海岸工学論文集
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52 巻
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  • 清水 良平, 新谷 哲也, 梅山 元彦
    2005 年 52 巻 p. 1-5
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    緩勾配斜面上を伝播し, 変形・砕波する内部波によって引き起こされる流動構造をPIV法を用いて計測した. 実験では, トレーサー粒子の沈降による粒子数の減少を補う工夫をしながら, 画像の高精度化を試みた. また, 瞬間流速ベクトルの他に, オイラー・ラグランジュ法を用いて一周期平均輸送速度の空間分布を求めた. その結果, 斜面上での内部波の流動構造が実験的に明らかとなった. さらに, 実験と同一条件で数値計算を行った結果, 瞬間流速の数値計算は実験結果を比較的良好に再現していることがわかった. また, 一周期平均輸送速度の空間分布からは質量輸送及び戻り流れが斜面上で層状に重なり合いながら蛇行していることが明らかとなった.
  • 中嶋 光浩, 由比 政年, 川本 賢治, 石田 啓
    2005 年 52 巻 p. 6-10
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年適用例の多い複合的波浪防護施設の周辺では, 地形変化およびそれに伴う波浪変形は複雑になり, その予測精度の向上は, 防災性や海岸環境を考慮する上で本質的に重要となる. 本研究では, こうした観点から, 平面二次元高次ブジネスク方程式の一般形を無限級数の形で新たに誘導するとともに, 実用的観点から, 分散項の次数を三階微分までに抑えつつ, 従来のNwoguモデルより分散性適合度を向上させた簡易な平面二次元修正ブジネスク方程式を提示して, 対応する数値解析モデルの構築を行った. 水理実験との比較により, 本数値モデルが, 浅水変形, 部分反射, 砕波および屈折・回折を伴う複雑な波浪現象を良好に再現できることを確認した.
  • 平山 克也, 平石 哲也
    2005 年 52 巻 p. 11-15
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    直交座標をなすx, y方向の流量Fluxを交互に解き進めるADI差分法の特性に着目して, 1次元的な波浪現象をもとに定式化された, 乱流モデルに基づく砕波モデルと汀線移動や海底面の露出を許容する遡上モデルを平面2次元場へ拡張した. 現地リーフ地形を対象とした平面模型実験で得られた, 波高分布に対する本モデルの再現精度は非常に良好であり, リーフへの段波の侵入や減衰, 引き波時のリーフエッジの露出なども表現できることを確認した. さらに, 台風による高波で堤防の上部パラペットが崩壊した菜生海岸を対象として, 海浜への波の打ち上げ等, 被災時における平面波浪場の推定を試みた.
  • 陸田 秀実, 常山 鉄平, 土井 康明
    2005 年 52 巻 p. 16-20
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    風波に代表されるような砕波を伴う自由表面境界層は, 数mm-数mのマルチスケールな流体現象であり, 時間スケールも大幅に異なる. このような複雑な自由表面境界層の数値解析に対して, 粒子法に代表されるLagrange的手法を適用することは難しく, 格子網に工夫を加えたSemi-Lagrange的手法が有用である. 特に, 自由表面境界層付近の格子生成は, 不等間隔格子による解の精度低下, 高解像度による計算負荷の増大, 界面極近傍の渦構造や砕波の再現性に大きな影響を与える. 本研究では, 重合格子法とソロバン格子法の併用によって, 自由表面の複雑さに合わせて, 必要な計算点を局所的に再配置し, 計算格子網を再構成する数値計算法を新たに提案し, 本手法の自由表面境界層への適用性を検討したものである.
  • 花澤 直樹, 小林 昭男, 美濃 口健
    2005 年 52 巻 p. 21-25
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    海岸域の安全性向上に対しては, 越波等の2次元問題に加え, 平常時の緩傾斜護岸の遡上波の戻り流れのような3次元問題の解析も必要である. 本研究では, 波動場を多面的に解析するために, 側面に透過境界を有する3次元水路内の波動解析プログラムを開発した. 計算結果の妥当性に関して, まず3次元水路モデル内での孤立波の浅水変形及び砕波の再現性を示した. 次に, 水路内に波の進行方向を変える斜め固定壁を設け, 側面境界からの波の透過現象を示した. さらに水路内に直立壁を設けた場合の回折現象を示した. 以上の検討により, 本プログラムは3次元的な現象について妥当な計算結果を与えることが示された.
  • 後藤 仁志, 五十里 洋行, 酒井 哲郎
    2005 年 52 巻 p. 26-30
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿では, 粒子法に基づいて3次元数値波動水槽を構築する. 粒子法の離散化は粒子間距離を指標としているので, 2次元モデルを3次元に拡張することは比較的容易であるが, 2次元固定壁条件を3次元場に単純に適用するとdry-wet境界で漏水が発生する. 本稿では, 漏水の発生原因を明らかにし, 漏水を阻止するために2層型の固定壁境界条件を導入した. 開発された3次元コードは, 一様斜面上の巻波型砕波とその後の遡上過程に適用され, Plunging jetや波峰背後の表面流速場の奥行き方向の非一様性など, 砕波現象に内在する3次元性の一端が示された.
