海岸工学論文集
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51 巻
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  • 沖 和哉, 間瀬 肇
    2004 年 51 巻 p. 1-5
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    エネルギー平衡方程式に基づく波浪モデルは計算時間が短くて済み, 広領域の波浪計算に向いている. また, 多方向不規則波の変形も容易に取扱うことができる. 本研究ではその簡便さを活かしつつ, 回折効果を含むエネルギー平衡方程式を用いて, 総合的に高精度な波浪数値予測モデルを構築した. まず, 直交格子を用いながらも任意の角度で設置された構造物での反射を正確に取扱うことができるよう改良した. これにより, 複雑な構造物配置に対しても容易に適用できる. 次に, Thornton・Guza (1983) の砕波減衰モデルも選択できるようにし, 球面浅瀬による波浪変形の実験結果と比較し, 精度が向上することを示した.
  • 間瀬 肇, 由比 政年, 雨森 洋司, 高山 知司
    2004 年 51 巻 p. 6-10
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    位相平均モデルの一つである波作用量平衡式に基づき, 流れの影響を考慮した砕波限界式とエネルギー減衰, および波峰方向のエネルギー移流 (回折効果) を組み込んだ波浪変形予測モデル (WABED: Wave Action Balance Equation with Diffraction effect model) を作成した. まず, 1次元伝播における理論値と計算値を比較して両者は良く一致することを確かめた. 次に, 離岸流モデル場における波浪変形解析を行って, 回折効果を導入すると波高の集中が緩やかになることを示した.
  • 平山 克也, 平石 哲也
    2004 年 51 巻 p. 11-15
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    乱れエネルギーの生成項に時間発展型のBoreモデルを適用した乱流モデルに基づく砕波モデルと, 汀線移動や海底面の露出を許容する遡上モデルを備えたブシネスクモデルを用いて, 4種類の斜面地形に対する砕波・遡上計算を行い, 実験結果や既存の実験式に対する計算精度を検証した. 本モデルは, 2段階勾配斜面上の浅水・砕波・遡上変形による波高や平均水位分布のほか, 斜面上の潜堤やバー・トラフ地形上でみられる波高分布を極めてよく再現するとともに, 引き波時の水平ステップ先端の露出も安定に計算した. また, 砕波帯内で生じる波高頻度分布の非対称化や成分波間の非線形干渉に対する再現性も良好であった.
  • 梅山 元彦, 新谷 哲也, 中山 恵介
    2004 年 51 巻 p. 16-20
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    2成層水域の緩勾配斜面上を伝播する内部波についての水槽実験を行い, 水槽断面で見られる内部波形の時間変化, 水深の変化に伴う波高と波速の変化, 密度境界面の一周期平均分結果を比較し布を, 理論, 可視化解析およびPIV解析から求め, それぞれのた. 理論的には, 非線形内部長波理論で密度境界面の変動を, エネルギー平衡式に逸散効果を考慮して浅水変形を, 運動量の平衡条件式に内部波ラディエーションストレスの概念を取り入れて密度境界面のセットアップとセットダウンを予測することを可能にした. また, 実験と同じ条件下での密度境界面の変化, 残差流ベクトルについて数値シミュレーションモデルを使って再現計算を行った.
  • 田島 芳満, Ole Secher Madsen
    2004 年 51 巻 p. 21-25
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    波の非線形性や水底勾配によって生じる非対称な底面軌道流速波形の特性を把握するために, ブシネスク方程式を用いた数値実験を行った.非線形波の特性を表す無次元パラメタを抽出し, これらを非線形波と同等のエネルギーフラックスを有する相当線形波, 相対水深, および水底勾配の関数として整理し, 実験近似式を提案した. モデルを水理実験結果と比較し, モデルの砕波帯内外における適用性・妥当性を確認した. 砕波帯内では流速波形の非対称性が過大評価される傾向があったが, Surface Rollerによる影響を考慮することで予測精度が大幅に改善された. 本モデルでは波浪条件が線形理論で算定されるので, 実用性の面でも優れている.
  • 谷本 勝利, Phung Dalg Hieu, 曹 雪飛, 赤川 嘉幸, 齋藤 将人
    2004 年 51 巻 p. 26-30
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    水面上の空気の運動を含めて解く二相流モデルによる数値波動水路を開発した. 基礎方程式は非圧縮性流体の連続式とNavier-Stokes方程式である. 水と空気の境界面はVOF法に基づき解析する. 水と空気の密度はそれ自体変化しないが, 各セルにおいてVOF関数を用いて平均化した値を用いる. VOF関数の移流方程式, 運動方程式における移流項の差分化には2次オーダーのスキームを導入し, 精度の向上を図った. また, 造波にはソース方式を取り入れ, 背後に減衰帯を設けて無反射性としている. 本数値波動水路を一様斜面上での砕波, および直立壁の越波に適用し, それぞれ実験結果と比較することにより本計算手法が高い精度で適用できることを検証した.
