実践政策学
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  • 桑原 昌広, 中村 俊之, 牧村 和彦, 絹田 裕一
    2025 年11 巻2 号 p. 173-184
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    日本において中央線・複数車線等が設置されない道路における、いわゆる生活道路の30 km/h規制が令和6年7月23日に閣議決定し、今後令和8年9月に施行が予定される。施行前段階として、効率的かつ効果的な全国一律の道路交通状態や利用実態のモニタリング方法の開発・確立、実効性の担保が政策課題であり、施行後は実践的なモニタリングの実施が喫緊の課題である。本研究ではPassive dataの一つであるカープローブデータに焦点をあて、生活道路30 km/h規制施行時の道路交通の実践的なモニタリング手法の提案とケーススタディを通じて、政策課題を整理することを目的とする。生活道路の管理主体の扱いやすさを考慮し、市区町レベルで定期的なモニタリングを実施し、小学校区別に複数期間で交通状況を評価できる手法を提案する。モニタリング指標としては、カープローブデータの特徴を活かし、急減速の多さや生活道路内30 km/h超の走行台キロ等加えて、生活道路と隣接するエリアに関する指標等採用した。岐阜市を対象としたケーススタディを通じて、小学校区およびメッシュ別に2期間の比較を行い、変化の有無を確認した。本研究の成果として、全国一律の基準かつPassive dataデータであるカープローブデータを用いることにより、生活道路30 km/h規制に対して実践的なモニタリングの可能性を示した。また、利用データ、モニタリング指標、運営体制、将来に向けたモニタリングに関する視点で政策課題を整理した。
  • 自治体主導の食と農を軸にした公共緑地の新たな可能性と課題
    太田 尚孝, 新保 奈穂美
    2025 年11 巻2 号 p. 185-198
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、世界各地で食べられる景観の「エディブル・ランドスケープ」に注目が高まっている。本稿では、ドイツのアンダーナッハ市を事例に、これを自治体主導で都市に拡大した「エディブル・シティ」の仕組みや、成果、課題を明らかにすることを目的とする。2024年のプロジェクト担当者へのインタビュー調査や現地調査、体系的な文献調査から主に以下の4点が明らかになった。①自治体主導の「トップダウン」の内実は市長を含めた分野横断型のチームに基づいていた。②同市の公共緑地における誰でも収穫可能な試みは国内外から大きな注目を集めた。③アンダーナッハ市では都市全体でエディブル・シティの試みが確認できた。④現在は量的拡大を目指すのではなく質的拡充を推進していた。このアンダーナッハ市のエディブル・シティは世界的にユニークなプロジェクトといえるが、段階的に展開されており、理念としてパーマカルチャーの存在も指摘できる。日本への示唆では、アンダーナッハ市の事例は自治体主導の公共緑地の新たな利用方法の一手段として理解できる。近未来に日本でも実現可能性も高いと言えるが、リスクを冷静に見極め、まずはスモール・プロジェクトとして行うことが重要であろう。また、実施主体側の専門性と学際性が実現の基盤になるといえる。
  • 外地開発を例にして
    小幡 敏也, 藤井 聡
    2025 年11 巻2 号 p. 199-215
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、20世紀前半期の日本のいわゆる「外地」の開発、とりわけ満洲における国家の開発事業の展開を、技術者運動および革新官僚らによって生成された「技術」概念の理念的変容に着目しつつ、文献調査を通して解釈し、分析するものである。文献調査の結果、「技術」の物語が、以下の様な経緯を経て国家の開発事業に対して一定の役割を果たしていたという歴史的事実が示された。すなわち、当時列強の外圧を受けて近代化に臨んだ日本では、科学は実用性を優先して技術に接合され、国益に利するという尺度に従って国家政策へ包摂されていた。