  • 牛島 省, 山田 修三, 禰津 家久
    2005 年 52 巻 p. 31-35
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    自由水面の変動を伴う流れにより水深と同程度のスケールの物体が輸送される現象を数値的に評価する手法について検討を加えた. 本報で扱う数値解法は, 固気液多相場の解法であるMICSを3次元化および並列化したものである. 検証データを得るため, 造波水槽を用いて, 波動流れにより直径40mmの複数のアクリル球体が輸送される状況を把握した. 障害物 (ボックス) の配置を換えた実験を行い, 球体の分布パターンを数値解と比較した結果, 各条件において球体輸送がほぼ適切に再現されることが確認された.
  • 赤川 嘉幸, 谷本 勝利, Dam Khanh Toan, Nguyen Ba Thuy, Vu Hai Dang
    2005 年 52 巻 p. 36-40
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    航走波の数値計算に砕波・遡上モデルを取り入れた. 採用した砕波モデルは運動方程式に砕波減衰項を導入することで砕波による減衰を評価するものであり, 局所的な水位の上昇速度を砕波の指標としている. 一方, 遡上モデルは地盤面下を非常に小さな間隙率を有した透水層とすることで, 水域と陸域を同時に計算するものである. 1次元規則波を対象とした数値計算を行って砕波・遡上モデルの再現性を確認した後, 航走波の数値計算に適用した. 平行等深線海岸を対象とした計算結果に基づき, 砕波変形を含めた航走波の最大波高を簡便に推定する手法を検討した. 提案した算定法を用いれば, 砕波帯を含んだ航走波の最大波高を数値計算に頼らなくとも推定することが可能である.
  • 藤原 隆一
    2005 年 52 巻 p. 41-45
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    VOF法に基づいて自由表面の処理を行う数値波動水路CADMAS-SURFにおいて, 不規則波を扱う場合の造波方法について検討した. 造波方法に線形波の重ね合わせ理論を用いた場合に発生する平均水位の上昇を抑制するには, 各成分波の水平水粒子速度から質量輸送速度を差し引く方法が有効であるが, 本研究では静水面上の水粒子速度の与え方に改良を加えた方法について, その適用条件を数値シミュレーションによって検討し, 発生した不規則波の適用性を水理模型実験および従来の算定法と比較した. その結果, 造波地点の波形勾配が0.03程度までであれば安定した計算が可能であること, また発生した不規則波の一様斜面上の波高変化および越波量を水理模型実験によって検証し, 妥当であることを明らかにした.
  • 有川 太郎, 山田 文則, 秋山 実
    2005 年 52 巻 p. 46-50
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    2次元数値波動水路 (CADMAS-SURF) の計算手法を基に, 3次元数値波動水槽 (CADMAS-SUFR/3D) の開発を行い, 砕波や段波のような衝撃的な圧力を伴う波力現象を設計に耐えうる精度で計算できる実用的なモデル構築を目標とした. 本計算では, 同時に並列化システムを導入した. モデルの妥当性を確認するため, 護岸に作用する段波波圧および陸上遡上する津波段波波圧の計算を行ったところ, 実験と整合した値が得られ, モデルの妥当性を確認した. また, 並列化システムによる計算効率を調べたところ, 8CPUを用いた場合, 約60%の計算時間短縮となり, さらに, 約6倍近い計算領域がとれることを確認した.
  • 太田 隆夫, 小林 信久, 木村 晃
    2005 年 52 巻 p. 51-55
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 新たに開発された時間平均型波浪変形計算モデルを用い, 捨石で構成された人工リーフ上での適用性を, 堤体断面の変形が生じる場合も含めて検討したものである. このモデルは, 時間平均された連続式, 運動量方程式およびエネルギー方程式にもとつくもので, 計算結果として水位および透過性堤体内外の流速の平均値・標準偏差が得られる. 水理実験においては, 人工リーフ模型に不規則波を作用させ, 堤体周辺の水位, 流速および堤体の断面形状を計測した. 計算と実験の結果の比較により, 堤体の断面形状が変化した場合も含めて, 計算モデルの適用性が確認された.
  • 小笠原 敏記, 竹中 美智子, 堺 茂樹
    2005 年 52 巻 p. 56-60
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    オホーツク海や北極海のような季節変動氷海域の波浪特性を解明することは, 新たなエネルギー資源を安全に採取・輸送供給するために必要不可欠である. 本研究は, 任意氷況下の波浪特性の解析を可能にするため, 有限要素法と境界要素法を結合した時間領域解析手法を基に, 境界条件判定指標を取り入れた数値解析手法を開発する. その結果, 氷盤長さや厚さ, 弾性率の異なる氷盤群での数値解析値は, 模擬氷盤による実験結果と良く一致し, 本手法の有効性を実証することができた. さらに, オホーツク海南部の氷海域での画像データを考慮した氷盤条件による波浪解析も試みている.
