PLANT MORPHOLOGY
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特集 生命原理を “見る”
クライオ電子顕微鏡が照らす細胞内タンパク質合成装置の分子基盤
相澤 雄太横山 武司
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2026 年 38 巻 1 号 p. 11-16

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Abstract

クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)は、試料を急速凍結し、透過型電子顕微鏡により、低温で直接観察することで、生体試料を生理的条件に近い環境で可視化できる手法である。細胞内で機能する生体高分子複合体は、その構造をダイナミックに変化させながら、合理的に機能を発揮している。我々は、セントラルドグマの中心を担う、タンパク質合成装置であるリボソームに着目し、クライオ電子顕微鏡を駆使し、多階層での分子の振る舞いの理解を目指している。Cryo-EMの歴史を紐解くと、これまでに二つの手法の技術開発の積み重ねにより発展して来た。単粒子解析では、精製した生体試料をガラス状氷中に包埋し、多数の二次元投影像から三次元構造を画像解析により再構成する手法である。クライオ電子線トモグラフィー(cryo-ET)は、凍結試料をさまざまな角度から撮影することで、細胞や組織など、単粒子解析で着目する分子より広い領域を対象とした三次元構造解析に適している。一方で、試料厚による、電子線透過に制限がある。2000年代に、凍結状態を維持したまま、試料の標的位置を微細加工できるクライオ集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(クライオFIB-SEM)を用いた手法が確立され、その後の技術的発展により、cryo-ETの適用範囲は大きく拡張された。現在、我々は単粒子解析によるタンパク質合成装置であるリボソームの構造解析に加え、クライオFIB-SEMを用いた多様な生物由来のリボソームの細胞内可視化に取り組んでいる。本稿では、これまで得られたデータを例に、試料作製からデータ取得に至るまでの一連の流れを概説する。

Translated Abstract

Cryo-electron microscopy (cryo-EM) is a technique that enables the visualization of biological specimens under near-physiological conditions by rapidly freezing the samples and directly observing them at cryogenic temperatures using a transmission electron microscope. Biomolecular complexes in cells exert their functions while dynamically changing their structures. We focus on the ribosome, the protein synthesis machinery at the heart of the central dogma, and aim to elucidate the behavior of molecules across multiple scales by using cryo-electron microscopy. The development of cryo-EM has been driven by the accumulation of technological advances in two major methodologies. In single-particle analysis, purified biological specimens are embedded in vitreous ice, and three-dimensional structures are reconstructed from a large number of two-dimensional projection images by image processing. Cryo-electron tomography (cryo-ET) enables three-dimensional structural analysis of larger cellular regions, by imaging frozen specimens over a range of tilt angles, and is therefore well suited for studying structures beyond individual molecules targeted in single-particle analysis. However, electron beam penetration is limited by sample thickness. In the 2000s, the introduction of cryogenic focused ion beam–scanning electron microscopy (cryo-FIB-SEM) enabled precise micromachining of targeted regions of frozen specimens while preserving the vitrified state. Subsequent technological developments have greatly expanded the applicability of cryo-electron tomography (cryo-ET). Currently, in addition to structural analysis of the ribosome by single-particle analysis, we are also trying in situ visualization of ribosomes from diverse organisms using cryo-FIB-SEM. In this article, we provide an overview of the workflow from sample preparation to data acquisition in cryo-EM.

はじめに

生物の基本単位である細胞の内部には、タンパク質や核酸などを成分とする、多様な生体分子が高密度に存在し、相互作用を繰り返しながら生命活動を支えている。これらの分子は「静的」に固定された状態を維持するのではなく、「動的」に構造を変化させながら機能するため、細胞内で起こる生体反応を分子レベルで理解するには、分子の「かたち」と「動き」を同時に捉えて理解することが重要である。生体分子は水分子に囲まれた環境下で柔軟に機能しており、このような環境を維持したまま分子構造を原子分解能で捉える手法の開発が生命システムの真の理解において重要である。

