2021年12月,沖縄本島においてこれまでに全く未知の超洞窟性チビゴミムシ族Trechiniの新属新種が発見された.本研究ではこの新属新種の分類学的研究を進め,オキナワアシナガメクラチビゴミムシRyukyuaphaenops pulcherrimus Sugaya, Kakizoe, Ooka, Tamura & Sone, 2023として記載と公表を行った.また,保全生物学的観点からさらなる調査の実施と本種の遺伝的集団構造の解明を進めた.チビゴミムシ族に代表される日本産地下性昆虫は,その調査の困難さから系統解析および集団遺伝解析に用いるDNAサンプルの収集が著しく立ち遅れている.よって本研究では,日本産チビゴミムシ族や他の地下性昆虫のDNAサンプル収集を目的として,地中トラップの改良,井戸水の調査方法の改良を行い,北海道,九州,沖縄県の各地で野外調査を実施した.その結果,日本産チビゴミムシ族32属のうち25属および他の地下性生物のDNAサンプルの収集に成功し,DNA配列決定を進めた.本稿では,上記の成果のうち公表済みのオキナワアシナガメクラチビゴミムシの分類学的成果を中心に,得られた成果と今後の展望を述べる.
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