  • 駒 曙光, 山城 賢, 吉田 明徳, 入江 功
    2004 年 51 巻 p. 31-35
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    著者らはこれまでに沖合から汀線までの広範囲にわたる波動現象を, 精度良く, 且つ, 比較的短時間で解析できる数値モデルの開発を目的に, 計算精度に優れ, 計算機の記憶容量や計算に要する時間が少ない境界要素法 (BEM) と砕波等の強非線形現象を解析できるVOF法を結合した解析法を提案した. 本研究では, より実用的な問題として, 構造物近傍の複雑な波動場を対象に有限振幅波 (第5次ストークス波) を用いて, 結合解析法の妥当性と適用性について実験結果との比較により検討するとともに, BEMおよびVOFの単独手法との比較により結合解析法の優位性について検討した. さらに, 幅広い周波数の成分波からなる不規則波を対象に解析を行い, その有用性を示した.
  • 桜庭 雅明, 弘崎 聡, 樫山 和男
    2004 年 51 巻 p. 36-40
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文は, 複雑な地形形状を有する場合の海岸波動現象を安定かつ高精度に計算可能な非構造格子を用いたCIVA/Level set法に基づく数値波動水路を提案するものである. 自由表面流れ解析における流れ場の計算には, Smagorinskyモデルに基づくLESの基礎方程式に対してSUPG/PSPG法に基づく安定化有限要素法を適用した. また, 自由表面位置の計算には基礎方程式である移流方程式に対して高精度に解析が可能なCIP法に基づくCIVA法を用いた. 数値解析例として, 越波問題, 遡上問題を取り上げ, 実験結果およびVOF法に基づく解析結果との比較を行い, 本手法の有効性を示した.
  • 陸田 秀実, 清水 研一, 土井 康明, 福田 和宏
    2004 年 51 巻 p. 41-45
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文は, 固体・気体・液体の相互作用の取り扱い, 固体および流体の大変形の取り扱い, 流体力による固体の弾性変形・崩壊挙動の取り扱いが可能な数値計算手法を新たに提案し, 種々の固体・流体相互作用問題への適用を行ったものである. 数値解法には, Euler型の数値解法として固気液3相を取り扱うことが可能なCIP-CUP法と, Lagrangian粒子群によって構成される固体の弾性・崩壊挙動の解析が可能な拡張個別要素法 (Extended Distinct Element Method, EDEM) を組み合わせたCIP-EDEM法を提案し, 複雑な自由液面挙動と非定常流体力による固体の運動, 大変形及び崩壊挙動との相互作用問題への適用性について検討を行っている.
  • 武若 聡, S. M. Ahmed
    2004 年 51 巻 p. 46-50
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    Xバンドレーダを用い, 台風通過時の高波浪を観測した. レーダエコーデータの解析を行い, 汀線位置と前浜勾配, 海底地形とバー位置, 個々波の遡上高さの沿岸分布を求め, その結果について検討した. 高波浪の継続時間が短かったために, 地形に顕著な変化はなかった. 波浪の伝播状況を調べ, 波向と波速の分布を推定した. 波速分布から海底地形を推定し, バーの存在を概ね捉えた. 個々の波の遡上状況を調べ, 遡上高が相対的に大きくなる領域が沿岸方向に伝播する状況を捉え, これがエッジ波の分散関係式を満たすことを示した.
  • 津守 博通, 杉原 裕司, 古寺 大悟, 吉岡 洋, 芹澤 重厚
    2004 年 51 巻 p. 51-55
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    海洋観測塔においてサンプリング間隔1秒で海面デジタル画像を取得し, 600枚の画像の平均値として精度の高い白波被覆率の算定を行った.海面撮影と同時に気象および波浪観測も行い, 気象・波浪条件に対する白波被覆率の依存性について検討した.白波被覆率の値はオーダー的に他の研究者のものと一致し, 高風速領域では海上風速ひ10の約3乗に比例して増加する.同じひ10に対しては, 大気の不安定性が強い場合, 波浪が減衰期にある場合の方が, 白波被覆率が相対的に大きくなることがわかった.また, 白波被覆率は風波のみが卓越する場合の方が, うねりが存在する場合に比べて相対的に大きくなることが明らかとなった.
  • 泉宮 尊司, 上野 晃, 石橋 邦彦
    2004 年 51 巻 p. 56-60
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    風洞実験水槽において, 小型微差圧計およびピトー管システムを用いて, 風波上の気流の圧力および風速変動を詳細に測定した.風波上の気流圧力の変動は, 水面波形とほぼ逆位相で変化しており, 風速が大きくなるにつれて波形の上下非対称性が現れることが示された.また, 風速変動に関しては水面波形とほぼ同位相で変化しているが, 2倍周波数変動や波形の左右非対称性が現れることなどが分った.これら圧力および風速変動の鉛直分布に関しては, 実測値は上方に向かって指数関数的に減衰する特性があることなどが明らかとなった.