  • 木原 直人, 花崎 秀史, 植田 洋匡
    2005 年 52 巻 p. 61-65
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    一定の速度で進行する進行波上の気流に3次元直接数値計算を適用することにより, 気・液界面物質輸送へ進行波が与える影響を調べた. 7種類の波齢に対して, それぞれについて統計的に定常な完全発達乱流を対象とした. その結果, 平均スカラー量等の乱流統計量に強い波齢依存性が見られた. また, 気流中の運動に依存する気側律則物質の場合, 波齢が増加するほど気・液界面物質輸送量は減少した. 物質輸送量は界面摩擦抵抗と相関が悪く, 波によるスカラーフラックスと関係が強いことがわかった. 一方, 液側の運動に依存する液側律則物質の場合, 波齢が増加するほど気・液海面の摩擦抵抗は増加する. その結果, 物質移動係数も増加する.
  • 村上 智一, 久保田 踊児, 安田 孝志
    2005 年 52 巻 p. 66-70
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    強風下では発達した風波によって水面が白波に覆われ, ベキ則層 (バースト層) が平均水面直下に生成される. 本研究では, 強風下吹送流を適切に扱うために, 二重床風洞水槽を用いた水理実験を行い, 平均水面までの水平流速の鉛直分布を求め, これを基にしてバースト層生成の原因となる砕波応力をモデル化し, 平均海面仮定に基づくバースト層モデルを開発した. そして, SOLA法によってその再現計算を行い, 従来の数値計算では再現できなかったバースト層内の急峻な流速の鉛直分布を含めて実測分布が再現できることを明らかにし, モデル化が適切であることを実証した.
  • 村上 智一, 久保田 踊児, 林 雅典, 安田 孝志
    2005 年 52 巻 p. 71-75
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    強風下の水面直下に形成される非対数則層 (バースト層) の生成によって, 対数則を前提とした乱流モデルの強風時の適用性に問題が生じる. 本研究では, 二重床風洞水槽および階層的相関法を用いた水理実験によって, 流速データを取得し, 平均流成分からのカスケード, 波動および砕波による乱流成分に分けて取扱うことで乱流構造を明らかにした. そして, k-εモデルにこれらの実測データを代入することにより乱流エネルギー, エネルギー散逸率および鉛直渦動粘性係数を求め, これによって強風下の渦拡散現象の取扱いに必須となる非対数則層の渦動粘性係数の算出が可能となることを示した.
  • スン トヨ, 田中 仁
    2005 年 52 巻 p. 76-80
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    これまで正弦波を対象として, 底面せん断力特性などに関する多くの研究が行われてきた. 現実の波浪は浅海域に伝搬するにつれ非線形性を増し, 従来の正弦波とは異なるせん断力特性を示すものと考えられるが, このような特性を扱った研究例は少ない. このため, 波動モデルにより得られる流速場の情報から砂移動量に結び付ける際の底面せん断力評価の精度が明らかになっていない. 本研究では, クノイド波の下での底面せん断力に関する実験的検討を行い, 加速度の効果を加味した新たな底面せん断力の計算法を提案した. また, 同手法を漂砂量定式化の応用し, 旧来の手法による計算値との差違を検討した.
  • 内山 雄介, 中野 博文, 黒坂 正和, 山脇 秀仁, 柳嶋 慎一, 栗山 善昭
    2005 年 52 巻 p. 81-85
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    干出・冠水を繰り返す自然砂質干潟海域において, 流速の周波数特性および平均的な鉛直分布構造に関する現地観測を実施した. スペクトル解析, CEOF解析により, 干潟の水理特性, 特に波-流れ共存場としての海底境界層の力学特性を調べた. その結果, 基本モードとしては潮流に対応したbarotropic成分が卓越するが, 波や風による高次モードの影響も無視し得ないこと, そのため対数則速度分布からの逸脱が生じ, 鉛直方向に流向が回転することが分かった. 一方, 瞬間的な流速変動に対しては波動成分の寄与が圧倒的に大きく, 次いで乱流成分が卓越していた.
  • 鷲見 浩一, 兼藤 剛, 植松 達也
    2005 年 52 巻 p. 86-90
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 超小型圧力計を用いた水理実験とMARS法を自由界面の解法としたk-ε乱流モデルによる数値計算を行って, 気液混相流場での砕波に伴う流速場と圧力場の時空間変動について考究した. さらに, 砕波時の波面変形を気相での圧力構造と関連づけて考察した. その結果, 砕波時の気相の等圧線は波峰の前後で非対称であり, 圧力は波頂上部では小さく, 波前脚部と波峰後方では大きい分布となる. また, 波前面の気相の圧力分布は波頂部近傍と脚部周辺に, それぞれ低圧力部と高圧力部が存在し, 水面に作用する圧力に差異が生じる. この圧力の差異が, 砕波時に水表面が波内部へ向かって円弧状に湾曲する現象を助長していると推察できる.
  • 鈴木 琢磨, 森 信人, 角野 昇八, 大西 祥久
    2005 年 52 巻 p. 91-95
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    砕波帯において砕波により水中に連行される空気塊の特性について検討を行っている. 2次元造波水路を用いて, 一様斜面上を入射する規則波の砕波についてボイド率, 気泡径および流速の計測を行い, 砕波波峰におけるボイド率および気泡径の空間分布, および気泡特性と乱れエネルギーとの関係を調べている. フルード則に基づいた2種類の大きさの水理実験結果から, ボイド率の空間変化に及ぼすスケール効果の影響は非常に大きいことを明らかにしている. ついで, 連行された気泡径分布について調べ, 混入する個数に差はあるものの, その分布形状は岸沖方向に殆ど変化しないことを示している.
