風力発電施設の増加に伴い,北海道ではこれまでに52件のオジロワシの風車衝突事故死が確認されている.現在でもさらに多くの風車建設計画が提出されていることから,本研究は風車立地選定に有用な知見の提供を主目的としているが,風力発電事業を含む,さまざまな環境改変による影響の評価や回避に向け,日露の海ワシ類生息域における重要な飛行経路や生息場所を示すことが最終的な目標である.とくに今回のプロジェクトでは,オジロワシの渡り移動経路や中継地,越冬地の特定を目的とした.
2018年7月中旬に,アムール川下流域にあるチュクチャギル湖周辺のオジロワシの営巣地で4個体の巣内雛にGPS送信機を装着した.同年11月までの追跡調査の結果,全個体が営巣地から河川周辺に移動した.一方,2017年7月にアムール川中流域の巣で送信機を装着した1個体は日本に渡来することはなく,沿海地方の沿岸にある水産加工場付近にあるゴミ捨て場周辺で越冬した.この個体は,ゴミ捨て場で水産廃棄物などを餌としていたと考えられる.また,特定された3ヶ所の中継地はすべて河川流域で,溯上するサケ科魚類を主な餌としていた可能性がある.