抄録
屋久島西部の海岸域には照葉樹林が大面積で残っており、ここを縦断する林道(通称、西部林道)周辺を中心に、1970年代よりニホンザルの長期継続調査がなされてきた。しかし、この地域の多くは、針葉樹の植林は少ないものの、薪炭林や樟脳用のクスノキ林として、人が利用してきた森である。そのため、二次林の要素が強い森だと言える。そこで、西部地域の林道から離れ、人為的な攪乱がほとんどないと思われる一時林で、ニホンザルの調査を行い、西部林道周辺と比較した。調査地は、「半山中標高域」(西部地域の北、標高約400-550m)と「瀬切川右岸中標高域」(西部地域の南、標高約450-600m)である。いずれも、イスノキが優先する暗い一次林である。ここにカメラトラップを各20台設置し、ニホンザルやニホンジカ等の動物を撮影した。「半山中標高域」で、ニホンザルの撮影頻度が最も低く、低地林の1/4~1/10程度の撮影頻度であった。しかし、「瀬切川右岸中標高域」は、低地の森と同程度の撮影頻度であった。一方、ニホンジカは、「半山中標高域」「瀬切川右岸中標高域」共に、低地林の1/4~1/10程度の撮影頻度だった。林床の草本への依存度が高いニホンジカでは、暗い一次林では密度が低下する可能性がある。これに対して、ニホンザルでは一次林の中でも、生息密度に変異がある可能性がある。その変異の原因は今のところ明かでないが、一次林でも高密度で生息できる可能性が考えられる。