クライオ電子顕微鏡単粒子解析(single-particle cryo-electron microscopy, cryo-EM)は、構造生物学分野において、この目的を達成することの出来る革新的な手法であり(横山2022a, 横山2022b, 横山2023)、他の構造生物学的手法と比較して、X線結晶構造解析に必須である試料の結晶化を必要とせず、NMRの応用を制限する分子量の上限も高く数メガダルトンに及ぶ巨大複合体の解析も可能という利点も有している。試料を寒剤である液体エタンに浸漬して急速凍結し、アモルファス(非晶質)の氷に生体試料を氷包埋することで、真空中に試料を挿入する必要のある透過型電子顕微鏡設計と水を含む生体試料の相性の問題を克服した。さらに、低温に試料を維持することで、電子線照射による損傷から生体試料を守りつつ、直接観察することが可能となった。この「凍らせてそのまま見る」というシンプルでありながら画期的な手法により、これまでは結晶化のハードルや分子量の制限により見ることの叶わなかった無数の分子構造や分子間相互作用が、クライオ電子顕微鏡法によって次々と日の目を浴びるようになってきた。

こうした電子顕微鏡による構造解析の進展を象徴する分子の一つが、リボソームである。2000年代前半のX線結晶構造解析による高分解能構造が華々しく報告され、その後、クライオ電子顕微鏡により高分解能での構造解析が日常になっている (Ban et al. 2000, Wimberly et al. 2000, Schluenzen et al. 2000, Yusupov, et al. 2001, Watson et al. 2020)。リボソームは翻訳の中心的役割を担う分子であり、生命維持に不可欠であることから、抗菌薬の主要なターゲットである (Lin et al. 2018, Wilson 2014)。近年では、既存の抗菌薬が効かない薬剤耐性(Antimicrobial resistance, AMR)細菌の出現が公衆衛生における世界的な問題となっており、薬剤耐性型リボソームがなぜ抗菌薬による翻訳阻害を回避できるのかを分子レベルで理解する重要性が一層高まっている。さらに、薬剤耐性細菌に有効な抗菌薬の作用機構を立体構造情報から解明できる手法として、クライオ電子顕微鏡法は基礎研究から創薬研究に至るまで重要な役割を果たしている (Wilson 2014, Tomono et al. 2024)。

また、クライオ電子顕微鏡の観察対象も拡大している。東北大学に設置されている加速電圧300 kVのCRYO ARM 300II(日本電子社製)では、電子線の透過性により観察可能な試料厚はおよそ300 nm程度に制限される。単粒子解析では精製したタンパク質やウイルス粒子を用いるのが一般的であり、試料厚の調製が比較的容易である。一方、培養細胞や生体組織をそのまま観察する場合、観察領域は細胞の辺縁部や分離した細胞小器官などに限られる (Medalia et al. 2002, Asano et al. 2015, Brandt et al. 2017)。そこで、このような厚い試料をクライオ電子顕微鏡で観察できる試料作製法としてクライオFIB-SEM(cryo-Focused Ion Beam-Scanning Electron Microscope)を用いた凍結切片(ラメラ)作製法が開発された。凍結試料から電子線が透過可能な薄片を作製することで、直接観察が困難であった厚い生体試料の内部構造の観察が可能となった。本稿では、筆者らが日常的に行なっているリボソームの単粒子解析について概説するとともに、クライオFIB-SEMを用いた凍結切片作製の実際について、これら二つの電子顕微鏡を用いた手法を用いた生体高分子複合体観察の経験を踏まえて紹介したい。

クライオ電子顕微鏡単粒子解析法

単粒子解析は精製した生体高分子の粒子像を大量に取得し、画像処理により高分解能立体構造を取得する、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析手法の一つである。必要とされる試料は結晶化に必要な量と比べて少なく、分子量の大きな複合体や、機能状態に応じて動的に構造変化する分子を解析対象とすることができる。解析の流れは、1)試料の急速凍結、2)データ測定、3)目的粒子の拾い出し、4)粒子の二次元構造分類、5)三次元再構成に大別される。普段我々が単粒子解析法で用いるQuantifoil社製のグリッドは、直径1.2 μmのホールが規則的に並ぶカーボン支持膜が貼付されている。このグリッドに試料溶液を3 μL添加し、余分な溶液をろ紙で吸い取ると、ホールの部分に薄い試料溶液の膜ができる。この状態でグリッドを液体エタンに浸漬して急速凍結すると、溶液中の分子がアモルファス状の氷に包埋される。ここまでの一連の作業をThermo Fisher Scientific社製のVitrobot Mark IVを用いて行う。文章にすると非常に簡単な作業に思えるが、わずか3 mmかつ簡単に曲がって破損しやすいグリッドをピンセットで慎重にハンドリングする必要があり、熟練には一定のトレーニングが必要である。

