公共政策
Online ISSN : 2758-2345
基調論文
公共政策における非効率性なぜ非効率は生まれるのか,その克服のために何をなすべきか
足立 幸男
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1998 年 1998 巻 p. 1998-1-006-

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抄録

公共政策の非効率は,その主要な責任を供給サイドに帰属せしめることが出来るものと,需要サイドに帰属せしめることが出来るものの,二種に大別される。前者には,(1)政策執行者としての政府機関が認知する,異なるレベルの政策効果を産出するための限界費用と,達成可能な最小限界費用との間の乖離に起因する非効率(X非効率)と,(2)政策決定者や政策執行機関が認知する限界費用と社会的限界費用の乖離に起因する非効率,つまり政策のコスト(政策実施のための資源費用と,政策実施が社会構成員の間に生み出す不利益の総和)を供給サイドが的確に把握していない(過大あるいは過小に見積もる)ことに由来する非効率の,二つのタイプがある。後者の,需要サイドに責任を帰することが出来る非効率には,(1)便益享受と費用負担がセットになっていないこと(フリーライドの容易性)に起因する政策需要のインフレ化が引き起こす非効率と,(2)政策需要者が,政策効果についての的確で豊富な情報をもっていなかったり,あまりに自己中心的で,その効用関数の中に将来世代を含む他者の厚生や,人間以外の生物や事物への配慮が不十分にしか反映されていないために,需要が社会的限界便益を下回る,そのようなときに発生する非効率の,二つのタイプがある。本稿は,以上四つのタイプの非効率が各々どのようなメカニズムによって発生するのか,如何なる処方箋がその各々の克服に有効であるのか,これを検討しようとするものである。

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© 1998 日本公共政策学会
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