しかしながら、当時の技術者の社会的・制度的地位は低く、その状況改善を企図して直木倫太郎・宮本武之輔らは技術者水平運動を展開していた。その流れが結実したのが、日本内地に比べて制約の希薄な満洲のような外地であった。外地は「新天地」として技術者らに開放され、技術は開発の中心的担い手として躍動する地位を獲得した。さらに革新官僚は「総合技術」「興亜技術」「経済技術」等の概念操作を通じ、技術を国防国家構想や東亜秩序形成と結びつける物語的な枠組を設けた。以上の解釈を通して「技術」の物語化が科学的合理性と民族的使命とを接合し、政治的な分裂を統合して開発へと向かわせる原理として作用した事が示された。その意味で、当時「技術」は政策実現の道具にとどまらず、国家の生存戦略を方向づける理念的・規範的機能を帯び、国家の総力を結集して開発を駆動させる役割を担っていた事が本研究により明らかにされた。
  • 満洲開発を例として
    小幡 敏也, 藤井 聡
    2025 年11 巻2 号 p. 217-234
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    満洲開発事業が活性化した背景を、地方(満洲)と中央(日本内地)の相互作用という観点から分析すると、彼の地の開発が遠心性(独立・自律的な地方性)と求心性(中央への従属・連携)のせめぎ合いであったと見ることができる。満洲は日本の実質的な支配下に置かれつつも、地理的隔絶と建国理念に支えられて一定程度独自の地方性=遠心性を保持し、新天地としての実験的性格を担った。一方で、資本・技術・制度設計の多くは内地に依存し、日満ブロック経済の形成に象徴されるように、中央への求心性も不可欠であった。これらの遠心性と求心性は対立するのではなく、相互補完的な関係を構成し、開発推進の原動力として作用した。また、新天地としての満洲は、内地で閉塞を感じていた技術者・革新官僚に挑戦と大望を許す空間を提供し、若手人材の登用や大胆な制度・都市計画等を実施できる環境を生み出した。他方、独自の地方的自負は集団の規律や凝集性を高め、建設業者の“土建報国”に象徴されるような開発推進力を導いた。こうした地方としての満洲開発は、岸信介等よる計画・統制経済の逆輸入に見られるように、中央の政策革新にも影響を及ぼした。結論として、満洲開発の活性化は、地方性の昂進と中央統制の調和という循環的関係によって支えられたものであり、この構造は現代の国土開発にも通底する一般的条件を示唆するものである。
  • 全国市町村データ(2015~2022年)の二方向固定効果モデルによる検討
    石川 武雅, 高島 佳之
    2025 年11 巻2 号 p. 235-242
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、過疎地域と非過疎地域における医療・介護資源および費用の推移を包括的に記述・比較することである。2015~2022年の全国1,741市町村における医療・介護資源に関するパネルデータを分析対象とした。公的統計から人口(または高齢者人口)当たりの医療・介護資源と費用に関する指標を用い、「過疎地域×年次」の交互作用係数とした固定効果モデルにより過疎・非過疎地域間の年次推移の傾きの差を評価した。第1種過誤の制御としてBenjamini-Hochberg法によるFalse Discovery Rate補正を行った。結果として、病院数は過疎地域で有意に増加の程度が大きく(β = 0.07)、一般診療所数(β = 0.93)および在宅療養支援診療所数(β = 0.34)も相対的に増加した一方、訪問看護ステーション数(β = –0.20)と訪問看護師数(β = –0.31)は過疎地域における増加の程度が小さかった。介護資源においては、過疎地域において特別養護老人ホーム定員の増加の程度が大きく(β = 0.20)、介護老人保健施設定員の減少の程度が小さかった(β = 0.07)。費用面では総医療費(β = –3,305.21)と入院医療費(β = –846.68)の伸びが小さい一方、介護保険給付費(認定者当たり)は大きく増加(β = 9,123.19)した。これらは、過疎地域における医療資源の縮小と介護資源の増大を示唆し、在宅療養支援を含む訪問看護基盤の強化や地理的アクセスを踏まえた資源配置、回避可能入院などアウトカムを用いた政策評価の必要性が示された。
