抄録
熊本港地先の白川沖における柱状堆積物試料の放射年代測定, 粒度・重鉱物・微化石・重金属・炭素窒素分析などをもとに, 近過去の環境変遷を明らかにし, 陸域ならびに海域で得られている各種環境測定の結果と比較検討して, 有明海の環境変化の原因の推定を試みた. 解析の結果, 1966-1972年に堆積物の供給が緑川から白川に変わり, 1960年頃に海底への有機物付加が始まり, 1975年頃に生活系窒素に伴い海水中の窒素が増加し, 1980年頃に赤潮珪藻種が急増し, 1980年代前半に二級河川の有機汚濁が極大に達し, 1978-1988年には海底が嫌気的状況になった. 堆積物に残された環境の記録を高精度解析することで, 海域環境の悪化が陸域における負荷の変遷と密接に関連していることを示す重大な根拠が得られた.