抄録
IS(情報システムIS)研究における方法論的多様主義の必要性が指摘されて久しい.しかし,IS 研究の方法論的論
争は,学問的厳密性を過度に重視することになった.一方で,問題解決という目的関連性の観点から,組織問題に
まで射程を広げていった結果,極端な場合は,IS そのものを直接的に扱うことなしに議論が展開されることになっ
てしまった.そこで,IS は自然物とは異なる人工物である点に立ち返り,自然科学とは異なる人工物の科学として,
近代科学とは異なる科学の確立を目指すべきではないか,という議論が巻き起こっている.本稿では,そのような
人工物の科学において解明すべき理論=知を「実践の知」ないし「持論」と捉える.そして,そのような知を捉え
るためには,実務家自身による事例研究が極めて重要である点を指摘する.