  • 余暇的活動の実施状況に着目して
    松浦 海斗, 室岡 太一, 宮下 和士, 谷口 守
    2025 年11 巻2 号 p. 243-253
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国では全国を通じて教育を受ける機会が制度的に保障されている一方で、学校外の過ごし方については家庭環境に委ねられ、体験格差が生じていることが指摘されてきた。子どもの頃の様々な活動経験は子どもの将来的な能力形成に資する重要な要素とされているにもかかわらず、その実施実態は十分に把握されていない。そこで本研究では、家庭の経済状況や地域差によって、学校外の余暇的活動の実施状況に格差があることを明らかにし、すべての子どもに多様な体験を可能とする施設・アクセス整備の必要性を提示することを目的としている。全国的な分析を行った結果、世帯年収が低いほどスポーツや趣味・娯楽の活動頻度が低い子どもや全く実施しない子どもが多くなる傾向が見られ、余暇的活動の機会保障に向けた取り組みを一層強化する必要性を浮き彫りにした。また、活動の種類数に着目すると、趣味・娯楽においては都市規模と世帯年収の双方によって多様性に格差が生じていた。具体的な活動別の実施状況を見ると、スキーや登山といった装備・移動にかかる経費の大きいスポーツや、開催可能な場所が限定されるコンサートなどの趣味・娯楽で格差が大きいことが明らかになった。一方で、スマホやゲーム機などによるゲーム実施といったデジタルでの活動では所得・地域差が小さく、多くの子どもによって実施されていることが示された。
  • 小林 俊介, 竹村 和久, 藤井 聡
    2025 年11 巻2 号 p. 255-261
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    今日の政治問題に、政治資金パーティーをめぐる「裏金」問題がある。メディアでは、この「裏金」問題が盛んに報道され続け、先の選挙では争点の一つになったと言われている。一方で、「裏金」問題の本質は、法的には政治資金収支報告書への「不記載」であり、「裏金」という表現は定義が曖昧で多義的なため、正確性に疑義が生じる。また、議員や派閥によって、「裏金」と報道されるのか、「不記載」と報道されるのかが異なる例も見られ、公平性の観点からも問題提起がされうる。意思決定研究では、意思決定問題における言語表現が、意思決定の結果に影響を与えるというフレーミング効果の存在が示されているが、これを踏まえると、「裏金」という報道フレームが、世論形成や投票行動に影響を与えた可能性がある。こうした問題意識のもと、本研究では、実際にメディアが誰を対象に「裏金」の表現を用いているのかについて検討をした。方法として、主要な新聞の社説を対象に、データベースを用いて検索を行い、「裏金」または「不記載」の表現が使われている対象者について整理した。その結果、全体としては、自民党全体と安倍派に対して「裏金」の方が使用頻度が高かったこと、岸田派と二階派に対して「不記載」の方が使用頻度が高かったこと、その他の派閥に対しては、そもそも「裏金」や「不記載」が使用される頻度が低かったことが明らかとなった。したがって、新聞社説において、「裏金」と「不記載」のフレームの使用に偏りがあることが示唆された。
  • 東北復興創生「秋保モデル」の実証的考察
    大嶋 淳俊
    2025 年11 巻2 号 p. 263-271
