抄録
有明海では1980年頃から赤潮の発生が認められるようになり, 近年では発生時期および範囲が拡大し, 2000年のノリ不作を招く等, 深刻な問題となりつつある. 最近の観測では, 以前は見られなかった底層の貧酸素化が認められ, 二枚貝をはじめとする底生生物への影響が懸念されている. しかし連続観測の不足から, 有明海における富栄養現象の実体に不明な点が多い. そこで本研究では多項目水質の長期連続観測を実施し, 過去2年間に発生した赤潮や貧酸素化の過程を把握し, 水質変動の支配要因を明らかにした. 諌早湾の水質には, 筑後川をはじめとする湾外からの淡水流入が調整池から排水と同様に大きな影響を与えている.