非定常, 非一様性の強い河川感潮域における懸濁粒子の輸送と堆積機構を明らかにするためには, 流速と懸濁粒子の時間的, 空間的変動を把握する必要がある. 流速とともに散乱体の濃度に関係する体積後方散乱係数が得られる超音波ドップラー流速分布計を用いて, 太田川放水路にて縦断移動観測と定点観測を行った. 下げ潮期と上げ潮期とでは輸送形態が大きく異なる. 平水時, 下げ潮期の太田川放水路では, 陸域からの懸濁粒子はほとんど堆積することなく, 上層を通って広島湾表層に流出している. 上げ潮期では河口付近から1.5km上流付近で河床材料が再懸濁し, 上流に輸送され, それらの多くが河口から1.8km上流付近の河床に堆積していると考えられる.