抄録
本研究では、マルチエージェントシミュレーションを用いて推定した被災者の行動をもとに、時々刻々変化す
る状況に対応した,効率的な被災者誘導支援の実現を目的としている.本論文では,動的に表示内容を変更でき
る避難誘導指示(デジタルサイネージ)の設備配置の選定戦略と,表示内容の生成に関して,シミュレーション
に基づく意思決定支援を行った.
設備配置の選定戦略としては,対象地域の地理情報・統計情報から,住民が多い地域や,多くの道路に接して
いる交差点などを探し,自動でデジタルサイネージの配置場所の有力候補を選定した.その有力候補ごとに避難
シミュレーションを行うことで,避難時間および避難者数を比較し,最も効率的なデジタルサイネージの設備配
置案を選出した.さらに,そもそもデジタルサイネージを設置していない場合と,設置した場合とを比較し,そ
の効果の評価も試みた.
シミュレーションにより設備配置案を評価し,自治体担当者の立案支援に利用することは可能であるという結
論は得られたが,その信頼性をデータに基づいて向上させるためには更なる研究が必要といえる.