  • 土屋 悟, 井坂 健司, 小林 智尚, 安田 孝志
    2004 年 51 巻 p. 61-65
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    室内実験PIV計測で得られた白波砕波の波形を用いて, 発達した風波上の気流をκ-ε乱流モデルを用いた数値解析により再現し, その乱流特性について検討した.その結果, 気流は水面形や波峰風下側に形成される剥離渦に強く支配されていることが示された.しかし渦度集中領域はこの剥離領域には直接関係していなかった.また乱れエネルギーは波峰風下側水面に集中していた.一方波峰から風下側の剥離域上端では高いエネルギー散逸率を示す領域が見られた.波峰近傍の水面では大きな負圧と強い気流せん断力も見い出され, これが波の前傾化などに寄与していると推察された.
  • 杉原 裕司, 津守 博通, 大賀 崇史, 吉岡 洋, 芹澤 重厚
    2004 年 51 巻 p. 66-70
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    海洋観測塔において得られた海上風乱流と波浪の現地観測データに基づいて, 風波とうねりが混在する波浪場における海面抵抗係数と海面粗度の特性を検討した.特に, 方向スペクトルから風波とうねりの伝播方向を同定し, 海面抵抗則がそれらの偏角にどのように影響を受けるのかに着目した.うねりが存在する場合の有義波高と有義波周期の関係は3/2乗則よりも下方に大きく外れることがわかった.海面抵抗係数に対するうねりの影響は主に低風速域において現れ, 高風速域では明瞭な依存性は認められなかった.また, 風波とうねりが混在する波浪場においても風波成分波が海面粗度を規定する主要な因子であることが明らかとなった.
  • 水谷 夏樹, 橋本 典明
    2004 年 51 巻 p. 71-75
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は風洞水槽実験による吹送流の特性について検討を行った.計測には高速ビデオカメラを用いた画像計測法を採用し, PIVによる風波内部速度場の算出を行った.また波高計との同期計測を行い, 波高計直下における流速の鉛直分布を時系列的に抽出することで時間平均による吹送流の分布を求めた.この実験手法の最大の特徴は, トラフレベル以上の吹送流分布を求めることが可能な点であり, 風波の発達が界面下の吹送流分布に影響を及ぼす点について明らかにすることができた.また, トラフレベル以上で輸送される実質の流量が相当量存在することを示し, 吹送流の予測計算において波浪の存在を無視することができないことも併せて明らかとなった.
  • 小笠原 敏記, 久保田 踊児, 安田 孝志
    2004 年 51 巻 p. 76-80
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    強風時吹送流の鉛直構造とバースト層内の乱流特性との関係を明らかにしなければ, 海水流動モデルの本質的な改善に結び付かない.そこで本研究は, 微小変動量の解析可能な階層的相関法によるPIV手法を開発しタによるアンサンブ, その高密度・高精度流速デール平均によって得られた統計量を基に, 白波砕波下のベキ則に従う流速分布の発達とバースト層内の乱流特性との関係を明らかにする.その結果, 強風下吹送流のベキ則層と強い乱流エネルギーを伴うバースト層が有義波高程度の厚さでほぼ一致し, ベキ則層の発達が砕波に起因する高周波乱流成分に依存していることを実証することができた
  • 木原 直人, 植田 洋匡, 山下 隆男
    2004 年 51 巻 p. 81-85
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    沿岸海洋環境に大きな影響を与える大気・海洋間での熱・物質輸送に重要な役割を持っている海面直下で発達する乱流熱対流へ3次元直接数値計算を適用した.この熱対流は風速3-4m/sの時と同等の物質輸送効果があることが風洞水槽実験によりこれまでに示されている.この大きな物質輸送効果を引き起こす要因として, 滑りなし境界条件をもつRayleigh-B6nard対流とは異なり, 滑り境界条件である自由表面を持つためだと考えられる.直接数値計算により求まった乱流統計量及び海面直下の渦構造により滑り境界条件である自由表面の熱対流への影響, 及び乱流特性を検討した.
  • 鵜崎 賢一, 松永 信博
    2004 年 51 巻 p. 86-90
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ラングミュアー循環流の形成機構については, 波と流れの相互作用によるCLII機構が有力視されている.しかしながら著者らは, 実験結果をもとに, その形成において水面波の存在は本質的ではなく, この循環流が吹送流自体の不安定によって形成されるというアイディアを提案した.本論文では, リジッド・サーフィス・モデルを用いた3次元LESを行い, このアイディアについてさらなる検討を行った.その結果, 計算においても循環流の形成が再現され, その形成において水面波の存在は重要でないことがわかった.また, 循環流によって形成されるストリークの間隔Sは, 水深hに対してS=1.8hの依存性をもつことがわかった.側方境界を周期境界として行った計算においても同様の循環流が再現され, 水槽実験で形成される循環流において側壁の存在は本質的でないということがわかった.
  • 角野 昇八, 鈴木 琢磨, 大西 祥久, 日引 俊
    2004 年 51 巻 p. 91-95
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    大気-海洋気液界面での気体輸送現象のうち, 沿岸砕波帯気液界面における気体輸送現象には砕波連行気泡特性が大きく関わっているとの立場から, ボイド率のみならず気泡移動速度などの特性を単独で測定可能なダブルボイドプローブを開発し, 淡水でその有効性を確認している. 本研究では, 電気回路を改良して塩水中でも使用可能なようにしたものを新たに製作するとともに, その精度を確認し, さらにそれを現地砂浜の小砕波中に設置して現地塩水砕波の連行気泡特性を測定するとともに解析した.
