霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
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受賞講演
霊長類のコミュニケーションの進化
*香田 啓貴
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p. 24-

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抄録

 霊長類の社会構造が種によって独自性があるように,霊長類のコミュニケーションも種に応じて変化する多様性があり,種に特有な形で存在している.高次な認知機能を持つ霊長類では,コミュニケーションが彼らの社会生活において果たす役割が大きいことは言うまでもないだろう.ヒト以外の霊長類では,ヒトとの近縁性や系統的な連続性から,ヒトとのコミュニケーションとの比較研究が豊富である.ヒトの言語を代表するような,ヒトの高次なコミュニケーション能力や関連する認知過程との類似性や連続性を議論する研究が,とても多い.同時に,サルや類人猿の行動研究の進展で,純粋なヒト化にかかわる研究から離れ,種に特有なコミュニケーションに関する研究やその証拠も十分に蓄積されていると思われる.人類進化という霊長類学の原点である視点,同時に種そのものと向き合う動物学としての視点,どちらにとってもコミュニケーションの進化というテーマは大変おもしろいものである.本発表では,近年の演者自身が,種の独自性という視点・ヒトとの連続性という視点,どちらも持ちながら取り組んできたコミュニケーションの研究例を紹介したい.
 種の独自性という視点では,東南アジアに生息するテナガザルの「歌」に関する研究を,ヒトとの連続性という視点では,母子間コミュニケーションとその認知に関する研究を紹介したい.そのほかにも,異種間コミュニケーションや霊長類の生活史とコミュニケーションの発達など多岐にわたる研究を紹介したい.
 このような栄誉ある機会をいただき,これまでの研究をあらいなおし,今後の霊長類のコミュニケーションの進化という研究テーマを続けるうえで,今後に必要な方向性や姿勢について熟慮する場としたい.

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© 2013 日本霊長類学会
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