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、東北の復興創生に挑む経営者の実践を通じて、地域共創を発展させる、復興創生・地域共創といった公共性の高い理念を掲げる理念駆動型リーダーシップと共同リーダーシップがいかに連動し、地域活性化に寄与するかを実証的に検討する。近年、地域を牽引する経営者の役割は注目されているが、その特性や共創を形成するメカニズムの研究は限られている。本研究は、東日本大震災後に宮城県仙台市秋保で創業し、復興と地域活性化に取り組んできた2人の経営者を対象に、約5年間の産学連携、参与観察、半構造化インタビューによる質的分析を行った。古くから温泉観光地として知られる秋保で、彼らは「テロワージュ」という理念を軸に新産業を創出し、強みを補完し合う共同リーダーシップを発揮して地域内外のステークホルダーとの共感醸成を推進した。その過程で、共同リーダーシップは共有リーダーシップへと展開し、地域共創とネットワークの拡大が進んでいることが示唆された。これらの実践を通じて構築された「秋保モデル」は、理念の可視化と共感醸成を起点に、リーダーシップの進化と地域共創の発展が相互に作用する仮説的枠組みを提示している。本研究は、復興創生に資するのみならず、地域活性化における理論的含意(リーダーシップ研究の深化)と実践的含意(地域共創モデルの設計指針)を提示する点で意義を持つ。
  • 立地適正化計画における任意拠点に着目して
    横山 大輔, 室岡 太一, 大畑 友紀, 宗 健
    2025 年11 巻2 号 p. 273-284
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    立地適正化計画による拠点への機能集約・誘導が全国的に進む中、近年、都市圏レベルによるコンパクトシティ政策の必要性が高まっている。都市圏レベルでコンパクトシティ化を進めるためには、“開発を抑制すべきエリア”との側面も持つ市街化調整区域や、白地地域にも焦点を当てる必要がある。これら地域には一定の人口や機能が集積する旧自治体の中心部や既存集落も存在しており、これら地域を任意の拠点として立地適正化計画に位置付ける市町村もみられる。そこで本研究は、市街化調整区域・白地地域拠点の実態解明と、拠点の持続可能性を都市環境と居住者意識の観点から考察し、今後の拠点の形成・維持に向けた示唆を得ることを目的とする。具体的には、①都市環境に着目した立地適正化計画上の任意拠点の類型化、②類型化に応じた居住者意識の解明を行った。その結果、利便性の高い拠点では居住者意識(街への認識、定住/転居意向及び居住満足度)は比較的ポジティブな傾向がみられ、一定の拠点の持続可能性がみられた。他方、不便な拠点では居住者意識は比較的ネガティブな傾向がみられ、将来的な人口流出に伴う拠点機能の利用者減少が生じる可能性があり、拠点の形成・維持が困難となるおそれがあった。
  • 倉敷美観地区と尾道を事例として
    大畑 友紀
    2025 年11 巻2 号 p. 285-292
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、観光都市におけるイメージ構造を比較により明らかにすることを目的とし、倉敷美観地区と尾道を事例に、キーワードの自由記述から抽出した語彙を分析したものである。分析については語の頻度と尤度比により都市間の差異を定量化し、共起ネットワークによりクラスターを可視化した。倉敷美観地区では「白壁」、「川」、「舟」、「柳」、「蔵」、「歴史」、「風情」、「落ち着」の出現回数が多く、水辺と歴史意匠を核とする滞在型の鑑賞体験が抽出された。尾道では「坂」、「海」、「寺」、「山」に加え「ロープウェイ」、「桜」、「猫」、「ラーメン」等が特徴的であり、斜面移動と海景観、寺社を軸とする移動を伴う眺望体験が抽出された。「美しい」、「町並み」、「古い」、「景色」といった語は両都市に共通していた。同一の設問と分析手法により物理環境の異なる近隣2都市を直接比較した点に本研究の新規性があり、その結果として、「滞在型の鑑賞」と「移動を伴う眺望」という行動像の対照性や、猫や飲食店等の生活文化資源の位置づけといった意外性を含む知見が得られた。これらの結果は、歴史的景観を有する他地域においても、共通する景観評価語と都市固有の語の組み合わせから強みを把握し、観光戦略や地域ブランディングの検討に応用可能である。
  • 矢野 朋子, 木谷 裕香, 奥田 早苗, 堂本 香代子, 冨松 拓治
    2025 年11 巻2 号 p. 293-298