  • 渡部 靖憲, 森 信人, 秀島 賢保
    2005 年 52 巻 p. 96-100
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    この論文は, 乱れスケール遷移を考慮した沿岸破波帯の物質混合輸送モデルを開発するための重要なパラメータとなる乱れ生成, 輸送, 拡散率を決定するために, 水温制御され光学的に管理された環境の中で詳細な熱赤外線及び可視光線の同時計測を行い, 破波後の縦渦形成に起因する表層水温パターン及び水温の時間変動から破波に伴う乱流混合の時間スケール及び水面近傍の乱流拡散率を特定すると共に水面変動と熱混合のスペクトル遷移の関係について議論するものである
  • 田島 芳満, Ole Secher Madsen
    2005 年 52 巻 p. 101-105
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    砕波帯周辺の漂砂移動量の算定に必要な水理特性として, 非対称な底面軌道流速波形やSurface Rollerの影響を考慮した戻り流れ, それに伴う底面勇断応力, さらに, 砕波による乱れを考慮した渦動粘性係数などを, 効率的にかつ精度良く予測するモデルを構築した. モデルを移動床実験条件に適用してその妥当性を検証し, さらにモデルによる計算結果を物理的なメカニズムに基づく漂砂量算定式に適用した. 最後に, 漂砂量を岸沖方向の漂砂移動要因ごとに分離して成分比較を行ったところ, 縦断平衡地形上では, 波による岸向き漂砂と戻り流れや海底勾配に伴う沖向き漂砂が相殺し, 正味の漂砂量がほぼゼロとなることが確かめられた.
  • 信岡 尚道, J. A. Roelvink, 三村 信男
    2005 年 52 巻 p. 106-110
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    3次元海浜流の駆動力であるradiation stressの鉛直分布形状は, Eulerian表記, Lagrangian表記と砕波によるエネルギー逸散型の3つが提案されている. 本論文では, これら3種類の形状に加え新たに海底勾配の効果を考慮した改良Lagrangian radiation stressによる海浜流予測について, 一様海底勾配上の規則波下で基本能力を, 非一様海底勾配上の不規則波下で実用性を検討したものである. また, 砕波によるsurface rollerのエネルギー輸送モデルとの関係についても考察して, 総合的にradiation stress型数値シミュレーションモデルの可能性を示した.
  • 鷲見 浩一, 兼藤 剛, 植松 達也
    2005 年 52 巻 p. 111-115
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 可視化水理実験を行って砕波形式の相違による浮遊砂の移動速度を考究した. また, k-ε乱流モデルによる砕波の数値計算を実施して, 波内部の流速場と浮遊砂の移動速度を関連づけて検討した. その結果, 浮遊した砂の移動速度には, 波動運動に伴う流れが支配的であることが判明した. すなわち, S-P砕波では波動運動による流れと砂粒の沈降速度が同方向のときは, 両者が互いに強めあって砂の移動速度は水粒子速度より速くなるのに対し, 波動運動による流れと砂粒の沈降速度が逆方向ときは, 互いに弱め合って砂の移動速度は水粒子速度よりも遅くなる傾向を示した. Plunging砕波では, S-P砕波のように波動運動による流れと砂粒の沈降速度が弱めあう現象は顕著ではなかった.
  • 出ロ 一郎, 荒木 進歩, 竹田 怜史, 吉井 匠, 薮崎 洋隆
    2005 年 52 巻 p. 116-120
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    浦富海岸で観測されたカスプ凹部より発生する離岸流について, 数値計算を用いて入射波特性とカスプ波長・振幅との関係について調査した. その結果, 最大離岸流速は波状汀線の振幅・波長比η/λ, 入射波長・カスプ波長比L0/λ, 砕波帯相似パラメータに依存する事が分かった. また砕波位置がカスプの影響範囲内である場合は波高が大きくなるほど離岸流速は大きくなり, 砕波位置がカスプの影響範囲外の時はλ, ηに大きく依存する. また離岸流が発生する場合のカスプの地形変化についても調査したが, カスプの振幅が時間とともに減少する結果となった.
  • 下園 武範, 佐藤 愼司, 磯部 雅彦
    2005 年 52 巻 p. 121-125
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    潜堤周辺には様々な波の変形要素を含む複雑な重合場が形成されるとともに, 大きな水位変化と強い海浜流場を生じることが知られている. 潜堤の設置にあたっては, このような波の二次量にも十分に配慮する必要があるが, 潜堤周辺における波・流れ場の特性は十分に理解されていない. 本研究では, 堤長および設置間隔をパラメータとした水理模型実験を通して, 潜堤周辺における波・流れ場の特性と発達機構を明らかにした. また, 数値モデルによる検討では, 波・流れの相互干渉が重要な役割を演じていることを示した. さらに波・流れ場が不安定となる条件を示した上で, その成因を議論した.
