本研究では, 新しく開発した線形分散波理論の数値解析法を利用して, 小笠原諸島を対象にした東南海・南海地震津波の数値解析から各島における津波の挙動特性を明らかにし, 波数分散性の影響度, 島湾内における浸水域の評価を行った. 父島では津波が多方向から来襲するため複雑になり, 波高も高くなる. 一方, 硫黄島において津波は四国海盆上を伝播するため分散効果が大きく影響する. 波数分散効果により父島・母島周辺での最大水位について部分的な低下が見られたが, 各島の湾内では支配方程式の違いによる水位差は小さい. 各島湾内で遡上計算を実施したところ, 父島・二見港周辺で約7m, 母島・沖港周辺で約5mの遡上高となることがわかった.