次に、急速凍結によってアモルファス氷中に包埋された生体分子をクライオ電子顕微鏡で撮影し、その粒子像を画像処理によって構造解析する。まず、撮影した顕微鏡像から目的の粒子を拾い出し、それらを一つずつ最適なサイズで顕微鏡像から切り出す。その後、二次元上で個々の粒子のクラス分けを行い、類似した粒子同士を平均化した二次元平均像を得る。このように単粒子解析ではデジタル上の単離精製によって異なる構造状態を分離し、それぞれを独立した構造として解析することができる。また、クライオ電子顕微鏡により撮影される粒子像はさまざまな向きからの投影像であるため、個々の粒子を逆投影して三次元構造を再構成することができる(図1)。得られた三次元再構成像は、更なる粒子の分類や精密化を繰り返すことで、高分解能なものへと精度を高めていく。そして、最終的に得られた三次元再構成マップに原子モデルを当てはめることで、目的分子の原子構造を決定することができる。

図1 クライオ電子顕微鏡単粒子解析の流れ

グリッドのメッシュ上にカーボン支持膜が貼付され、その膜には直径1.2 μmのホールが規則的に並んでいる。グリッド上で氷包埋された分子をホールを移動しながら透過型電子顕微鏡で撮影する。良質なデータセットを取得するには適切な氷の厚さと目的分子の濃度調製が重要である。その後、画像処理技術を駆使して、取得した投影像から三次元立体構造を再構成する。

細胞破砕液中リボソームの直接観察

我々は前述のリボソームにおける薬剤耐性機構の理解を目指し、細胞破砕液(ライセート)を用いた非結核性抗酸菌リボソームの単粒子解析に取り組んでいる。ここからは、実際の解析について紹介させていただきたい。リボソームはmRNAにコードされた遺伝情報をアミノ酸へと変換し、タンパク質合成を行う。一連の翻訳過程において、リボソームは構造変化しながら、複数の因子と相互作用して翻訳を進める(図2)。

図2 抗酸菌リボソームの構造

大小2つのサブユニットから構成され、直径約25 nm、分子量2.3 MDaの巨大なRNA-タンパク質複合体である。

精製試料ではリボソームと翻訳因子との相互作用が弱い場合その結合が失われ、翻訳活性を有する動的なリボソーム構造を捉えることができないため、試料精製を介さずに翻訳系を直接観察することが出来れば、未知のリボソーム複合体の解析において極めて有効であると考えた。抗酸菌の直接観察によるリボソームの単粒子解析が最もシンプルなアプローチであるが、電子線が試料厚により透過せず、内部観察は困難であった。そこで、細菌から膜構造を取り除いたライセートをそのまま観察することで試料厚を最適化し、クライオ電子顕微鏡で観察したところ、ネイティブ環境に近いリボソームの構造を高分解能で可視化することができた。ライセートを用いることで細菌の培養から回収までの時間を任意に設定することができる。すなわち、細菌の増殖段階に応じたライセートを調製し、各増殖段階におけるリボソームの姿を可視化できるのである。また、培養途中で抗菌薬を添加し、抗菌薬添加後からライセート調製までの時間も任意に決めることができる。これにより、抗菌薬によって翻訳停止へと向かうリボソームの構造変化を時分割で解析できる。もちろん、ライセート内にはリボソーム以外の因子が混在しており、このような分子夾雑な溶液からリボソーム粒子をピックできないことには解析が始まらないわけであるが、リボソームは他の因子に比べて巨大で、コントラストが十分であるため、明瞭に粒子を識別することができた(図3)。粒子のピックができれば通常の単粒子解析と同様にクラス分けや精密化を経て、立体構造を取得することができる。非結核性抗酸菌のMycobacterium smegmatis (M. smegmatis)にマクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシン(AZM)を添加した実験では、抗酸菌リボソームの新生ペプチドトンネル内に培養中に添加したAZMが結合している様子が明瞭に確認された(図4)。