  • 武若 聡
    2005 年 52 巻 p. 126-130
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    Xバンドレーダを用い, 台風通過時の高波浪を観測した. レーダエコーデータの解析を岸沖ライン画像, 沿岸ライン画像を作成して行った. 波の遡上状況を調べ, 遡上高が相対的に大きくなる領域が沿岸方向に伝播する状況を捉えた. 遡上振幅の経時変化, 周期・伝播速度の関係を解析し, 遡上変動の沿岸伝播がエッジ波によりもたらされた可能性について議論した. 長周期の遡上変動は, 台風が最接近した後の入射波の周期が長くなった時間帯に増大した. 長周期の変動の沿岸伝播特性 (沿岸方向伝播速度・波数) はエッジ波の分散関係式で予想される関係に近かった.
  • 森 信人, Peter A. E. M. Janssen
    2005 年 52 巻 p. 131-135
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    アンサンブル平均したZakharov方程式と弱非線形Gauss過程を組み合わせることにより, Freak Waveの発生頻度を定式化した. 予測式は水面変位から求められるKurtosisと波の数の関数で表わされ, Kurtosisの変化はFreak Waveの発生を大きく増加させる. 波の数を固定化した場合, Kurtosisが0-0.5増加すると, Freak Waveの発生頻度はGauss理論と比べて10-50%以上増加する. Freak Waveの発生と方向スペクトルの関係は明確であり3次の非線形干渉が重用であることが示された.
  • 加藤 始, 信岡 尚道
    2005 年 52 巻 p. 136-140
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    海洋波の非線形シミュレーションにおいて通常使われるJONSWAPスペクトルは2次波に過大な高周波成分を生じさせる (加藤ら, 2004). 本論文ではJONSWAPスペクトルにWallops型の可変係数mを組み込んだ新しいスペクトル形を提案する. これを1次波のスペクトルとして使うことにより, 風洞水槽で測定した風波のスペクトルが2次のシミュレーションで非常によく再現できることを示し, 2次のスペクトルが波の統計量に及ぼす影響についても検討する. また加藤ら (2004) の1方向波による非線形拘束長周期波の計算を多方向シミュレーションに拡張し, 波の方向分散が拘束長周期波の波高に及ぼす影響を明らかにする.
  • 畑田 佳男, 山口 正隆, 大福 学, 高橋 秀典
    2005 年 52 巻 p. 141-145
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, NCEP表面風再解析資料およびECMWF表面風再解析・解析資料に台風モデル風を埋込んだ波浪の長期推算システムを, わが国太平洋岸・東シナ海沿岸の波浪観測地点に適用し, 台風モデル風の埋込みの有無が波候や波高の傾向変動および波高極値の推定結果に及ぼす影響を調べた. そして, NCEP風資料への台風モデル風の埋込みは, 波高の傾向変動に対する判別結果をほとんど変えないまま, とくに周期に関する波候や波高極値に対する推定精度の向上をもたらすこと, 推定精度の向上は波浮付近から南西側に位置する地点でみられること, ECMWF風資料の場合には推定精度の向上の度合はNCEP風資料の場合ほどでないこと, などを見出した.
  • 野中 浩一, 山口 正隆, 畑田 佳男, 大福 学
    2005 年 52 巻 p. 146-150
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    播磨灘および燧灘における過去57年間の既往台風に対する波浪推算から得た台風時年最大波高資料を種々の観点から再解析するとともに, 新たに1, 000年間のシミュレーション台風時年最大波高資料を解析することにより, 当該海域における確率波高の特徴や台風6118号時最大波高の特異性を検討した. この結果, 台風6118号時最大波高は播磨灘四国側海域で再現期間数百年以上の確率波高に相当し, しかもその値が突出することから, 確率波高推定値の信頼性がかなり低いことや, 燧灘の四国側海域では近年まれな高波をもたらした台風0310号に伴う最大波高が台風時年最大波高資料に加わることにより, 確率波高推定値の信頼性が向上することを明らかにした.
  • 永井 紀彦, 里見 茂, 額田 恭史, 久高 将信, 細沼 克弘, 藤田 孝
    2005 年 52 巻 p. 151-155
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    2004年の台風による高波は, 35年に及ぶ我が国の沿岸波浪観測史を通じて特筆されるものであった. 本土上陸台風数が10個に及び, その中でも, 台風0416号, 0418号および0423号は, 全国沿岸に顕著な高波災害をもたらした. 本稿は, これらの台風に伴う異常波に焦点を絞って, 全国沿岸で得られた波浪観測記録をとりまとめたものである. 室戸岬沖GPSブイ (水深100m) および室津港沖波浪計 (水深27m) が観測した有義波高14.21mおよび13.55mという値は, 全観測地点を通じても既往最大値であった. ナウファス最北観測点である留萌でも, 1970年以来の既往最大有義波高が観測された.
