霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: A25
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口頭発表
マーモセットの音声生成の生理学的メカニズム
西村 剛香田 啓貴徳田 功脇田 真清伊藤 毅
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抄録
小型新世界ザル・マーモセット類は、フィーとよばれる、ホイッスル音のような音声を出す。ヒトを含む多くの陸生哺乳類の音声は、声帯振動で作られる音源により、声道空間が共鳴して作られる。ヒトは、声帯振動と声道共鳴との独立性が高く、それぞれの制御の自由度が高い。これを、音源-フィルター理論とよぶ。一方、一部の管楽器では、声帯振動が声道共鳴の影響を強く受けて、それぞれの自由度が低い。ヒト以外の霊長類の音声が、どちらのメカニズムで作られるのかについては、長く議論がある。その解明は、ヒトの話しことばの生理学的メカニズムの進化プロセスを明らかにするために必須である。その独立性を判定するために、ヘリウム音声実験がよく用いられる。ヘリウム環境(窒素をヘリウムに置き換えた大気条件)では、音速が速くなり、声道共鳴のみが変化する。音源-フィルター理論によれば、ヘリオックス環境では、音声のフォルマント(声道共鳴)が変化するが、ピッチ(声帯振動)は変化しない。本研究は、3個体のコモンマーモセットを対象にヘリウム音声実験を実施し、その音響学的特徴の分析に加えて、声道形状をもとにした音響シミュレーションを組み合わせて、フィーの生成メカニズムを明らかにした。ヘリウム条件下では、ピッチが、小さいながらも有意に上昇した個体があったが、フォルマントは、いずれの個体も大きく上昇した。この結果は、フィーは、ヒトと同様に音源・フィルター理論によって作られていることを示す。ビッチの小さな上昇は、弱い音源・フィルター結合によっており、その結合の程度は、喉頭腔形状に依存していることが示された。つまり、咽頭腔形状の個体差により、結合の程度が異なると示唆された。この成果は、真猿類における音声-フィルター理論の普遍性を示すとともに、種によっては咽頭腔形状に依存した弱い音源・フィルター結合が音声制御の自由度を制限する可能性を示唆した。
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© 2015 日本霊長類学会
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