霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: A3
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口頭発表
嵐山集団のニホンザルにおける敵対的交渉後の親和的交渉に伴う音声の機能
勝 野吏子山田 一憲中道 正之
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抄録
敵対的交渉の直後(PC)には、攻撃者や被攻撃者において不安や攻撃を受けるリスクが高まることが知られている。PC場面において敵対的交渉の当事者間や周囲の個体との間で行われる親和的交渉には、これらのリスクを低減させるという利益がある。ニホンザル(Macaca fuscata)をはじめマカクやヒヒは、穏やかで音量の小さい音声(girney, grunt)を親和的な交渉の際に用いることがある。この音声は敵対的な意図がないことを伝える機能があると考えられている。PC場面においてこの音声は、攻撃者や被攻撃者の不安を減少させることが予測される。本研究は、この音声がPC場面において不安を減少させる機能を持つのかを明らかにすることを目的とした。嵐山ニホンザル集団において、PC場面における攻撃者と被攻撃者を対象とした個体追跡観察を行った。元の敵対的交渉の相手、あるいは周囲の個体との間で親和的な交渉が生じた場合には、音声が伴ったかどうかを記録した。統制(MC)場面として、翌観察日に同じ個体に対して個体追跡観察を行った。不安の指標として自己スクラッチを記録し、親和的交渉の前後それぞれのスクラッチ頻度を算出した。PC場面ではMC場面と比較し、親和的交渉を行う際に音声が伴う割合が増加した。PC場面のみに限って検討すると、親和的交渉が始まる際に相手から音声を受けた場合には、音声なしで交渉が始まった際と比較し、交渉後のスクラッチ頻度がより減少する傾向がみられた。次に、親和的交渉の種類によりスクラッチ頻度の減少する割合が異なるのかを検討した。毛づくろいや接触と比較して、近接のみの場合にはスクラッチ頻度は減少しなかったが、音声を伴った近接ではスクラッチ頻度が減少した。これらの結果から、親和的な交渉に伴うgirneyやgruntは受け手の不安を減少させることが示唆された。この音声は、社会関係を修復、維持する役割を果たしていると考えられる。
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© 2015 日本霊長類学会
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