霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: D3-5
会議情報

口頭発表
嵐山 E集団におけるニホンザルの行動と人によるパーソナリティの評定の関連
*片山 洸彰*山田 一憲*中道 正之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 動物のパーソナリティ研究において,人が対象動物のパーソナリティを質問紙を用いて評定するという方法が用いられている.しかし,質問紙により見出された動物の性格特性が個体のどのような行動の個体差を表すのかを詳細に調べた研究は少ない.本研究では,(1) ニホンザルに対してパーソナリティの評定を行うとどのような性格特性因子が抽出されるか,(2) 見出された性格特性因子は,どのような行動の個体差を表現したものなのか,どのような個体の属性と関連しているのか,を明らかにすることを目的とした.
 嵐山ニホンザル E集団の成体メス 30頭に対し,3名の評定者(筆者を含まない)が「おくびょう」,「子ども好き」などの 17の形容詞を用いてパーソナリティの評定を行った.筆者は評定対象であった30頭のうち 16頭に対して行動観察を行った.行動観察は,2012年 8月から 11月にかけて行った. 1セッション 30分の個体追跡法を用いた連続観察を行い,1頭あたり 16セッションずつ行った.総観察時間は 128時間であった.評定に用いた 17項目について評定者間信頼性の低かった 3項目を分析から除き,残された 14項目について主成分分析を行った. 主成分分析の結果,おくびょうさ,攻撃性,依存性,活動性という 4成分を性格特性因子として抽出した.さらに,これら 4成分と観察で得られた行動や個体の属性との関連を分析すると,おくびょうさはサプラント行動や順位,攻撃性は威嚇行動,依存性はオスとの近接行動,活動性は年齢と関連していることが示された.
 パーソナリティの評定という方法によって,ニホンザルの性格特性因子を表現することができた.さらに,それらの性格特性因子が個体の属性や行動の個体差によって裏付けられることも示された.一方で,パーソナリティの評定に用いられている項目の中には評定者のバイアスが強く影響する評定項目が存在することも示唆された.

著者関連情報
© 2013 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top