環境システム研究論文集
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環境と経済を統合した応用一般均衡モデルによる環境政策の効果分析
増井 利彦松岡 譲森田 恒幸
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2000 年 28 巻 p. 467-475

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抄録

本研究では、経済活動に伴って発生する環境負荷を取り込んだ応用一般均衡モデルを用いて、環境負荷を削減するという環境制約が経済活動に及ぼす影響と、そうした環境制約を緩和させる政策の効果を定量的に評価する。ここで対象とした環境制約は、京都議定書で同意した二酸化炭素排出量の削減 (2010年頃までに排出量を1990年比で6%削減する) と、1999年に日本政府が目標値として表明した廃棄物最終処分量の削減 (2010年度までに最終処分量を1996年度比で半減する) の2つである。これらの制約により、2010年のGDPは制約がない場合と比較して2.7%減少する。本研究で対象とした環境政策は、1) 古紙の需要を高める、2) 低公害車の普及を図る、3) 廃棄物処理に対する投資を高める、の3つである。これらの政策は、対象となっている環境負荷の削減を通じて環境制約を緩和させるとともに、関連する産業の生産活動を高めることから、全体的なGDPの回復に寄与する。その一方で、例えば低公害車の普及により2010年の二酸化炭素排出費用 (: 排出目標を達成するために課せられた炭素税の費用に相当) は11.9%削減するが、廃棄物最終処分費用は0.7%増大するなど、環境政策が産業連関を通じて別の環境に影響を及ぼす可能性があることを明らかにした。

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