公共政策
Online ISSN : 2758-2345
自治体政策法務―政策の条例化
法定受託事務化・自治事務化と条例
北村 喜宣
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2000 年 2000 巻 p. 2000-1-012-

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抄録

地方分権一括法の可決成立に伴う地方自治法の改正によって,機関委任事務制度が廃止され,国の直轄執行事務となるもの以外は,法定受託事務と自治事務に振り分けられた。これらは,いずれも,地方公共団体の事務であるから,憲法の規定に照らしても,条例を制定することが可能である。ただ,法定受託事務については,国の関与が強くある結果,条例制定できる余地はそれほど大きくないといわれる。

しかし,そうした理解は,妥当ではない。法定受託事務であっても,たとえば,国政選挙のように,地方公共団体が独自の政策裁量を働かせる余地が小さいものもあれば,自治事務に近い性格を持つために,その余地が大きいものもある。前者を,本来的法定受託事務,後者を,非本来的法定受託事務という。

産業廃棄物処理施設の設置許可事務は,法定受託事務であるが,振り分けの経緯をみると,その整理は,暫定的なものであったことがわかる。また,機関委任事務制度のもとで立地をめぐる紛争が多発していたのは,まさに,事務の性格そのものに由来するからであった。したがって,法定受託事務であるという理由で,条例の対応を排除するのは,適切ではない。自治事務とされた産業廃棄物処理計画と許可処分を条例のなかでリンクさせて,地域的事情を踏まえた産業廃棄物処理行政が展開されるべきである。

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© 2000 日本公共政策学会
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