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、母子保健分野における歯科口腔保健の質向上に資する基礎的エビデンスを提供するために、母親の歯周病症状が1歳6か月児健診および3歳児健診時における子どもの口腔衛生状態にどのように関連するかを縦断的に明らかにした。結果は、地域ふれあい子育て教室の参加者のうち、歯科健診を受診した母親とその子どもで1歳6か月児健診、3歳児健診を受診した87組、母親の平均年齢が33.0歳、歯周病症状のある割合が31.0 %であった。1歳6か月児健診時には、歯周病症状あり群の方が子どもの歯の汚れがある割合が低かった。これに対して、3歳児健診時には、母親の歯周病症状あり群と子どもの歯の汚れとの関連が見られなかった。さらに、1歳6か月児健診から3歳児健診時の子どもの歯の汚れの悪化と母親の年齢、間食時間を決めていないことに関連が見られることが示唆された。したがって、子どもの歯の汚れの予防には、母親の年齢層に応じた保健指導や間食時間のルール化を促す介入が重要である。
  • 粕谷 昌貴, 田中 伸治
    2025 年11 巻2 号 p. 299-316
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国における需要追随型の駐車場整備は、供給過剰による需給のミスマッチを招き、街並みの分断やにぎわいの喪失といった都市問題の原因となっている。しかし、供給量の上限値を設定し需要を管理する理論的アプローチは確立されておらず、特に大都市近郊における需給実態の解明は十分でなかった。そこで本研究では、東京近郊の3市の中心市街地を対象に駐車場の需給量を定量的に評価したうえで、理想的な交通体系の実現や上位計画の政策内容を考慮した「望ましい分担率」という新たな評価軸を導入し、需給管理型の総量規制の可能性について、その有効性と実現に向けた課題の検討を行った。分析の結果、対象地域では需要が最も高まる休日のピーク時においても、供給が需要を大幅に上回る「供給過剰」の状態にあることが確認された。さらに、「望ましい分担率」に基づき需要削減の可能性を評価したところ、特に「休日の公共交通利用を平日の水準まで引き上げる」施策が高い削減ポテンシャルを有することが示唆された。以上の結果は、画一的な駐車施設の附置義務基準からの転換という政策課題の解決に向け、本研究で提案する手法が、大都市近郊という事例を通して需給管理型の総量規制を具体的に検討するための有効なツールとなり得ることを示唆している。
  • 南海トラフ巨大地震の被害が想定される和歌山県海南市・御坊市・田辺市を対象として
    小森 蒼, 高木 悠里, 嘉名 光市
    2025 年11 巻2 号 p. 317-327
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    南海トラフ巨大地震は近い将来高確率で発生すると想定されており、被害が想定される地域では地震及び津波への対策が求められる。加えて、人口減少に伴い公共施設の在り方が見直されており、公共施設の総量削減や津波被害想定地域での公共施設の移転や再配置等が行われている。今後災害で大きな被害が想定される自治体では、都市・防災・公共施設の複合的な観点からの都市づくりが求められる。そこで本研究は、南海トラフ巨大地震での被害が想定される和歌山県を対象として、都市・防災・公共施設に関する行政計画の策定プロセスや庁舎の移転・建て替えや諸計画の策定に関連するプロセス、計画間の連携・調整の実態を明らかにすることを目的としている。和歌山県沿岸部の各自治体の計画策定状況や庁舎の更新状況から海南市・御坊市・田辺市の3自治体を抽出し、市街地の状況と計画内容、庁舎の更新と防災の関連性、各計画間の関連性について文献調査及び自治体へのヒアリング調査により把握した。その結果、都市に関連する計画と防災については計画間の連携がみられた。施設の将来方針は利用率や老朽化の度合いから決められていたが、公共施設に関する計画内には防災を考慮した方針については記載がみられた。また、庁舎や消防署などの災害時の拠点となる施設については、建物更新時に災害を考慮してあり方を検討するという動きはみられた。
  • 群馬県前橋市における民生委員・児童委員の視点を通じて
    塚田 伸也, 田崎 史江, 剱持 卓也, 松田 拓也, 森田 哲夫
    2025 年11 巻2 号 p. 329-336
