抄録
私たち愛知県立一宮高等学校生物部では,ニワトリ胚の発生に関する転卵と卵の置く向きの影響についての研究を行っている.転卵とは,親鳥がくちばしや脚を使って卵を転がすことである.これはニワトリを含む多くの鳥類にみられる習性のひとつであり,一般的に,転卵を行わないと卵黄表面にある胚が卵殻膜に付着してしまい,卵の中の胚が死ぬと考えられている.このように,トリの孵化には転卵が必要だと考えられているが,このことが本当か,また,転卵が胚の発生にどのような影響を及ぼしているのかを調べた. 実験は次のように行った.有精卵を用意し,横向きに置き転卵をする卵,鈍端を上にしておく卵,鋭端を上にしておく卵,横向きのまま置いておく卵の4実験区に分けた.卵の管理は人工気象器で行い,1日にそれぞれの実験区の卵を3~5個ずつ割って,中の胚の大きさや体重などを測定した.無精卵,もしくは成長の過程で既に死亡していた胚については,正常な平均値を算出することへの妨げとなるため使用せず,おおよそ何日目で死亡しているかを議論して記録した.また,転卵を行わないと中の胚が卵殻膜に付着して死亡するといわれているので,死亡していた胚が卵殻膜に付着していたのかどうかについても記録した. 結果として,転卵をしない実験区の胚の死亡率は,転卵をする実験区に比べて高く,生存していた胚においても全体的に小さくなる傾向がみられた.また,転卵をしない実験区の胚は,奇形や成長の遅れた個体,卵殻膜に付着した状態で死亡していた個体も多かったのに比べ,転卵をした実験区の胚にはこのような個体はみられなかった. このことから,転卵をしないことで必ずしも胚が死亡するわけではないが,大きく正常な胚を発生させるには,転卵をすることが効果的であると私たちは結論づけた.