図3 クライオ電子顕微鏡によるリボソームの観察

精製したリボソームの電子顕微鏡像 (b)

ライセート中のリボソーム電子顕微鏡像 精製リボソームは濃度調製が可能なため、電子顕微鏡像あたりの粒子数を最適化し、データ取得を効率的に進めることができる。ライセートの直接観察ではリボソーム以外に大小様々な夾雑物が混在するため、精製リボソームの観察と比較してコントラストは弱くなるが、リボソームの識別は可能である。矢頭:リボソーム、スケールバー:100 nm

図4 培養中に添加したAZM(緑)がリボソーム上の作用点に結合した様子

構成要素の表面レベルを調整している。新生ペプチドはローパスフィルターをかけて表示した。

このように単粒子解析は単に精製された分子の立体構造を決定する手法に留まらず、分子集団の中から目的分子をデジタル上で抽出することが出来る解析手法として、その応用範囲を広げつつある。次節では、観察スケールをローカルな領域から細胞全体へと拡張するアプローチとして、クライオFIB-SEMを用いた凍結切片作製について紹介する。

クライオFIB-SEMによる凍結切片作製

細胞内で分子が機能する様子をその場で観察するためには、試料の精製等を介さずに細胞をそのまま観察する必要がある。しかし、先に述べたように透過型電子顕微鏡では試料厚に対する電子線の透過性に限界があり、厚い細胞試料をそのまま観察することは困難である。この制約を突破できる全く新しいアプローチとして、2000年代前半に、米国NY州WadsworthセンターのMichael Marko博士らは、材料科学の分野で試料を成型するのに使われていたFIB-SEM装置を、凍結水和状態の生物試料を切削するために用いた。クライオFIB-SEMによる、クライオFIB薄片化法の夜明けである (Marko et al. 2006, Marko et al. 2007)。2024年に東北大学未来型医療創成センター(INGEM)にも日本電子社製のクライオFIB-SEMが導入され、東北地方における創薬をはじめとする最先端の生命科学研究を支える拠点として整備されている。

クライオFIB-SEMは集束イオンビーム(FIB)と走査型電子顕微鏡(SEM)に加え、試料を冷却可能なクライオステージを搭載した装置である。FIBはガリウムイオンビームを集束し、試料表面に走査することにより観察を行うと同時にガリウムイオンはSEMで使用する電子と比較して質量が大きく、試料中の原子と強い相互作用を生じるため、観察に加えて、試料の切削加工が可能である。

凍結切片の作製は単粒子解析法と同じくグリッド凍結から始まる。グリッド上で急速凍結した試料を低温環境下でガリウムイオンにより切削し、約200 nm程度のラメラに加工する。このラメラの状態でクライオ電子顕微鏡に供することで、切削後にラメラとして残った細部内部の構造をクライオ電子顕微鏡で直接観察することができる。

ラメラ作製はグリッド凍結から最終的な薄切片化まで複数の段階から構成される。各工程は一見独立しているようで、前段階での試料状態が後の加工精度や観察品質に大きく影響するため、一連の操作を通して試料の取り扱いに細心の注意を払う必要がある。ここでは、クライオFIB-SEMを用いたラメラ作製の基本的なワークフローについて述べるとともに、日常的な運用の中で意識している点や実験上の留意点について紹介したい。

まずラメラ作製の出発点であるグリッド凍結では、培養細胞や微生物懸濁液をグリッドに滴下し、余分な溶液を除去した後、液体エタンに浸漬して急速凍結する。単粒子解析と同様に溶液をアモルファス状に凍結することで、細胞内の分子は氷晶形成による損傷を受けずに固定される。凍結条件は試料の厚さや水分量に依存するため、試料ごとに最適化が必要となる。また、グリッド凍結時にはLeica社製のEM GP2を使用している。単粒子解析法のグリッド凍結で使用するVitrobot Mark IVがろ紙による溶液の吸い取りを両面から行うのに対し、EM GP2は片面吸い取りができる。試料を添加したグリッド面とは反対側から溶液を吸い取ることで、ろ紙が試料に直接触れて細胞等がろ紙に吸着する可能性を防ぐことができる。また、観察したい試料によってグリッド凍結前の準備に違いがある。接着細胞の場合には、培地中にあらかじめグリッドを入れておき、細胞がグリッド上に接着した状態で回収し、凍結装置で余分な水分を除去する手法も用いられる。この場合には細胞毒性の低い金製のグリッドが利用される。

