抄録
諫早湾干拓事業が有明海に与えた影響については, 調査研究が進んでいるもののいまだ明確な回答は得られていない. 本論文では, 基本的な物理環境である潮流に焦点を当て, 既存の現地観測資料の精査ならびに新たな観測の実施から干拓事業がもたらした影響を評価し, そのメカニズムについても考察を試みた. その結果, 潮受け堤防締切りにより有明海の潮流が減少するメカニズムや諌早湾口付近の流動構造が変化した原因などが推定された. また, 締切り前後の比較データとして広く利用されてきた小田巻ら (2003) の潮流観測結果の問題点を抽出した.