霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P32
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ポスター発表
コモンマーモセットにおける尾食い
三輪 美樹森本 真弓夏目 尊好中村 克樹
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抄録

脳研究や精神疾患研究には、中枢神経系の構造や機能がヒトと大きく異なるマウスやラットなどのげっ歯類は適していない。霊長類を用いた研究が望まれている。南米産の小型霊長類であるコモンマーモセットは、霊長類の中ではマカク属サルと比べ、小型であるためハンドリングが容易で飼育も省スペースで済むこと、繁殖力に優れていること、更にはヒトと同様に両親と子どもからなる核家族単位で生活しヒトと近しい社会行動を営むことなどから、近年は日本でも実験動物としての価値が高まっている。
飼育下のコモンマーモセットは、1年に2回、1回2-3子出産することが可能である。その周産期に見られるトラブルには、流産や死産など他の動物種でも頻見されるものに加えて、尾の長いマーモセットならではとも言い得る「尾食い」がある。尾食いとは、出生直後から数日の間に同居家族が新生児の尾を食べてしまう現象である。有効な対策がなく、発生をみる施設では国内外問わず対応に苦慮しているのが実情である。
当施設でも、両親と複数の子どもからなる家族単位で飼育しているコロニーで、尾食いが発生している。尾食いについて調べたところ、尾食いが発生する家族と発生しない家族がはっきり分かれていた。また、尾食いの被害個体は、自身が親となった時に子どもに対して尾食いすること、すなわち、尾食いが継代伝播することも明らかとなった。また、被害個体には発育が阻害される傾向も見られた。本発表ではこれらの知見について報告する。

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© 2015 日本霊長類学会
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