  • 鷲見 浩一, 兼藤 剛
    2004 年 51 巻 p. 96-100
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 2つの可視化水理実験とMARS法による砕波の数値計算を実施して, 混入気泡径と形状パラメータの関係を究明した.さらに微小凹凸乱れの発達過程を波内部の流速場・渦構造と関連づけて考究した.くびれや微小凹凸乱れなどの形状パラメータは, 入射波に依存して変化し, 混入気泡の大きさを支配することが判明した.また, 波内部の流速ベクトルは, 波頂部後方から波峰前面の微小凹凸乱れ領域に向かう半円形の分布となった.渦構造は, 微小凹凸乱れ領域の下端から中央付近において反時計回りの渦が発生し, 中央付近から上端では時計回りの渦が発生した.これらの大規模な渦が, 微小凹凸乱れの生成に寄与していると推察される.
  • 渡部 靖憲, 樫野 英之, 佐伯 浩
    2004 年 51 巻 p. 101-105
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    この論文では, 粘性, 乱れを考慮した波動下の流速場の数値計算結果を回転, 非回転流れに分離し, 砕波に伴う非回転流速場から回転流速揚への遷移について調べられている.砕波点を境に非回転運動エネルギーの一部は回転運動エネルギーへと遷移し, さらに小スケール乱れへとエネルギーを受け渡す.回転流れ中の歪み率は非回転流れのそれより非常に強く乱れ生成と密接な関係をもつため, 乱れを適当に考慮した砕波モデルを考える場合にはこの回転流れの評価が重要になる.
  • 渡部 靖憲, 秀島 賢保, 佐伯 浩
    2004 年 51 巻 p. 106-110
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    この論文は, 低計算コスト, 高精度, 高解像度で三次元粒子速度を取得可能な三次元Super-Resolution PIVを提案し, 計測精度及びその粒子数依存性を検証し工学的問題への適用性について議論するものである.また, 大規模渦モデルの速度場における本PIVシステムの解析と数値試験の解析解との比較を行い, その実践的適用性を検証すると共に, 砕波後に生成された大規模渦が海底砂を巻き上げる際に形成される混相乱流に対してもこのPIV法を適用し, 砕波通過後の流体, 固体両相の三次元速度分布の時間変化について議論される.
  • 五十里 洋行, 後藤 仁志, 酒井 哲郎
    2004 年 51 巻 p. 111-115
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    粒子法は, 水塊の分裂・再合体を伴う複雑な水理現象に対して柔軟かつ安定した解を得ることができる手法であり, 砕波解析に対する適用の検討が単相流モデルに基づいて進められてきた.しかし, 巻き波型砕波が防波堤に直接衝突する際に生じる衝撃波圧の評価には, 水面下に取り込まれた空気塊の圧縮性を伴う挙動の影響の適正な予測が不可欠であり, 単相流解析では対応できない.そこで本研究では, 孤立気泡の存在下でも安定した解が得られる改良型の気液二相流型MPS法を提案し, 砕波・遡上過程に適用して, 基本的特性を検討する.
  • 後藤 仁志, 橋本 麻未, 酒井 哲郎
    2004 年 51 巻 p. 116-120
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿では, 飛沫表情の表現を高度化することを主目的に据えて, 飛沫粒子 (水滴) が微細液滴粒子 (mist) に分裂する過程をSPS (sub-particle scale) 表情と定義して, その表現方法を詳細に検討した.開発されたSPS表情モデルを直立堤前面の砕波・越波過程に適用し, 飛沫の空間分布におけるmist分布の偏在化に対する再現性が, 従来型の等方拡散モデルと比較して顕著に改善されることが明らかとなった, SPS表情モデルを用いた砕波過程の時間発展的CGを製作し, 水理実験のビデオ画像と比較して, 飛沫表情のディテール再現におけるモデルの性能について検証した
  • 出ロ 一郎, 澤田 崇宏, 松村 直輝
    2004 年 51 巻 p. 121-125
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ラグランジェ型の基礎方程式を摂動展開して求められた1次近似解と, 周波数応答関数を用いた2次元及び3次元傾斜海浜上における不規則波の遡上運動を解析する手法を提案した.提案した方法を用いると, 砕波帯相似パラメータが3以上の領域で, 斜面上で顕著な砕波が生じず, 岸沖方向にほぼ完全な重複波が形成される場合は, 入射角にかかわらず煩雑な数値計算を行うことなく不規則波の波先の運動を容易に再現することができることが分かった.ただし, 入射波高に対して汀線の変動が線形に応答するという取り扱いをしていることあるいは非砕波の状態を仮定した解析であることから, 現地海岸での遡上運動について検討は, 今後に残された問題である.
