PLANT MORPHOLOGY
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緑藻クロロモナス系統群のピレノイド-微細形態、光合成生理、分子進化の接点-
森田 詠子
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2003 年 15 巻 1 号 p. 76-83

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抄録

要旨:ピレノイドは多くの真核藻類の葉緑体内にある電子密度の高い構造で、その基質は主に光合成のCO2固定酵素Rubisco(ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase)から構成されている。緑藻Chloromonas属はピレノイドを持たないことからピレノイドを持つChlamydomonas属と区別されてきたが、分子系統解析の結果、Chloromonas属とChlamydomoas属の一部の種は強固な単系統群“クロロモナス系統群”を形成することが明らかになった。クロロモナス系統群には、ピレノイドを全く欠くものから典型的なピレノイドを持つものまで、微細構造レベルで多様な種が含まれる。それらを比較した結果、典型的なピレノイドはCO2濃縮機構(藻類が外界のCO2をRubiscoの回りに集めて効率良く光合成を行うシステム)、特に細胞内無機炭素濃度の上昇に関与していることが示唆された。さらにクロロモナス系統群とそれに近縁な45種の緑藻で、ピレノイド構成タンパク質Rubiscolargesubunitの遺伝子rbcLを解析した。その結果、クロロモナス系統群においてrbcLのアミノ酸置換率は他の葉緑体遺伝子(atpB、psaB)のアミノ酸置換率に比べて特異的に高いこと、アミノ酸置換率はRubiscolargesubunitのダイマー形成部位でとりわけ高いことが明らかになった。これらの結果から、クロロモナス系統群におけるrbcLの特異的分子進化がピレノイド形態の多様性に関連する可能性が示唆された。

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© 日本植物形態学会
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