オガサワラハンミョウは小笠原諸島固有の昆虫で現在は兄島のみに生息する絶滅危惧種である.2010年から環境省を中心にさまざまな保全事業が進められているものの,野生下での減少に歯止めがかからず,絶滅回避にはその原因解明が急務となっている.本研究では本種の生態情報を収集して新たな保全策立案につなげるために,ポータブル電源からの給電で最大255時間の連続撮影が可能な長時間撮影装置を用いて幼虫の生態を観察した.3,818時間の撮影の結果,本種幼虫の主な餌生物がトビムシやアリであることを野外で初めて明らかにした.さらに,幼虫の「引っ越し行動」を雨天時に観察するなど,雨天時の行動について新たな生態的知見を得ることができた.餌生物や雨の影響を明らかにしたことで,本種の減少要因解明に向けて重要な知見が深まった.
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