PLANT MORPHOLOGY
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表紙
特集 植物/微生物/オルガネラの相互作用をイメージングで解き明かす
  • 豊岡 公徳, 永田 典子
    2025 年37 巻1 号 p. 1-2
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    植物細胞内では、オルガネラ同士が活発に相互作用している。色素体やミトコンドリアなどのオルガネラは、もともと別の生物が共生して進化したものであり、その動態は生物間相互作用の象徴と言える。今なお植物は、日々微生物の攻撃に晒されながらも、同時に共生関係を築くなど、植物 – 微生物間では様々な相互作用が生じている。最新のイメージング技術は、そのような相互作用の現場を捉えることを可能にした。日本植物学会第88回大会にて開催された本シンポジウムでは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の最新のイメージング技術を駆使し、オルガネラや微生物と植物との相互作用の実態に迫る研究を行なっている演者の方々が講演し、様々な解析法の紹介を通して、「相互作用をイメージングする」という新しい視点で議論がなされた。

  • 永田 典子
    2025 年37 巻1 号 p. 3-8
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    植物の雄性配偶体においては、時期特異的かつ動的で特徴的なオルガネラ相互作用がみられる。アサガオの小胞子および雄性配偶体では、ミトコンドリアが核を隙間なく覆い尽くす時期が存在する。シロイヌナズナの雄性配偶体では、リピッドボディが雄原細胞を取り囲み、成熟が進むと液胞が精細胞を取り囲むという動的変化が生じる。また、液胞がリピッドボディに接触し、膜融合を経て取り込み、分解する過程(マイクロリポファジー)も観察された。近年、オルガネラ同士が近接して物質交換を行う膜接触部位(MCS)の存在が明らかになりつつある。本稿では、植物の雄性配偶体にて見られるオルガネラ相互作用をMCSの観点から再考し、オルガネラ間の複雑で多様な相互作用について論じる。

  • 及川 和聡, 神垣 あかね, 曳野 和美, 星(竹井) 理絵, 金井 雅武, 真野 昌二
    2025 年37 巻1 号 p. 9-18
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    真核細胞を支えるオルガネラは個々の機能を発揮するだけでなく、複数のオルガネラ機能を必要とする制御系を形成し、様々な生物学的プロセスを担う。例えば、多くの代謝系はオルガネラ間で代謝産物を受け渡す必要があるため、時空間的に制御されたオルガネラ間相互作用が必要となる。ペルオキシソームは、脂肪酸代謝や活性酸素種の除去、光呼吸やジャスモン酸の生合成など様々な機能をもち、これらの機能が低下すると、植物では種子の発芽不全、個体の矮性化、生殖異常、胚発生致死などが引き起こされる。光呼吸は、ペルオキシソーム、葉緑体、ミトコンドリアから構成される代謝系で、この3つのオルガネラが光依存的に相互作用し、その時にはペルオキシソームの形態変化や葉緑体との接着面の増加が引き起こされる。また、脂肪性種子の発芽時には、オイルボディに蓄積されたトリアシルグリセロールからリパーゼにより切り出された脂肪酸がペルオキシソームへ輸送され、この場合はペルオキシソームとオイルボディが相互作用する。このオルガネラ間相互作用は膜接触部位を介して行われ、その際にはオルガネラ間で脂質輸送も行われることが明らかになりつつある。本稿では、ペルオキシソームと他のオルガネラの相互作用の分子機構について、主にシロイヌナズナの研究を中心に概説する。

  • 田村 康
    2025 年37 巻1 号 p. 19-26
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    真核細胞内に発達したオルガネラは、それぞれ特有の酵素群や代謝物を内包することで独自の機能を発揮する。その機能的独自性から、オルガネラは空間的に独立して存在すると考えられてきた。しかし近年の研究により、異なるオルガネラ膜が直接結合する「オルガネラ膜間コンタクトサイト(Membrane Contact Site, MCS)」が発見され、異なるオルガネラ同士がこれまで考えられていたよりも密接に連携しながら機能することがわかってきた。 MCSという新しい視点が加わったことで、オルガネラ研究に大転換期が訪れていると言っても過言ではない。本稿では出芽酵母の研究を例に、MCS研究の最新動向、特にMCSが関与する脂質輸送機構について概説する。