  • 宇都宮 好博, 山口 正隆, 野中 浩一, 真鍋 晶, 畑田 佳男
    2005 年 52 巻 p. 156-160
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 歴史資料を含む年最大値資料にあてはめる2母数分布 (Gumbel分布, 形状母数固定型GEV分布, 形状母数固定型Weibull分布) の母数, すなわち再現確率統計量の推定に対するPPWM法の精度と再現確率統計量の分散の推定に対するjackknife法の精度を広範なモンテカルロシミュレーションに基づいて検討したのち, 最適分布の選択を相関係数最大基準による極値統計解析モデルを現地資料の解析に適用した. 歴史資料の導入は, 再現確率統計量のbiasの増減にあまり寄与しないが, 正側に裾を引く分布形状の場合ほど, 分散に関して有意な大きさの減少をもたらすこと, および歴史資料を含む現地資料の解析事例は上記の結果を裏づけることがわかった.
  • 新谷 哲也, 梅山 元彦, 小野田 祐一
    2005 年 52 巻 p. 161-165
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    第3世代波浪推算モデルWAMの性能拡張版であるWAVEWATCH IIIの再現性検証を目的としてテスト計算及び実海域を想定した波浪追算を行った. まず, テスト計算として単純矩形水域における計算を行い, その結果を第1世代波浪推算モデルであるWilson法の結果と比較した. 次に, 精度検証のために2004年10月に本州に上陸した台風23号を対象として波浪追算を行い, 得られた結果と現地観測結果とを比較した. その結果, WAVEWATCH IIIは, 単純矩形水域における有義波高・周期の発達過程がWilson法で得られた結果と良好な一致を示し, 実際の台風を用いた波浪追算では, 現地観測の結果をほぼ合理的に再現できることがわかった.
  • 橋本 典明, 松浦 邦明, 永井 紀彦, 河合 弘泰
    2005 年 52 巻 p. 166-170
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    波浪推算の精度を向上させる波浪観測地点の配置等を検討するために, Cross Variation法により各観測地点の波浪データ同化システムへの寄与の指標を検討した. 日本沿岸4領域の各地点で欠測の少ない期間5ケースを対象として検討した. データ同化システムの実用化を目的として, 同化変数, 同化する波浪データの前処理法, 最適化における収束計算の安定化と精度について検討した. その結果, 波浪推算の精度向上に及ぼす観測地点の同化システムへの寄与は, 東北日本海領域では酒田, 山陰日本海領域では浜田, 東北太平洋領域では相馬, 常陸那珂が大きかった.
  • 鈴山 勝之, 橋本 典明, 永井 紀彦, 吉田 秀樹
    2005 年 52 巻 p. 171-175
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    2004年に発生し我が国沿岸に甚大な高波被害をもたらした台風0415号, 0416号, 0418号, 0421号, 0422号及び0423号の6台風について, 多様な地形条件を有する九州沿岸を対象とした波浪推算を行い, 推算精度の検討のみならず, 各所の波浪推算精度を向上させるための幾つかの検討を行った. その結果, 波浪推算時に設定する計算条件である方向スペクトルの周波数分割数と方向分割数の違いが, 推算精度に大きな影響を及ぼすことを再確認した. 特に九州沿岸のような, 岬や島が多数存在するような複雑な地形条件を対象とした波浪推算を行う場合, 方向分割数の違いが周波数分割数よりも大きな影響を及ぼす. また, 陸地と陸地に挟まれた狭い海域においては, マスコンモデルにより局所的な風場を再現することで, その海域の波浪推算精度を合理的に向上できることを再確認した.
  • 金 庚玉, 李 漢洙, 山下 隆男
    2005 年 52 巻 p. 176-180
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    日本海を発達しながら通過する低気圧は, 日本海沿岸に時として異常波浪と呼ばれる高波浪を発生させる. このような異常波浪を, 通常の波浪推算法で再現することは極めて困難である. これは気象庁GPVやECMWF等のメソスケール気象の再現地上風は最大風速のピーク, 立ち上がり特性を再現できないからである. 本研究では, ボーガス低気圧をメソ気象モデルMM5に援用し, 海上風 (10m風速) の時系列特性の再現性を高めることが可能であることを示した. また, MM5とWW3との結合モデルにより, 2003年12月の日本海中部海域, 直江津港の異常波浪の推算を行い, 観測値である有義波高9.24m, 有義波周期12.9sに近い値が再現できることを確認した.
  • 間瀬 肇, 木村 雄一郎, 小川 和幸, Tracey H. Tom
    2005 年 52 巻 p. 181-185
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    最新で適切なオープンソースの気象・波浪予測計算プログラムと最新気象データを有機的に連携させることにより, 簡単に, 安く, 早く, 正確な波浪予測ができるシステム, また, 高潮・高波災害が生じた後の災害解析に利用できるGFSWRF-SWAN援用波浪推算システムの構築およびその精度検証を行った. 日本沿岸の7地点における数時間から数日後の波浪の予測値と観測値の比較, および台風0423号, 0416号, 0418号時の特定の地点における波高予測値と観測値の比較から, 本システムの有用性を示した.
  • 吉岡 洋, 大森 咲枝, 芹澤 重厚, 高山 知司
    2005 年 52 巻 p. 186-190
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    和歌山県田辺湾に隣接する下芳養湾で荒天時に顕著にみられる局地的な副振動は風向の変化に敏感に対応していた. その成因を風の息に求めて, 高潮モデルに空間全域一様な風の息を与えて沿岸水位を計算すると, 特定の風向で周期6分の副振動を下芳養湾だけに発達させることができたが, 実際に発生した波高には及ばなかった. 風の息に場所による位相差を与えて風域の移動をモデルに取りいれると, その移動速度が湾外水域の長波速度に近い場合に副振動が著しく増幅され, ほぼ現実の波高の副振動を再現することができた.
