霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P7
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ポスター発表
半野生オランウータンにおける食物移動のパターン
田島 知之マリム ティトル・ピーター
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抄録
霊長類における食物移動は、親子間では一般的に観察されるが、血縁のないオトナ間でおこることは珍しい。近年、単独性の強い野生オランウータンのオトナ雌雄間で受動的な食物移動がおこることが報告された(van Noordwijk & van Schaik, 2009)が、樹上の高所でおこる野生オランウータンの社会交渉は観察が難しく報告例はいまだ少ない。本研究は、多くの社会交渉がおこると予想される、元リハビリ個体を中心とした半野生個体群を対象とし、食物移動がどのような関係においておこるか分析した。2009年11月にマレーシア・サバ州のセピロク・オランウータン・リハビリテーションセンターの給餌台周辺で行動観察を16日間おこなった。その間に給餌台を訪れた元リハビリ個体を中心とした21頭(フランジ雄1頭、アンフランジ雄1頭、オトナ雌2頭、ワカモノ雄8頭、ワカモノ雌9頭)を対象に、個体間の食物移動交渉について記録した。非所有者による食物獲得試行(手・口で一部を取ろうとする行動)122例のうち67例で移動が成立した。これらには18頭が関与したが、最も多く関与したのはアンフランジ雄であった(全体の30%)。ワカモノどうしでも高い割合でおこった(43%)が、フランジ雄とオトナ雌、ワカモノの間ではおきなかった一方、アンフランジ雄からオトナ雌への食物移動は観察された。アンフランジ雄が食物移動に多く関与し、オトナ雌への移動もみられた点で先行研究と類似した傾向を得た。また、ワカモノどうしの食物移動が高い割合で見られたことは、オランウータンのワカモノ期が社交性の高い時期である(Galdikas, 1995)ことに関係があるだろう。霊長類の非血縁オトナ間でおこる食物移動は、親から子への食物分与を基盤として発達するといわれる(Jaeggi & van Schaik, 2011)。オランウータンでは、その間に位置するワカモノ期において、親以外の多くの他個体と食物移動交渉をもつことが、その後オトナ間で少ないながらも食物移動がおこる要因になると考えられる。
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© 2015 日本霊長類学会
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