  • 小野 正博, 宇野 喜之, 片野 明良
    2004 年 51 巻 p. 126-130
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    荒天時下のリーフ海岸では, リーフ内の平均水位上昇に加えて長周期水位変動高 (LFSV) が, 海岸背後陸域への浸水発生に大きく寄与する.本研究は遡上域での長周期水位の時空間的変動特性に関する現地観測結果から, 新たに確認された検討結果を報告するものである.現地観測は石垣島の太平洋側に位置する真栄里海岸で実施し, 遡上域での長周期水位の変動は1秒毎の画像を取得するビデオシステムを用いて測定し, リーフ内外での波浪観測, 台風前後の汀線測量を実施した.1秒毎のビデオ画像から判読することで, 遡上域のLFSV変動を抽出することが可能であること示した.遡上域でのLFSVのズレからLFSVの伝播特性を明らかにした.また, 台風来襲前後の地形変化とLFSVと沿岸方向伝播との関連性を示す結果が取得された.
  • 関 克己, 水口 優
    2004 年 51 巻 p. 131-135
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年の研究の進展により, 遡上域に入射する波のうち, 汀線で反射する長周期成分と砕波する風波成分で底質の移動に対する作用が異なることが指摘されてきている. 本研究では, 自然海浜における砕波帯内での現地観測データを解析し, 汀線近傍における長周期波は汀線での反射による岸沖方向の重複波浪場となることを確認した. また周波数空間において反射率を算定し, 完全反射となる限界周波数, およびそれより高周波側における反射率の低下について検討し, 遡上域の勾配および入射波の情報と関係付けることにより長周期波の反射率算定モデルを提案する.
  • 出口 一郎, 荒木 進歩, 竹田 怜史, 吉井 匠, 大利 桂子, 竹原 幸生
    2004 年 51 巻 p. 136-140
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    浦富海岸で観測された2つの地形性離岸流について解析を行った.1つは波状汀線の凹部から発生し, 他は, 凸部から発生したもので, 後者の場合1さ凸部の両側にfeeder channel, 先端にrip channelが形成されていた. 離岸流発生時の入射波は, いずれも波高1m以下で, 汀線にほぼ直角入射する条件であった. さらに, カスプ地形を模した波状等深線を有するモデル地形上で, rip channelとfeeder channelの有無 (モデル地形上では砂州の有無) による海浜流の状況を数値計算によって検討した. 砂州が存在しない場合には凹部から, 砂州を付けた場合は, 凸部から離岸流が発生すること, 離岸流の発生の有無は入射波浪条件に大きく依存することがわかかった.
  • 柴崎 誠, 小林 昭男, 宇多 高明, 芹沢 真澄, 熊田 貴之
    2004 年 51 巻 p. 141-145
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    九十九里浜の一宮海岸を対象として, 離岸流と窪みの発生原因について検討した. 等深線変化モデルにおいて, 離岸流と波による岸向きの砂移動を, 吸い込み・湧き出しにより表現した. この結果, 海底の窪みは離岸流と岸向き流れとがセットとなった循環流により輸送される漂砂の存在によって動的平衡状態を保つことが分かった. その場合, 砕波帯幅と突堤間距離が離岸流の発生と密接に関係しており, 突堤脇以外で離岸流が1ヶ所発生するには, 少なくとも沿岸方向距離が砕波帯幅の3倍は必要なことが分かった. また, 窪みと循環流が動的平衡状態にない場合, 窪みは離岸流の発生条件に適合したものへと変化することが確認された.
  • 栗山 善昭, 伊東 啓勝
    2004 年 51 巻 p. 146-150
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    茨城県の波崎海洋研究施設において15年間にわたり1日1回ほぼ毎日取得された沿岸流データを解析した. 沿岸流の卓越方向は岸と沖で異なっており, 岸側では北へ向かう沿岸流が卓越していたのに対して, 沖側では南へ向かう沿岸流が卓越した. 沿岸流の卓越方向が岸と沖とで異なった原因の一つとして, 砕波位置によって卓越波向の異なっていたこと, すなわち, 岸側で砕波する場合には南から入射する波が多く, 沖で砕波する場合には北から入射する波が多かったことが挙げられた. 沿岸流速の変動では1年周期が卓越しており, 冬では (1月~2月) 南向き, 夏では (5月~9月) 北向きの流れが卓越していた.
  • 水難事故予防のために
    西 隆一郎, 山口 博, 岩淵 洋, 木村 信介, 村井 弥亮, 徳永 企世志, 古賀 幸夫
    2004 年 51 巻 p. 151-155
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    水難事故を引き起こす離岸流は多様な海岸で生じる. 本研究では, 比較的離岸流を見つけ易く調査時のリスクも許容できる海岸として宮崎市青島海岸で離岸流特性調査を行った. その結果, 本調査地では離岸流が干潮時側で発達すること, さらに, 離岸流発達時に水温が低下する傾向が見出された. また, 離岸流による水難事故予防のためには, 広報プログラムの確立が必要である. そのために, 宮崎北高校で, 離岸流に関する講演後にアンケートを実施し, 一般の学生がどのような形で離岸流に遭遇しているか検討した.
