ダーウィンの「種の起源」(1859)以来,種分化機構は地球上生命における多様性維持の基盤と考えられてきた。これらの中には,大容量のゲノム情報を包含する染色体変異のような生物現象を含んでいる。初期の研究において進化的に重要な関係を示す示唆的な現象が示されている。雑種におけるゲノムの劇的変化,雑種種分化,染色体種分化等である。雑種形成に関わる生物学的・進化的意義は古来議論されてきた。霊長類研究所のヨザルのコロニーで生じた異種間雑種に,新奇の染色体変異を発見した。Aotus azarae boliviensis (2n = 50) メスとA. lemurinus griseimembra (2n = 53) オスの間に7個体の種間雑種が生じた。そのうちの4個体の染色体を解析したところ,2個体は単なるゲノムの混合であったが,他の2個体の内1個体においてX染色体トリソミーが,他の1個体において18番染色体トリソミーならびに21番と23番染色体の相互転座が観察された。さらに,後者の個体では18トリソミーと21/23相互点座のモザイクが血液細胞で観察された。これは有胎盤類でははじめてのケースであり,雑種効果(hybridization effect)によって生じたものと推測され,雑種種分化や雑種染色体進化の機序を検討する糸口となる可能性がある。ヨザル類が南米大陸北部において複雑な種分化ならびに染色体変化を生じていることにも深く関わっているかもしれない。