抄録
ラムサール条約登録湿地である谷津干潟では, 大型緑藻類のアオサの異常繁茂が問題となっており, 干潟生態系の脆弱化が引き起こされている.本研究では, アオサの繁茂による影響を把握するための現地調査を行うとともに, 干潟の流況とアオサ発生分布との関連性について数値シミュレーションにより検討した.また, アオサが突然越冬を始めることとなった原因と流入源の特定をするために, アオサのDNA解析を行った.その結果, 谷津干潟では水質浄化能力が極めて低く, 底質も嫌気的状態であることがわかった.また, アオサの発生分布には干潟内の流況が大きく起因しているとともに, 谷津干潟のアオサは同じ東京湾内である三番瀬や海の公園とは別種である可能性が示唆された.