  • 西田 帆那, 下田 宜司, 今泉(安楽) 温子
    2025 年37 巻1 号 p. 27-32
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    多くの陸上植物は土壌中に根を伸ばし、様々な微生物と相互作用しながら生活している。ダイズなどのマメ科植物は根に根粒と呼ばれるコブ状の器官を形成し、土壌中の根粒菌と共生関係を築く。根粒菌の感染過程を理解する上で顕微鏡観察が有効な手法であるが、従来の根粒共生研究ではほとんどの場合、根を土から掘り出し観察するため、観察時に観察点で生じる一時的な現象を捉えるにとどまっていた。本稿では顕微鏡を用いた土壌中の根粒共生ライブイメージングのために我々が構築したRhizosphere Frame システムについて紹介する。根と根粒菌と土壌の空間情報を保持したまま根粒共生過程の連続観察を可能にする本システムは、土壌中でおこる植物と微生物のダイナミクスを解き明かす一助になると期待される。

  • 別役 重之
    2025 年37 巻1 号 p. 33-36
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    植物と病原微生物の相互作用は、感染部位での両者の認識によって開始され、植物の免疫システムや病原微生物の病原力発揮システムが相互に影響を与えながら動的に変化していく複雑な現象である。このような時空間的ダイナミクスを内包する動的な現象を正しく捉え、その分子機構を理解するにはライブイメージングが重要な手段となる。本稿では、防御応答マーカー遺伝子発現の時空間的動態解析を行っている我々の研究を一例として紹介する。

  • 豊岡 公徳, 齋藤 夕子
    2025 年37 巻1 号 p. 37-43
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    地衣類は菌類と藻類が共存した共生体で、岩や石、コンクリート、木の表面など至る所に存在する。地衣類は硬い石や岩に接着し長い年月をかけて自生しているため、これまで形態解析はルーペやマクロレンズにより行われてきた。電子顕微鏡(電顕)による微細構造解析は表面のみに限られ、超薄切片作製が困難なことから内部微細構造解析はほとんど行われていない。我々は、地衣類が着生した石を丸ごと固定・樹脂包埋した樹脂ブロックを、ダイヤモンドバンドソーを用いて切断し、機械研磨後、その面を走査電顕 (SEM)で観察する“断面研磨SEM法”により、地衣類の超微形態の可視化に成功した。具体的には、地衣類が生えた2-3 cmの石や枝をアルデヒド固定液で前固定、オスミウムで後固定後、アルコール脱水し、プラスチックビーカーにエポキシ樹脂包埋した。ダイヤモンドバンドソーで5 mm厚の連続切片を作製し、研磨紙で機械研磨後、電子染色およびコーティングし、電界放出型SEM (FE-SEM)の反射電子検出器で撮像した。地衣類の一種ツブダイダイゴケが着生した石を観察した結果、鉱物質上の子器や子嚢の断面微細構造、さらにその中の共生藻と共生菌の微細構造を得ることに成功した。また、木の枝に自生したウメノキゴケの超微形態を捉えることに成功した。本技法は、これまで電顕で観察が困難であった鉱物質で着生した地衣類や苔類などの内部構造解析に有用な技術となる。

Original article
  • Hiroki Saito, Daijiro Matsuda, Ryohei Sugita, Keiji Nakajima, Shunsuke ...
    原稿種別: 研究論文
    2025 年37 巻1 号 p. 45-50
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    The root cap mucilage, a gel-like substance secreted by border cells or border-like cells at the root cap, plays a crucial role in plant root adaptation to soil environments. Despite its importance, methods for analyzing root cap mucilage, especially visualization techniques, remain limited. This study introduces a simple method using fluorescent silica nanoparticles (Quartz Dot) to visualize and quantify the area of secreted mucilage with confocal laser scanning microscopy. The nanoparticles used in this study are embedded with fluorescent probes and large enough to be excluded from the apoplastic mucilage matrix, thereby outlining the boundary of the mucilage region surrounding the root cap. Combined with fluorescent probes for cell wall staining, this approach allows the quantification of the minute mucilage areas surrounding the Arabidopsis root cap. The method was validated by comparing the mucilage region in wild-type Arabidopsis and the smb brn1 brn2 mutant, revealing a significant reduction in mucilage areas in the mutant. Additionally, we investigated the effects of several abiotic stresses, including toxic ions and nutrient starvation, on the area of Arabidopsis root cap mucilage, and further identified soil stresses that promote expansion of the root cap mucilage region, underscoring the sensitivity and precision of our method. Collectively, this study established a simple and robust technique for visualizing and quantifying the root cap mucilage region. The demonstrated utility of this method indicates its potential for broader applications in understanding the physiological and molecular mechanisms underlying root cap functionalization and its role in adaptation to soil environments.

