the proliferation and housekeeping function of semiautonomous organelles such as the mitochondrion and peroxisome. Dnm1 is at the heart of the membrane fission machinery, which constricts the neck of the dividing organelles. Similar to classical dynamin protein, Dnm1 hydrolyzes GTP, an energy source, thereby generating a constriction force to sever the neck. To complete this process, replenishment of GTP to Dnm1 needs to be done in a regulated and timely manner. However, the molecular mechanisms that provide GTP to Dnm1 are not known. In this review, we present the evidence for emerging consensus on Dnm1 function and our recent work demonstrating that: (1) The ATP-GTP converting, nucleoside diphosphate kinase-like protein DYNAMO1 is present in the mitochondrial and peroxisomal membrane fission machinery. (2) DYNAMO1 facilitates enzyme kinetics of Dnm1 and locally provides GTP to Dnm1 on the membrane fission machinery. (3) The membrane fission machinery spends more GTP on constriction than on recruitment, as seen by the in vivo experiments and in vitro reconstitution of the Dnm1 structure. Summarizing these data, this review would help to understand the mechanism by which Dnm1 promotes membrane fission using GTP as an energy source. We also discuss how future research might solve the remaining open questions regarding the energy issues presently under discussion.

  • 小林 優介
    原稿種別: 総説
    2020 年 32 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    葉緑体(色素体)は光合成によって地球上のほぼ全ての生態系を支えている.葉緑体には,シアノバクテリア様の祖先から引き継がれた独自のゲノムDNAが存在し,これらは光合成装置の構築や植物の生存上必須なタンパク質をコードしている.葉緑体DNAは裸でストロマを浮遊するのではなく,多様なタンパク質によって折りたたまれて葉緑体の染色体に相当する「核様体」として纏められている.これまで,葉緑体核様体の構成因子が進化の過程でどのように変遷したのか,さらには葉緑体核様体形態を制御するメカニズムはほとんど明らかとなっていなかった.そこで我々は緑藻から被子植物までの各進化段階を代表するモデル生物について,葉緑体核様体構成タンパク質の変遷を解析し,進化の過程でバクテリア由来の葉緑体核様体因子が,宿主由来の因子へと漸進的に置換されてきたことを明らかにした.また,代表的な葉緑体核様体タンパク質である亜硫酸還元酵素(SiR)が葉緑体核様体に局在するにはSiRのC末端ペプチドが重要であることも示した.さらに我々は,世界に先駆けて葉緑体核様体の維持・分配機構の解析にも着手し,葉緑体核様体形態異常のクラミドモナス変異体moc1の原因遺伝子が葉緑体型Holliday ジャンクション切断酵素遺伝子であること発見し,MOC1遺伝子は緑藻から陸上植物まで広く保存され,葉緑体分裂や分化に伴う核様体の分離に欠かせないことを示した.

  • 平川 健
    2020 年 32 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    植物を取り囲む環境ストレスは多岐にわたるが,その多くはDNA損傷を介して成長阻害をするという共通点がある.そのため,植物が変動する環境下で生育し続ける上でDNA損傷応答は極めて重要である.植物に限らず,真核生物においてDNAはヒストンとともに細胞核内で高次構造体クロマチンを形成している.そのため,DNA損傷が修復されるためには損傷クロマチン領域のダイナミックな構造変換が必要となるが,植物におけるその制御機構に関する知見はほとんどない.本研究は,植物のDNA損傷応答におけるクロマチン構造変換の制御機構の解明を目的とし,ライブイメージング技術を軸として研究を展開した.シロイヌナズナのDNA損傷応答におけるクロマチン構造の動態変化を観察できるライブイメージング系を構築し,この系を利用した逆遺伝学的スクリーニングにより,DNA損傷応答におけるクロマチン構造制御の必須因子としてクロマチンリモデリング因子RAD54を同定した.さらに,RAD54はDNA損傷に伴い細胞核内でドット状の構造体を形成することを見出し,植物のDNA損傷応答を1細胞レベルで可視化できるマーカーとして確立した.また,RAD54の新規相互作用因子としてヒストン脱メチル化酵素LDL1を同定し,損傷クロマチン領域におけるRAD54の動態制御にはLDL1によるヒストン修飾H3K4me2の脱メチル化が重要であることを明らかにした.

  • 松﨑 令
    2020 年 32 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/29
    ジャーナル フリー

    微細藻類の種分類を進める上で,培養株を用いた詳細な比較形態解析と分子系統解析は重要である.筆者は形態的,生理的に多様な種からなるクロロモナス系統群(緑藻綱,ボルボックス目)に着目しており,本系統群に対して,微細構造レベルの比較形態解析と分子データに基づく種レベルの分類学的研究を実施してきた.Chloromonas reticulata およびその類似種を用いた研究では,光学顕微鏡下では栄養細胞のよく似た種であっても,葉緑体中のピレノイドや眼点の微細構造でそれらを種レベルで区別できることを報告した.一方,クロロモナス系統群内の氷雪藻グループに位置する種では,接合子の形態情報が種レベルの分類形質として重要視されていたが,培養株を用いて接合子の形成 (有性生殖)を実験的に誘導することは困難だった.そこで,19 培養株を用いた比較形態解析と分子系統解析を実施した結果,栄養細胞形状や葉緑体の形態,更には無性生殖時に形成される娘細胞の数や長期培養時における細胞集合体の有無により,それらを12種として識別できることを示した.更に,筆者らは野外サンプル中の氷雪藻グループの接合子から,複数 DNA 領域の塩基配列データを獲得可能な手法を開発した.得られた配列データに基づく詳細な分子同定の結果,形態データからC. brevispinaおよびC. nivalisの接合子とされていた日本産サンプルの一部が,実際には氷雪藻グループの異なる種に帰属することを明らかにした.また,分子データで正確に種を識別した接合子の電界放出型走査電子顕微鏡観察により,接合子壁表面にみられる微細構造が種レベルの分類形質である可能性が示唆された.

日本植物形態学会第31回大会(仙台)ポスター発表要旨
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