群れの中で、上位個体は下位個体よりも多くの食物を獲得することが知られているが、栄養価の高い食物が集中的に投与される野猿公園の餌場では、その順位格差が強調されることがわかっている。演者は、高崎山のニホンザル餌付け群で行った先行研究(栗田,2007)で、上位雌は下位雌の2.2倍のエネルギーを餌場で獲得していたことを予報として示したところである。その後、高崎山群で調査個体数を増やし、高崎山と同じ餌付け群であるが給餌量と給餌方法が異なる幸島群でも餌獲得量調査を行い、獲得量の順位格差の2群間比較を行った。本発表では、まだ幸島群での調査個体数が少ないが、2群間の比較結果を発表する。高崎山では2005年~2008年の間に上位下位8個体ずつのデータを収集し、幸島では2011年~2014年の間に上位下位3個体ずつのデータ収集を行った。その結果、幸島の上位個体は下位個体の1.8倍(エネルギーベース)の餌を、高崎山の上位個体は下位個体の1.5倍(同)の餌を獲得していた。発表ではその詳細について報告する。