  • 安田 秀一
    2005 年 52 巻 p. 191-195
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    有明海の半日周期潮汐は, 水質を保つ上で重要な役割を演じているが, 近年はその振幅減少による水質悪化が危惧されている. 本研究では, 有明海北部の大浦の潮位を調和解析し, 振幅分布や変動を調べ, さらに, 有明海外部の長崎との比較による増幅率の経年変動も明らかにした. それによると, 大浦のM2潮の振幅は最近減少しているが, その原因は有明海以外にあり, 増幅率はほとんど変化がないことが示された. また, 有明海の大きな潮汐振幅は副振動 (固有振動) に関わっていることから, 副振動を他海域や過去のものと比較することによって, その振舞を調べた. 副振動は複数のピークをもっており, そのピークは複合潮に共振して現れている.
  • 青木 伸一, 加藤 茂, 熱田 浩史
    2005 年 52 巻 p. 196-200
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    浜名湖の湖口部に位置する感潮河川である浜名川において, 潮位変動および流れの観測を行った. 浜名川は河道がループ状になっており, さらに枝分かれして2カ所から浜名湖に注ぐ小河川である. 本論文は, このように複雑な形状の小河川内での潮汐波の伝播特性について, 現地観測および数値計算によって検討したものである. 浜名湖内の潮汐がほとんど減衰せずに河川に侵入していること, 河道内の流れは水位の微小な勾配とよく対応し, 一潮汐問に流れの向きが2回反転するなど複雑な流れになっていることを明らかにした. また観測期間中に発生した高潮に対応するために作動させた樋門と排水ポンプの河道内水位に及ぼす影響についても述べている.
  • 有田 守, 青木 伸一, 片岡 三枝子
    2005 年 52 巻 p. 201-205
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    インレットの固定化という大規模な土木工事によりエスチャリーの環境が長期的にどのように変化してきたのかを詳細に調べ, 物理環境の変化と生態系の応答の因果関係を明らかにすることは, 人為的な環境インパクトの影響を検証する上で重要である. 本研究では浜名湖を対象に, 物理環境のうち最も重要な要素であると思われる潮汐に着目し, 湖の潮汐応答特性とその経年変化を明らかにするとともに, 潮汐による外洋と湖との海水交換特性の変化について検討した. その結果, インレットの固定化工事は浜名湖の長期的な環境をもたらしていることが明らかになった.
  • 平石 哲也, 安田 誠宏, 永瀬 恭一, 河合 弘泰
    2005 年 52 巻 p. 206-210
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    2003年9月に韓国南部を縦断した台風14号によって慶南道馬山市では, 高潮による未曾有の災害が発生し, 地下施設への浸水により十数名の死者が出た. 本研究では, 地下施設内での海水の流動を3次元流体解析モデルで解析し, 地下室の浸水に要する時間, 流入する海水の流速等を明らかにし, 被災に至ったメカニズムを解明した. 次に, 今後の浸水対策として臨港部に高さ1mの防潮壁を建設する方法ならびに被害を受けた地下施設の入り口に高さ50cmの止水壁を設ける手法を提案し, その効果を数値計算で検討した. 計算の結果, 防潮壁や止水壁により地下施設への浸水開始時刻が遅くなり, 地下室内の浸水深も大幅に低下されることが明らかになった.
  • 波浪・高潮結合モデルによる白波砕波の影響評価
    金 庚玉, 山下 隆男
    2005 年 52 巻 p. 211-215
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    大気・海洋間のエネルギー輸送のモデル化には,(i) wave-induced stressのような風波により発生する比較的大規模な大気乱流による形状抵抗,(ii) breaker stress等の定義による白波砕波減衰を通しての波浪から吹送流への運動量変換モデル, および (iii) 波齢の高いfast waveに対する波浪増幅・減衰機構の定式化に関する研究が必要となる. これらの研究成果を, 極浅海域での波浪・高潮相互作用場に適用するため, 波浪推算モデル (WW3), メソ気象モデル (MM5), 海洋モデル (POM) の連結系数値モデルを構築した. これを用いて1991年のサイクロンによるベンガル湾の高潮場の再解析を行い, 波浪・高潮結合系における白波砕波の影響を評価した.
  • 國富 將嗣, 高山 知司
    2005 年 52 巻 p. 216-220
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    防潮堤の設計に必要な波浪や水位の設定には, 既往最大規模の台風来襲を想定した波浪や高潮の推算が用いられている. 大阪湾においては, 室戸台風の進路に伊勢湾台風が来襲することを想定しているが, この想定台風の来襲確率や湾沿岸各地における高潮や高波の同時生起特性については, 詳細な検討がなされていない. そこで, 本研究では, 確率台風モデルを用いて当該台風の来襲確率を把握し, さらに大阪湾沿岸における高潮と高波の確率的な生起特性を明確にした. その結果, 大阪湾における想定台風は, およそ280年に一度の頻度で来襲することがわかった. また, 大阪湾沿岸で高潮と高波を同時に生起させる台風は, およそ3年に一度の頻度で来襲するという結論が得られた.
