PLANT MORPHOLOGY
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紅藻類における受精の形態学的・組織化学的研究
峯 一朗
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1997 年 9 巻 1 号 p. 43-50

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抄録

紅藻類の受精は配偶体上に形成された造果器(卵細胞)が伸ばす受精毛に,水中に放出された不動精子が接着・融合することにより行なわれるが,近年観察・実験に適した材料を用いて紅藻の受精過程の研究が行なわれるようになっている.精子と受精毛の表面の微細構造や組織化学的性質が明らかになり,それらが運動性を持たない配偶子間の受精における特異的な接着に関与している.紅藻の受精過程はこの他にも精子核分裂の誘導や細胞壁の形成といった配偶子接着によって引き起こされる様々な細胞現象を含んでおり,その後に起こる配偶子の細胞融合・核融合に連続している.精子や受精毛の形態学的・組織化学的な性質や紅藻の受精過程の特徴には分類群の間で大きな変異が見られる.このような変異を生み出した紅藻の受精機構の進化を明らかにするためには,広い範囲の比較可能な詳しい知見の集積が必要である.

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© 日本植物形態学会
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