南海地震によって津波災害が危惧される瀬戸内海の津波の挙動は, その東西の入口となる紀淡・鳴門・豊予海峡から入る津波の特性により規定されると考えられ, この影響を, 各海峡部における津波の流入・流出特性, 海峡部通過時における津波エネルギーの逸散特性から考察した.その結果, 両水道に進入した津波の水量を, 紀淡・鳴門海峡では約43-97%, 豊予海峡では約20%低減すること, これら東西の海峡は, 津波の卓越する周期成分波に対して優れたエネルギー低減効果を有し, 瀬戸内海の津波高の抑制に寄与していること, 東西全ての海峡では約8-9時間まで流入傾向を示し, 瀬戸内海はこの時間までは水位の高い状態が続くことを示した.