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、群馬県前橋市を事例に地域を包括的する公的ボランティアである民生委員・児童委員へのヤングケアラーに関するアンケート調査を通じてヤングケアラーの実態を把握するともに今後の課題や取り組みについて検討を行った。研究の結果、前橋市における民生委員・児童委員のヤングケアラーへの認識は高く(9割以上が認識している)、「勉強・学習や悩み相談」「自由時間の確保」などといった日常生活面への影響を危惧している傾向が見られた。また、課題に対する認識では、ヤングケアラーとしての本人の自覚よりも、支援する主体間の連携や福祉サービスの充実、専門人材の配置などを重要視している傾向が見られた。さらに、「ヤングケアラーの全般的な取り組みの重要性」と今後の取り組みである「啓発研究」「支援体制」「相談交流」の3つの因子との関係性について重回帰分析を行った結果、「相談交流」が全般的な取り組みの重要性に対して最も重要な影響を与えている因子であることが分かった。
  • 篠原 蓮, 森田 哲夫
    2025 年11 巻2 号 p. 337-357
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    全国平均や都市部と比べ、少子高齢化、人口減少が進む山村地域では、人員不足により従来の役場のサービス提供体制を維持できないなどの問題が生じている。また、山村地域においては、世帯内の運転できる者の有無により高齢者の居住意向が異なる、子や孫の若年層が送迎等の負担を感じるといった特徴がある。中でも、子育て世帯は、子育て、親戚の面倒をみる立場にありながら、働く者が多い世代である。また、子育て世代は、妊娠、出産後の間もない期間の手続きを申請しなければならない負担感があり、子育てに関する正確な情報の入手等を求める声が多いなどの役所の窓口サービスに関する要望がみられる。本研究の目的は、群馬県嬬恋村を対象に、役所窓口サービスにおける情報システムの導入が山村地域の居住意向に及ぼす影響を実証的に明らかにすること、情報システム導入による子育て世帯の居住意向の向上のための施策について考察することである。分析の結果、山村地域の子育て世帯は、コミュニティ形成の支援、親戚の送迎や介助、子育ての手続きに伴う負担軽減が情報システムによりなされることにより、情報システム利用意向を形成することが明らかになった。また、子育て世帯の中でも、子どもの年齢が3歳以下であり親戚が村内に住んでおり、子育て、送迎や介助による負担が大きい層が負担軽減への期待から居住意向を増すことが明らかになった。
  • 二宮 祐
    2025 年11 巻2 号 p. 359-366
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    日本における大学院進学率は特に文系の分野で依然として低水準にとどまっている。本研究はその背景にある要因として、大手企業における文系修士の新卒採用実績を分析する。東洋経済新報社が発行する『就職四季報』2010年度版、2015年度版、2020年度版、2025年度版を用いて検討した結果、企業規模にかかわらず文系修士を採用する企業の割合に増加傾向は認められなかった。採用実績がある場合でも、その数は毎年1~2名が一般的である。業種別では、コンサルタント・シンクタンク、エネルギー、情報通信で比較的高い採用率を示したが、他の業種では2~4割にとどまった。仮説検証では、①文系修士を一度採用した企業が継続的にその採用を行う傾向はない、②博士を採用する企業は文系修士も採用しやすいものの、そのような企業の割合は高くならない、③「訓練可能性」が関係する平均勤続年数と文系修士の採用の関連は必ずしも明確ではない、④多様な大学院から採用する傾向は否定され、採用実績は旧帝大や有名私立に偏っていることが明らかとなった。これらの結果は日本企業の「メンバーシップ型雇用」を背景とする文系修士の専門性や「訓練可能性」が評価されない現状を示している。「高度専門職業人」の養成に関する文系大学院と民間企業との認識をすり合わせる必要を提起する。
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