抄録
沿岸部の農地における高潮や津波の被害では, 海水の浸入に伴う塩害ばかりでなく, 海水とともに流入した土砂の除去が復旧上の課題である. 本研究では, 沿岸農地への土砂流入経路の推定を目的とした土砂流入箇所の推定を, 越水部分の最大流速を指標にした比較的単純なモデルにより, 試みた. 9918号台風に伴う八代海高潮における沿岸農地の被災を再現し, 土砂堆積箇所の調査結果と比較したところ, 主要な土砂流入箇所の推定ができた. 氾濫域における土砂の堆積域を予測するには, 土砂の流動・堆積の詳細なモデルが必要であるが, 本手法により, 復旧に時間と費用を要する土砂流入の対策を効果的に行うことが可能になる.