抄録
近年, 中国では急激な経済の発展に伴って沿岸域の環境汚染が深刻化している. 急激な近代化のために渤海に流入する黄河では農業・工業・生活用水の過剰取水があり, 下流域で干上がってしまう “断流現象” が生じた. このため, 中国政府はダムを建設し, 土砂を一気に渤海まで流す調水調沙事業を推進している. 本研究では, 黄河から流入する高濁度水塊の挙動特性に及ぼす潮流・風応力の影響を明らかにすることを目的に, 潮汐, 気象擾乱, 波浪, 密度流, 濁度分布, 底質の巻き上げを考慮した数値実験と衛星画像からその影響を検討した. その結果, 流入する土砂はほとんどが來州湾に沈降すること, 海底面摩擦速度において, 潮流に起因する量と, 強風の連吹に起因する変化量が同程度であることがわかった.
