霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-54
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ポスター発表
都市部の生息するニホンアナグマ ( Meles anakum ) の食性と生態
*上遠 岳彦*小林 咲耶*小林 翔平*川島 美菜*金子 弥生
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抄録
 日本の本州,四国,九州に分布するイタチ科のニホンアナグマ (Meles anakuma以下,アナグマ)は,主に丘陵地から山地帯に生息し,都市部での生態については,報告が殆ど無い.今回,東京都の都市部に生息するアナグマの個体群を対象に,フン分析による食性分析と,直接観察,カメラトラップ法による生態と行動の記録・解析を行った.
 調査地は,東京都心から約 20km西方に位置し,少数の建造物が散在し,面積約 60haで,周囲を住宅街に囲まれている.調査地の約半分は,人が殆ど出入りしない地域である.アナグマの生息は 2008年に初めて確認され,その後,建物の床下等の人工建造物を含む 16カ所の巣穴を確認した.2009年以来,連続して繁殖が確認されている.
 まず,都市部での食性を明らかにするために,フン分析を行った.6カ所のタメフン場から採取した計 44個のフン(2012年 4月~ 12月)を分析し,内容物を 11種類に分類した.その結果,ミミズと地上性昆虫は通年見られ,クワ,ムクノキ,エノキの果実が,それぞれ結実する時期にフンの体積の大半を占めた.人工物については,試料の 20%前後の出現頻度に留まりその量も少なく,食物に関して人間活動に強く依存する傾向はみられなかった.しかし,調査地内の住民によるネコの給餌場においてキャットフードの採餌が見られた.今回のフン分析手法では,未消化の固形物が残らないことからキャットフードは検出できなかった.一方,カメラトラップ法による記録の解析から,山地の個体群と異なり,冬期も連続して活動することが明らかになった.冬期は,自然の巣穴よりも建造物の地下空間を休息場として利用する傾向が見られた.地下空間の気温は,建物空調の影響で外気よりも 4~ 6℃高く,このことが,冬期の行動に影響している可能性が考えられるが,餌資源の影響なども含め,今後の検討課題である.
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© 2013 日本霊長類学会
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