凍結したグリッドは液体窒素中でクライオFIB-SEM専用ステージに固定する必要がある。この工程では温度上昇や霜付着を防ぐことが重要であり、作業時間の短縮や実験室内の湿度管理が試料品質の維持に大きく寄与する。加えて、非導電性の生体分子をクライオFIB-SEMで観察すると試料表面に電荷が蓄積してしまい、試料の加工と観察に支障が出る。そこで、観察前に試料表面をPtでコーティングし、導電性処理を施す。そのほかにクライオFIB-SEM内で試料に化合物ガスを吹き付け、デポジション膜と呼ばれる保護膜を付け加える (Hayles et al. 2007)。これは、イオンビームによる試料の切削面を平坦にする狙いがある。細胞などの生体試料を扱う場合、細胞内には核やミトコンドリアなどの様々な構成要素が含まれる。これらにイオンビームを照射すると密度や組成の違いにより切削速度に差が生まれ、カーテニングと呼ばれる切削面が凸凹になるアーティファクトが生じる。ラメラは最終的にクライオ電子顕微鏡で観察するため、切削面の厚さの違いは観察像のコントラストに影響する。そこで、カーテニングを抑えるために、均質な金属膜で試料表面を保護し、保護膜より下の試料に対するイオンビームのエネルギー分布が均一になるように前処理を行う。以上のような前処理を経て、イオンビームを試料に照射して切削する。グリッド上の任意の箇所に加工領域を設定し(図5)、段階的にイオンビームの電流値を変更しながら試料を切削する。イオンビームの電流値が高いほど切削効率が高く、試料を早く切削できる利点があるが、切削断面の平滑性が悪くなる。一方で、電流値が低いほど切削効率が低く、ラメラの作製に時間を要する。そのため、切削の進行度合いに応じてイオンビームの電流値を下げながら、最終的に約200 nm程度の厚さの切削断面が平滑なラメラを作製する。

図5 クライオFIB-SEMによるラメラ作製過程

(a) ラメラ切削前のグリッド全体像のSEM観察像。(b) (a)の白枠部のFIB観察像。(c) (b)の緑枠の加工領域内を切削した後のFIB観察像。(d) ラメラのSEM観察像。矢印: イオンビームの照射方向、スケールバー: (a) 500 μm、(b、c) 10 μm、(d) 4 μm

おわりに

1980年代に始まるクライオ電子顕微鏡技術の誕生から、2013年には「分解能革命」 (Kühlbrandt 2014)と呼ばれる技術革新を経て、現在では単粒子解析による構造解析の到達分解能は原子分解能に到達した。また、2000年代に始まった、FIBによる試料薄片化技術を、急速凍結による細胞などの生体試料に応用した、クライオFIB-SEM技術の台頭により、現在は細胞内の生体分子を、高分解能で構造解析出来る時代に足を踏み入れた。我々は、既存の抗菌薬の効果を無効化する、薬剤耐性機構に着目し、細胞の中に近い条件として細胞破砕液を用いた解析、さらに細胞の機能を保った状態で、クライオFIB-SEMを用いて多階層で統合的に理解することを目指して研究を進めている。今後は、新規抗菌薬や薬剤耐性機構の分子メカニズムをこれらの手法で可視化し、これまでにない深部まで可視化することを目指して行きたい。

Acknowledgments

本総説は、日本植物学会第89回大会シンポジウム「生命原理を“見る”」の講演をもとに執筆した。シンポジウム主催の東京大学・吉田大和博士に深く感謝する。また、科研費(25K02690)、AMED(JP 25wm0325076)課題の支援を受けて推進した。

References
 
© 日本植物形態学会

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https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
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