PLANT MORPHOLOGY
Online ISSN : 1884-4154
Print ISSN : 0918-9726
ISSN-L : 0918-9726
学会賞受賞者ミニレビュー
過剰なホウ素はなぜ毒となるのか?:ホウ素毒性の分子機構に迫る
坂本 卓也
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 31 巻 1 号 p. 53-59

詳細
抄録

ホウ素(元素記号:B)は植物の必須微量栄養元素であり,細胞壁のペクチン質多糖ラムノガラクツロナンンII (RG-II)間の架橋を介して細胞伸長に寄与する.一方,他の必須栄養元素と同様に,過剰に存在するとホウ素は毒性を示し,成育阻害をもたらすことで種子収量の低下を招く.これまでに,ホウ素過剰時におこる様々な植物の生理的変化については多くの研究により記述されてきたが,ホウ素が毒性を発現する分子機構についてはほとんど分かっていなかった.そこで,著者はホウ素過剰時に著しい根の生育抑制と異常な根端形態を示すシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のホウ素過剰超感受性変異体を用いて,ホウ素毒性耐性に必須な新規分子として染色体タンパク質複合体コンデンシンIIと能動的タンパク質分解を担う複合体26Sプロテアソームを同定した.これら分子のホウ素過剰時における機構解析により,ホウ素毒性の新たな側面としてDNA損傷誘導を見出すとともに,ホウ素過剰によるDNA損傷発生およびその抑制の分子機構について幾つかの知見を得ることができた.本稿ではこれらについて紹介する.

著者関連情報
© 2019 日本植物形態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top