霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: P25
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ポスター発表
同所的に生息するグエノン類3種における苦味受容体TAS2R16の機能解析
河本 悠吾西 栄美子鈴木-橋戸 南美早川 卓志赤尾 大樹松村 秀一田代 靖子橋本 千絵五百部 裕今井 啓雄
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抄録

レッドテイルモンキー(Cercopithecus ascanius)、ブルーモンキー(C. mitis)、ロエストモンキー(C. lhoesti)は東アフリカのウガンダ西部にあるカリンズ森林において、同所的に生息している。食性は雑食で、果実、葉、昆虫など食べるが、採食レパートリーなどの生態はそれぞれ少しずつ異なる。上記3種において苦味受容体遺伝子TAS2R16の塩基多様性を調べたところ、受容体を構成するアミノ酸のうち、86、144、153、182番のアミノ酸に種特異的な変異が見つかった。ヒトとアカゲザルを対象とした先行研究(Imai et al., 2012)では、TAS2R16の86番アミノ酸の変異が機能に影響を与えていることが示されている。そこで本研究では、グエノンにおいても86番を含むアミノ酸変異が受容体の機能に影響しているかどうかについて、培養細胞を用いて解析した。レッドテイルモンキー、ブルーモンキー、ロエストモンキー、アカゲザル、ヒトのTAS2R16をそれぞれ組み込んだプラスミドベクターを作製し、培養細胞に導入した。そして、カルシウムイメージング法を用いて、苦味物質が添加された際の培養細胞の応答を測定した。苦味物質にはヒトのTAS2R16で受容されることが知られているサリシンを用いた。EC50(50%効果濃度)を算出し、受容体の機能を評価した。レッドテイルモンキー、ブルーモンキー、ロエストモンキーのEC50(mM)はそれぞれ、2.17、4.53、3.45であった。レッドテイルモンキーとブルーモンキー、レッドテイルモンキーとロエストモンキーの間でEC50の値に有意差がみられ、レッドテイルモンキーは他に比べサリシンに対する反応性が高いことが示された。今後、グエノン種間で一つ一つアミノ酸を置換した変異体を作製し、種間の機能差に関わるアミノ酸の特定を試みる。

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© 2016 日本霊長類学会
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