  • 加藤 始, 信岡 尚道, 小松崎 泰光
    2004 年 51 巻 p. 156-160
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    海洋波の非線形の計算において2次波のスペクトルがf-5の特性をもつためには, 1次波のスペクトルはほぼf-8の減衰特性を持つべきであるとのTayfun (1990) の指摘を考慮し, 本論文では一方向及び多方向の波で2次の非線形数値シミュレーションを行い, 1次波のスペクトルの形状と計算条件が2次波のスペクトルと波の統計的性質にどう影響するのかを調べた. 深海波では波の非線形性のよい指標とされるskewnessは浅海性が強くなると差の周波数成分の寄与のため非線形性の強さに対応しない. また浅海性の強い波を対象としたシミュレーションの結果から, 非線形拘束長周期波の波高が1次波の波高の2乗に比例するという結果を得た.
  • 北野 利一, 喜岡 渉
    2004 年 51 巻 p. 161-165
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    季節によって海域の気象条件が異なるため, 高波の出現率を一定とみなすことは難しい. しかしながら, 波浪極値解析に用いられる高波出現の確率過程モデルには, 従来の研究では, 平均出現数のみを母数とした単純ボアソン過程が用いられてきた. 本研究では, 出現強度の概念を導入し, 出現数の疎密の効果を考慮した確率過程モデルを検討した. その結果, 出現数は負の2項分布に, 出現周期はパレート分布に従うことがわかった. また, 以上の検討に対する具体例も示した.
  • 山口 正隆, 畑田 佳男, 大福 学, 野中 浩一, 平塚 敬樹
    2004 年 51 巻 p. 166-170
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ECMWF表面風解析資料 (ECMWF風資料) を入力条件とした, WAMによる波浪推算資料に波浪観測資料を同化して得られている6時間間隔波浪解析資料 (WAM資料), これとほぼ同一のECMWF風資料を入力条件とした, 高地形解像度格子網のもとでの1点浅海モデル (SPM) による波浪推算資料 (SPM資料) および観測資料の相互比較を1997-2002年の6年間についてわが国周辺海域および沿岸部の波浪観測地点で行った. その結果, WAM資料は波高観測資料との高い相関と小さいばらつきを与えるが, 絶対値では必ずしも十分符合しないのに対して, SPM資料は外洋, 沿岸部によらず波浪観測資料とのよい一致を与えることを見出した.
  • 山口 正隆, 野中 浩一, 畑田 佳男, 大福 学, 増田 真慈
    2004 年 51 巻 p. 171-175
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    燧灘および播磨灘における台風時波高の極値を, 過去55年間の多数ケースの台風に対する浅海波浪推算より得た台風時年最大波高資料の極値統計解析に基づいて検討するとともに, 台風0310号時の波高特性を調べた. そして, 50年確率波高は燧灘で3~4m, 播磨灘で3.5~4.3mであること, 期間最大波高は両灘の南側海域では台風6118号に伴う波高が突出した期間最大波高となるために, 50年確率波高を1m前後越えること, 台風0310号は四国沿岸海域に, 長い高波継続時間をもつ, 過去55年間の第2~3位に相当する波高を生起したこと, および推算結果の妥当性は観測資料に基づく結果との比較的良好な対応によりある程度裏付けられることを示した.
  • 畑田 佳男, 山口 正隆, 大福 学, 野中 浩一, 白水 英路
    2004 年 51 巻 p. 176-180
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海の沿岸部における波浪の長期推算システムを構築するための第1段階として, 外海やその沿岸部を対象に開発した波浪の長期推算システムをそのまま適用した場合の当該システムの精度を, 周防灘西岸の苅田および播磨灘東岸の江井ヶ島で取得された長期の波浪観測資料との比較に基づいて調べるとともに, 沿の結果岸代表地点における波候の特性を推定した. その結果, 当該システムは, 外海やその沿岸部の場合ほどでないにしても, 波浪時系列および波候特性に関して観測資料と許容しうる程度の対応を与えることから, 瀬戸内海の沿岸地点における全期間および期間別の波高・周期に関する波候統計量の第1段階推定に十分有用であると結論づけた.
  • 山口 正隆, 野中 浩一, 大福 学, 畑田 佳男
    2004 年 51 巻 p. 181-185
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 北西太平洋における超長期の台風時・低気圧時年最大波高のシミュレーション資料をそれぞれ期間50年の複数組の小標本とみなすことにより, 母分布を既知とした場合と母分布を未知とした場合について推定した確率波高の標本分布の特性を検討した. そして, 確率波高標本の変動係数や非対称度は海域ごとに変化し, その特性は台風と低気圧の場合に異なること, 母分布既知ケースにおける確率波高標本の変動幅が小さく確率波高の推定精度が高いこと, 確率波高の標本分布は粗い近似では正規分布で表されるが, 詳細には非対称分布であるWeibull分布やGumbel分布により高い精度で近似されること, などを見出した.
