大分県大分市にある高崎山自然動物園には、2016年1月現在、B群約732頭、C群約790頭を合わせた約1522頭のニホンザルMacaca fuscataが生息しており、この群れには、餌付けの開始後から先天的な奇形個体や四肢の指先の一部が白くなる現象(以下、白化)があらわれている。中でも白化は、個体への悪影響が観察されないことから、これまでに研究されてきた例は少ない。本研究でこれまでにおこなった白化個体数把握のための調査によると、白化個体数はB群で43頭、C群で35頭であり、わずかではあるが、C群よりもB群に白化個体が多いことが判明した。また、白化部位を目視すると、白毛と正常毛とでは明瞭に色が違うことがわかるが、その詳細は不明であった。そのため、本研究では、白化個体と非白化個体から毛を採取し、実体顕微鏡を用いて毛の比較観察をおこなった。対象個体は、B群の白化個体が1個体とC群の白化個体が1個体、B群の非白化個体が2個体である。毛の比較観察には、白化個体の白毛および正常毛と非白化個体の毛を用いた。観察の結果、非白化個体の毛および白化個体の正常毛には、メラニン顆粒が散在あるいは密になっている部分が確認された。しかし、白毛には、メラニン顆粒は全く観察されなかった。この原因として、白化個体の白化部位では、皮膚や毛の色素沈着に必要であるメラニン色素が形成されていない可能性が示唆された。また、メラニン色素は色素形成細胞であるメラノサイトで産生されて組織へと輸送されることが知られているが(Weiner et al., 2014)、何らかの理由で、組織へと輸送されていないことも考えられた。そのため、毛の顕微鏡観察だけではなく、白化部位の詳細な検討が必要であろう。