学会賞受賞者ミニレビュー
  • 風間 裕介, 河野 重行
    2025 年37 巻1 号 p. 51-56
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    植物が遺伝的多様性を維持する戦略の一つに、雄花(♂)と雌花(♀)を別々の個体に分ける「雌雄異株化」がある。雌雄異株植物の多くは性染色体をもち、XY型の場合、Y染色体にオスを決定する遺伝子が存在する。性染色体は、元々は1対の常染色体から進化したものであり、時間とともにY染色体の分化が進み、X染色体とY染色体の大きさが異なる「異形性染色体」へと進化する。ナデシコ科の草本植物ヒロハノマンテマ(Silene latifolia)は、異形性染色体をもつ植物の代表例として研究されてきた。Y染色体には約500 Mbの大規模な組換え抑制領域が存在するため、性決定遺伝子の同定が長年困難であった。著者らはこの異形性染色体を詳細に解析し、雌ずいの発達を抑制する性決定遺伝子(Gynoecium suppressing function on Y: GSFY)を同定し、GSFYが雌ずいの矮小化に関与するシロイヌナズナのCLAVATA3遺伝子のオーソログであることを明らかにした。また、性染色体の進化過程において、X染色体ではCLAVATA3オーソログの機能喪失が生じ、Y染色体からは雌ずいを大きくするはたらきをもつWUSCHELオーソログが失われたことがわかった。この結果は、X染色体が性決定に関与することを示唆する初めての発見となった。

  • 古谷 朋之
    2025 年37 巻1 号 p. 57-66
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    陸上植物の有性生殖において、配偶子(生殖細胞)として雌側では卵、雄側では精子(精細胞)をつくる過程が必須であり、その形成様式は進化の過程でダイナミックに変遷してきた。コケ植物や小葉植物、シダ植物では配偶体世代の器官として、多細胞でできた造卵器や造精器といった配偶子器(配偶子嚢)が発生し、卵や精子がつくられる。ほんの約十年前まで、配偶子器の発生に関しては、解剖学的な知見に留まっており、発生を制御する分子機構は未解明であった。近年、モデルコケ植物のタイ類ゼニゴケにおいて、研究基盤が整い、分子遺伝学的な理解が進んできたことで、配偶子器の発生の分子機構に関しても目覚ましく研究が進展している。著者らは、配偶子器発生制御因子としてBZR/BES転写因子MpBZR3を見出し、研究を進めてきた。本稿ではゼニゴケを中心に、コケ植物の配偶子器発生研究を取り巻く最新状況をレビューする。

  • 水多 陽子
    2025 年37 巻1 号 p. 67-72
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/10
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    生物の成り立ちや細胞機能を知る上で、からだの形態や組織の構造を観察することは非常に重要である。しかし通常、生物の体は不透明なため、体内を生きたまま観察するのは困難である。二光子励起顕微鏡は共焦点顕微鏡などに比べて組織への侵襲性が低く、深部到達性が高いため、生体深部を観察するのに適した顕微鏡である。筆者はこの二光子顕微鏡を用いて植物組織の深部イメージングに適した蛍光タンパク質と励起波長を明らかにしてきた。また、生きたままシロイヌナズナのめしべ内部を覗き見る新しい観察法を確立することで、花粉管誘引や受精の様子を生体内で捉えることに成功した。これにより、雌雄両配偶体と母体の各細胞による花粉管挙動の時空間的な制御と、多段階の多精拒否のメカニズムが明らかとなった。本稿ではこれら最新の成果に加え、植物組織の生体深部観察のコツや観察法を確立した経緯についても併せて紹介する。

日本植物形態学会第36回大会(宇都宮)ポスター発表要旨
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