抄録
デンマークの情報システムは、ユーザーの視点を重視した設計・開発に大きな特徴がある。たとえば、市民や企業は、行政が提供するポータルサイトを使ってワンストップで電子的に手続きを済ませることができる。税金の申請は、基本的に国税庁が作成した書類を本人がインターネットで確認するだけで完了する。ユーザーにとって便利で使いやすい電子政府システムが構築されている背景には、住民サービスの観点だけではなく、財政面からも行政が効率化とコスト削減を厳しく迫られているという事情がある。しかし、ユーザー中心のアプローチは、それにとどまらず、「ユーザードリブン・イノベーション」すなわち新たなイノベーションを生むというデンマーク独自の積極的な発想にもつながっている。