2006 年 53 巻 p. 261-265
今世紀前半の発生が予想される南海地震では, これまで津波とは無縁と思われてきた瀬戸内沿岸域においても, 3m以上の津波高あるいは満潮時に2m以上の浸水が予想されている. しかしながら, 瀬戸内海の津波挙動に関する研究は十分とはいえず, 解明すべき多くの問題が残されている. 本研究では, 瀬戸内海域の津波挙動に及ぼす, 潮位, 潮流および内海の閉鎖性の影響について考察した. その結果, 津波高の予測値に及ぼす初期潮位や潮流の影響は50cm未満であること, 内海に進入した津波は減衰するのに半日~1日程度要すること, 東の紀伊水道を透過し, 播磨灘と大阪湾に進入した津波の50~80分の周期成分は減衰されにくいことを示した.