  • TY0416とTY0418の解析
    駒井 克昭, 日比野 忠史, 松本 英雄
    2005 年 52 巻 p. 221-225
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    実測の気象・海象データと数値解析により瀬戸内海における高潮の伝播・発達特性について検討した. 東寄りの経路を通ったTY0416では, 豊後水道と紀伊水道から進入した高潮が同調するとともに, 大潮の満潮時刻に最大潮位偏差の発生時刻が重なった備讃瀬戸周辺で被害が集中した. 西寄りの経路を通ったTY0418では, 気圧低下による海面の吸い上げや強風による吹き寄せにより高潮が発達した山口-広島で被害が集中した. 2004年夏は海水密度が約1kg/m3低かったため, 高潮が増大した可能性がある.
  • 柴木 秀之, 村上 大輔, 村上 和男
    2005 年 52 巻 p. 226-230
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    1970年に土佐湾へ来襲した台風10号による高潮は, 高知で2, 35mの潮位偏差を記録し, 外洋沿岸で発生する最大級の値となった. この異常な高潮の主成分はwave setupによる水位上昇であることが高潮推算から確認された. そこで, 土佐湾に来襲した他の台風による高潮についてもwave setupによる水位上昇を考慮し, 台風7010号による高潮のみが有する特異性の要因を解析する. 解析方法は, 波の効果を組み込んだ高潮経験式による成分分析とwave setupを考慮した高潮推算による観測値の再現である. 解析の結果によれば, 台風7010号の経路が風による吹き寄せとwave setupによる水位上昇を促進し, 異常な高潮が発生したと考えられる.
  • 稲垣 茂樹, 加藤 史訓, 福濱 方哉, 柴木 秀之
    2005 年 52 巻 p. 231-235
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    台風0423号に伴う異常な高潮と高波により, 室戸岬付近の菜生海岸では, 局所的に海岸堤防が倒壊し, 背後地で人的被害が発生した. 菜生海岸周辺は外洋に面した開放的な海岸であり, 地形的な見地からでは, 波の収れんやこれに伴う局所的な水位上昇の発生は想定し難い. 本研究では, wave setupを考慮した高潮計算モデルによる再現計算を行い, 室戸岬周辺における潮位偏差の沿岸分布について検討した. その結果, 高潮時の潮位偏差にwave setup量が大きく影響し, 地形的な見地からでは予測し難いwave setup量の偏りによって, 菜生海岸では, 場所的に最大で30cmの潮位偏差の違いがあることが明らかとなった.
  • 柿沼 太郎, 秋山 実
    2005 年 52 巻 p. 236-240
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    海底地形の変化に伴う津波の発生過程の数値シミュレーションを行なった. 数値解析では, 静水圧近似や長波近似を行なわない計算手法を適用し, 非圧縮性流体の運動を対象とした. VOF関数と空隙率を併用することによって, すべての計算格子を固定したままで, 水面や底面の格子問にわたる変動のみならず, 一つの差分格子内の時間変化をも考慮することが可能である. 時間とともに進行する海底の隆起や沈降によって生じる津波の水面形や, 流体内の速度, 加速度及び圧力を算出した. 津波初期波形が初期水深に依存し, 地形の永久変位と必ずしも一致しないこと, また, 海底の隆起速度の変化に応じて, 流体内部に動圧が発生することを確認した.
  • 松山 昌史, 池野 正明, 榊山 勉, 柳沢 賢, 藤井 直樹
    2005 年 52 巻 p. 241-245
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    津波のソリトン分裂現象と分裂波の砕波限界を把握するために, 長さ200mの大型造波水路を用いて大陸棚上を伝播する津波の実験を行った. 大陸棚は長さ約100mで, 地形勾配は1/100, 1/150, 1/200と3つの条件でそれぞれ実施し, 砕波近傍で波形を詳細に計測した. また, 水位の時系列データから, 砕波限界の指標である水面の空間波形や水表面流速波速比を算定する方法を提案し, 実験データを適用した. その結果, 砕波限界の最大水面勾配は20~50度, 水表面流速波速比は0.5~1.2と従来用いられていた砕波限界値より大きいことが明らかになった.
  • 泉宮 尊司, 今井 達也
    2005 年 52 巻 p. 246-250
    発行日: 2005/10/07
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 海洋レーダ等によって得られた海表面流速データを用いて, 津波のリアルタイム予測を行う手法を開発している. 観測値を用いたデータ同化には, 基礎方程式である連続式および運動方程式を用いて, 津波水位を推定する楕円型の方程式を導き, それを用いている. 流速場の測定時間間隔が10s程度であれば, ある特定の時刻の津波水位を精度よく推定できることを数値シミュレーションにより明らかにしている. また, 本リアルタイム予測法により得られた沿岸域の津波波形と目標とすべき真の津波波形とは極めてよく一致し, その相関係数は0.99以上であった. このことから, 本手法の精度の高さおよび実用性があることが検証された.
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