抄録
骨格筋の機能形態学的解析を行うさいには,筋線維タイプ,その構成数比,太さ,数などの筋線維構成が重要な情報となる.筋線維タイプは収縮特性や代謝特性と対応し,筋線維の機能的特性を示すパラメータとして重要である.組織学的な筋線維タイプの判別には主として酵素組織化学あるいは免疫組織化学的手法が用いられる.通常,これらの手法においては新鮮試料が用いられる.もしも長期間にわたって保存された標本から得られた骨格筋試料においても筋線維タイプの判別が可能であれば,希少種や時間をかけて詳細な肉眼的解剖を行いながら筋線維タイプ構成を明らかにすることができ,有用性が高い.Jouffroy and Medina (1996) は免疫組織化学的手法を用いてホルマリン固定・保存標本から得られた骨格筋試料においても筋線維タイプの判別が可能であることを示した. Kojima et al. (2002) はこれを確認するとともに固定や保存の条件が及ぼす影響を検討した.小島(2010)は保存期間が 10年を越える標本から得られた試料においても筋線維タイプの判別が可能であることを確認した.従来よりホルマリン固定・保存試料に対して用いられてきた Sudan black Bなどを用いた脂肪染色と免疫組織化学的手法を組み合わせて使用することにより,収縮特性と代謝特性の両者を反映した筋線維タイプの区別ができる可能性がある.本発表では現在用いている手法を紹介するとともに,長期保存標本の骨格筋の機能形態学的解析において,どれだけ意味のある情報を引き出すことができるか検討する.