2007 年 44 巻 p. 99-106
本研究は, ダム湖の上下流に生息する水生昆虫分集団間の遺伝的分化を再現するモデルを開発し, シミュレーションを行った. その結果, ダム建設後に上下流間の遺伝的分化が進み, 分化レベルが飽和状態に達するまでに約10-50世代程度かかることが推定された. また, ヒゲナガカワトビケラ分集団間の遺伝距離の観測値に基づいてパラメーターの同定を行った. このシミュレーションにより, ダム建設後, 交流できなくなる個体の割合を6つのダムについて評価した. 下久保ダムは, 最大の遺伝的分化を示し, 上下流間の交流可能性がほぼ0%と推定された.