抄録
本研究は、地方分権の流れをうけてこれからのガバナンスの主体を担う地方自治体(市町村)の森林・林業政策に着目し、実践に埋め込まれた学びのなかから、森林利活用のための住民主体の森林教育のあり方を模索することを目的として行った。多様な住民が森林・林業政策の開発・適用・自省・改善のプロセスに関わることで、インフォーマルな学びの場が立ち現れる。その学びの連関のなかに地域住民が求める森林教育があり、それを住民が主体的に進めることが住民主体の森林教育と位置付けられることを明らかにした。森林教育のねらいは、森林そのものと、森林と人間との関係を知ることが前提とされるが、事業者をはじめとした地域住民に求められているねらいは、森林を通して人と人との関わりが再構築されることであった。森林・林業政策の展開には森林教育と地域経済の相互応答的な関係が求められるが、体験プログラムの提供といったソフト面だけでなく、学習机や内装の木質化といったハード面からも教育を進めることができるのが、自然系環境教育と森林教育の異なる点である。本稿では、小学校を中心とした事例から森林教育の多様な可能性を示した。