抄録
知的財産権という権利付与の形でこれまで推移してきた著作権制度は、社会全体の情報ネットワークの発達によっ
て転換点(岐路)に差し掛かっている。物のような有体を有しない無体としての財に対して、著作権をこれまでの
インセンティブ理論を背景にそのまま適用すべきか。日本の法社会学を創設した川島武宜教授の理論と広中俊雄教
授の財貨秩序理論を基軸に、著作権法による市場価値と公共の福祉を核とした「社会秩序」の形成を提唱す
るものである。本稿は、情報セキュリティ大学院大学林紘一郎学長が10 年にわたり情報処理学会等で唱えている情
報法の客体論に対する部分的な検証になるものとして論ずる。