  • 山口 正隆, 宇都宮 好博, 野中 浩一, 真鍋 晶, 畑田 佳男
    2004 年 51 巻 p. 186-190
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    Gumbel分布, 形状母数固定型Weibull・GEV分布の2母数分布, およびWeibull・GEV分布の3母数分布を対象とした場合に, 第2種censored sampieに対するPPWM (部分確率加重積率) 法の精度を, censoring比など種々の条件を変えたモンテカルロシミュレーション結果に基づいて検討したのち, 候補分布を上記の2母数分布および布, Gumbel分布と3母数分とする2種類の極値統計解析モデルを, 欠落を伴う年最大高潮偏差観測資料の解析に適用した. そして, 各確率分布に対するPPWM法の適用条件ならびに標準偏差推定に対するjackknife法の精度を明らかにするとともに, 当該モデルは確率高潮偏差と標準偏差を適切に評価することを示した.
  • 野中 浩一, 山口 正隆, 大福 学, 畑田 佳男
    2004 年 51 巻 p. 191-195
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    韓国南東岸に大被害をもたらした台風0314号時の最大波高の特性を, 過去55年間の台風時波高極値との関連で検討するために, 当該期間に生起し, 韓国周辺海域に高波をもたらした多数ケースの台風と台風0314号を対象として, 東シナ海における浅海波浪推算を高地形解像度格子網のもとで行い, 100年確率波高や台風0314号を含む異常台風時の最大波高を求めた. 台風0314号時最大波高は韓国南東岸から日本海西南部海域にかけて, 過去55年間の台風時最大波高あるいは100年確率波高をかなり上まわるという結果や, 韓国沿岸の台風時最大波高の規模は台風の勢力のみならず経路の偶然性に大きく依存するという結果が主な知見である.
  • 泉宮 尊司, 上野 晃, 石橋 邦彦
    2004 年 51 巻 p. 196-200
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 局所相似構造に基いたエネルギー逸散スペクトルを推定するために, 風洞水槽を用いて風波の相似構造について調べている. その結果, 水位変動の周波数スペクトル, 乱れ強度やReynolds応力および乱れスペクトルにおいて相似構造が見出された. これらの結果に基いて, エネルギー逸散スペクトルのモデル化を行ったところ, そのスペクトルは方向スペクトルの3/2乗に比例し, 波齢の逆数の関数となることが理論的に示された. また, 平衡領域では水位のスペクトルは周波数の-4乗則が, エネルギー逸散スペクトルは-3乗則が成立することが示された.
  • 橋本 典明, 鈴山 勝之, 永井 紀彦
    2004 年 51 巻 p. 201-205
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    3種類のECMWF風データ (Operational data, ERA15, ERA40) を用いて日本周辺海域を対象とした長期波浪推算を行い, 各種統計解析より, これら風データを波浪推算に用いる場合の波浪推算精度や特徴を比較・検討した. その結果, Operationaldataを用いた波浪推算精度が最も高く, 最新の気象データであるERA40が必ずしも波浪推算精度を向上させるデータセットではないことがわかった. すなわち, 同一機関から提供される気象データにおいても精度や特徴は様々であり, それらの性質を把握した上で, 解析目的・使用用途に合わせたデータセットを選択することが, 有用な波浪情報を取得するために必要であることがわかった.
  • 橋本 典明, 松浦 邦明
    2004 年 51 巻 p. 206-210
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    第三世代波浪モデルWAM Cycle 5を改良し, 2種類の同化変数を対象として, 評価関数および同化に用いる観測データの時空間密度を変えて, Adjoint法によるデータ同化実験を行った. 支配方程式中のパラメータを同化変数にする場合には, 背景誤差項を無視しても適切なデータ同化が可能であった. 一方, スペクトル境界値を同化変数にする場合には背景誤差項を考慮する必要があるが, 同化後の推定値は観測誤差と背景誤差の比に依存する. 一般に観測データの時空間密度が高いほど, データ同化による推定値の時空間変動は滑らかになる. 実海域を対象とした検討では, データ同化により推算値は観測値に近づくように修正され, 推算精度は向上した.
  • 辻村 太郎, 金子 公久, 京藤 敏達
    2004 年 51 巻 p. 211-215
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    風波は大気海洋間の物質および熱フラックス輸送に重要な役割を演じている. とくに, 湖沼や沿岸域では多重反射や風向きの変動などの擾乱が存在し, このような場での風波の発達を予測することは難しい. そこで本研究では, 風波発達の基礎研究として, 風洞入口にプランジャー型造波装置を設置し, 微小な周期的水位変動を与え, 風波の増幅に関する実験を行った. その結果, 風速および吹走距離により, 発達しやすい擾乱周波数が存在することを確かめた. また, 風波発生初期に微小な擾乱を与えることにより, 風波の発達を制御する可能性を示した. 最後にMilesの理論を用いて, 本実験の結果の予測が可能であることを示した.
  • 森 信人, 平口 博丸
    2004 年 51 巻 p. 216-220
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    設定した波高を上回るイベントの予測について, コスト・ロスモデルを用いたアンサンブル波浪予測の利用方法についての検討を行った. 予測に対する対策費用Cと損失Lとの比であるコスト・ロス比C/Lと相対価値Vの関係から, アンサンブル波浪予測を利用する経済的メリットについての検討を実施した. 常時波浪についての予測では, 決定論的波浪予測に対してアンサンブル波浪予測の経済的な優位性は, C/L比が0.5から外れるほど顕著であり, また予測時間が長くなるとその差は顕著になることを明らかにした. また, アンサンブル予測を利用することにより得られる相対価値Vは定論的予測, C/L全域で決のVを上回ることを確認した.
