PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
遺伝子発現変化を伴わない潜在的分子メカニズム−エピジェネティック・プライミング−による植物再生
松永 幸大
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2020 年 32 巻 1 号 p. 53-57

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抄録

エピジェネティック・プライミングは遺伝子発現変化を伴わずに,遺伝子発現前の待機状態を創り出す潜在的な分子メカニズムである.ヌクレオソームを解きクロマチンをオープンな状態にすることで将来の遺伝子発現に備える状態を創り出す.エピジェネティック・プライミングは,幹細胞の分化や細胞のガン化の前段階や薬物中毒の進行段階に見られるが,植物再分化への関与の報告はなかった.今回,私達はシロイヌナズナの変異体スクリーニングによって,植物のエピジェネティク・プライミング因子として,ヒストン脱メチル化酵素LYSINE-SPECIFIC DEMETHYLASE 1-LIKE 3(LDL3)を同定した.カルス形成中に,LDL3はH3K4me2を取り除くことで,将来のシュート誘導に備えてシュート形成遺伝子群を遺伝子発現の待機状態にする.今回の研究から,植物の再生力を支える分子機構に,エピジェネティック・プライミングが関与することがわかった.

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© 2020 日本植物形態学会
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