  • 奥津 雄治, 関 克己, 水口 優
    2004 年 51 巻 p. 221-225
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    荒天時のリーフ地形海岸において工学的諸問題となる異常な水位の上昇に対して, その主要因となるであろう波群に伴う長周期波に着目し, 長周期波の挙動の定性的かつ定量的な予測の実現を目指して実験的な検討を行った. その結果,(1) 砕波の有無を問わずステップで発生した自由長周期波を確認し, その大きさは沖側では拘束長周期波に比べて圧倒的に大きい.(2) 砕波により発生した自由長周期波を確認し, その沖向き成分がステップ端部で透過・反射現象を示すことがわかった. 次いで,(3) 砕波に伴い発生する自由長周期波を定量的に評価できるモデルを考案し, 実験結果との比較から良好な結果を得た.
  • 仲井 圭二
    2004 年 51 巻 p. 226-230
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    長周期波の発生・発達機構の解明のための手掛かりを得ることを目的として, 長周期波高と通常波浪の波浪諸元 (波高, 周期) との相関関係を吟味し, 両者の時空間変動特性を調べた. 長周期波高を通常波浪の波高, 周期を用いて近似したときの比例係数は, 長周期波高が高いときに大きい. また, 長周期波高が高い場合には, 長周期波の中でも, 比較的周期の長い成分の割合が大きい. これらの特性は, 時間的, 空間的にある程度の広がりを持つものである. 但し, 個々の地点を詳細に見た場合には, 特に長周期波高が高い場合に, 観測地点の局地的な特性を反映した長周期波成分が重要になる.
  • 高橋 吉弘, 田辺 勇人, 柴木 秀之, 岩瀬 浩之
    2004 年 51 巻 p. 231-235
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    台風7010号により土佐湾の高知港で発生した異常な高潮は, wave setupを考慮した高潮シミュレーションにより再現できる. この高潮シミュレーションモデルは, 波の発達・減衰・変形を考慮した浅海波浪推算による波浪場の推定とradiation応力の算定を行い, これを利用してwave setupを含む潮位偏差を予測する. このモデルにより, 沖防波堤建設後の地形条件において, 台風7010号時の高潮シミュレーションを行い, wave setupを含む高潮に対する防波堤の高潮低減効果を予測した. 防波堤開口部を砕波帯の外側に設置することにより, 港内の高潮は数10cm~1.0m程度まで低減した. 新たな視点から, 高潮対策として防波堤が有効であることを示した.
  • 金 庚玉, 山下 隆男
    2004 年 51 巻 p. 236-240
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    大気・海洋間の運動量, 熱, 物質の交換には, 風波が重要な役割をする. 運動量交換のモデル化には, Wave-induced stressのような風波により発生する比較的大規模な大気乱流による形状抵抗, breaker stressの定義による白波砕波減衰と吹送流への運動量変換モデル, および波齢の高いfast waveに対する波浪増幅・減衰機構の定式化が必要となる果. これらの研究成は, 波浪推算モデル, メソ気象モデル, 海洋モデルのカップラーの一部として連結系数値モデルに導入することで実用化される. 本研究では, MM5, WW3, POMの結合モデルをMPMD方式で並列計算する数値計算システムを構築し, 台風9918による八代海・有明海および周防灘における高潮, 高波の追算を行った.
  • 桐 博英, 丹治 肇, 中矢 哲郎
    2004 年 51 巻 p. 241-245
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    地球温暖化に伴う沿岸域への影響には海面上昇が知られているが, 台風の規模も大きくなることがわかってきた. しかし, 台風規模の変化が高潮に伴う潮位偏差にどの程度影響を及ぼすのかは, 明らかになっていない. そこで, 台風が多く通過する有明海を対象に, 2つのモデル台風を作成し, 台風規模が15%大きくなった場合の潮位偏差の変化を数値解析により検証した. その結果, 有明海内部では, 20-55cmの潮位偏差の増大が予測され, 地球温暖化による沿岸域の保全対策には台風の規模の変化も考慮する必要があることを明らかにした. また, 有明海を北上する台風では, 台風接近時の潮位降下が台風通過時の潮位上昇を抑える効果があることを示した.
  • 鴫原 良典, 今村 文彦
    2004 年 51 巻 p. 246-250
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 非線形分散波理論計算における分散項と移流項について, 差分精度と安定性の視点から津波数値解析への適用性の検討を行い, 分散性に関しては数値分散の逆利用法が, また, 移流項は3次精度風上差分が最も適当であることが分かった. この結果から新たに実用的な非線形分散波モデルを提案し, 一次元水理実験の再現計算から本モデルの妥当性を示した. さらに, 実際の海底地形への適用性を検証するため1983年日本海中部地震の再現計算を行い, 深海域から浅海域での一括計算を安定して行え, ソリトン分裂・波状段波等の変形過程を再現できる, 適用性の高いモデルであることを示した.
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