自然保護助成基金助成成果報告書
Online ISSN : 2189-7727
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はじめに
目次
第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
  • 東 幹夫, 深沢 南己, 山野 紗希, 佐藤 慎一, 市川 敏弘, 佐藤 正典, 松尾 匡敏
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 1-10
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,諫早湾の常時開門が実現するまで,潮止め直前から現在まで毎年実施してきた有明海採泥調査を今後も継続させるため,潮止め後20年間の有明海底生動物群集の変化を取りまとめることを目的としている.今年度の採泥調査は,有明海奥部は2018年6月9日と10日の2日間で,諫早湾干拓調整池内は2018年6月11日に実施した.さらに,前年度2017年6月に有明海奥部50定点で採集した生物試料のソーティング作業を完成させ,過去21年分の同一定点における同一手法によるデータと比較することで,潮止め後20年間の有明海奥部における海底環境と底生動物群集の変化を明らかにした.

  • 木下 豪太, 平川 浩文, 佐藤 拓真, 村上 翔大, 成瀬 未帆, 米澤 悟
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 11-23
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    北海道では国内外来種であるニホンテン(Martes melampus)が分布を拡大しており,在来種クロテン(M. zibellina)の生息域を狭めている.本研究では,現在両種の分布境界となっている石狩低地帯を中心に両種の生息調査を行うとともに,新たなDNAマーカーによる集団構造解析を行った.その結果,石狩低地帯に位置する2 つの丘陵(野幌と馬追)でクロテンの生息を確認し,野幌では両種が2km以内で確認され,境界がほぼ確定できた.本研究で作成したマイクロサテライトを用いて馬追と野幌で収集した糞サンプルのDNA解析に成功した.マイクロサテライトマーカーとMIG-seqにより得られたSNPを用いた解析では,クロテンとニホンテンは遺伝的に明瞭に分けられること,北海道のクロテンは分布の東西で遺伝的な偏りがあることが示された.今後は両種の分布隣接地での生態調査を行うとともに,遺伝的集団構造を踏まえた長期的な分布変化のモニタリングが必要である.

  • 山本 優一, 上原 一彦, 吉村 剛, 石川 陽介
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 24-35
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    2015年に大阪府内においてバラ科樹木を加害する外来種クビアカツヤカミキリが発見され,その後,当地域においてサクラ類での被害の急速な拡大が懸念される.そこで,サクラ類での被害実態調査を通して,本種による被害の範囲や程度など,今後の防除対策に資する基礎的情報を収集した.

    定点調査地点において,2015年から2018年まで被害率は年々増加し,2015年には累積被害率が11.2 %,累積枯死率が0%であったが,2018年には累積被害率が61.2%,累積枯死率が13.1%に達した.

    大阪府の南河内地域において,2017年及び2018年に広域調査地点(140箇所)の被害状況を調査したところ,特定の単一の地域に被害が集積していた.被害は初発地から同心円状に拡大するとともに,飛び地的な被害地の発生も確認された.また,成虫の年間移動距離は,平均で約2km,最大で約3kmであった.

  • 福嶋 司, 吉川 正人, 大隅 翔馬, 井上 香世子
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 36-49
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    群馬県の玉原湿原において,1990年代に行った乾燥化抑制対策の効果と,シカによる影響の実態を知るために,地下水位の季節ごとの測定と現存植生図の作製を行い,過去の調査結果と比較した.人工排水路への堰の設置と,湿原の中央部を横断していた木道の撤去,およびハイイヌツゲの継続的な刈り取りの結果,植物群落の分布には大きな変化がみられた.湿原中央部のハイイヌツゲを刈り取った範囲では,堰による地下水位の上昇によってハイイヌツゲの成長が抑制され,ヌマガヤ優占群落に変化していた.また,湿原西部では,木道の撤去によって外縁を流れる沢の水が斜面下部まで到達するようになり,ヌマガヤ優占群落が湿原植物を含む群落に変化していた.保全対策によって湿原植生が回復する傾向がみられた一方,シカが湿原内に侵入し始めており,ミズバショウ群落に深刻な被害が生じていた.

  • 浦 達也, 長谷部 真, 平井 千晶, 北村 亘, 葉山 政治
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 50-57
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,個体数が減少している,絶滅危惧種で国内希少種であるチュウヒの国内最大級の繁殖地であるサロベツ湿原とその周辺の地域において,複数にわたる大規模風力発電施設の建設計画が存在する.風車の建設による影響は猛禽類で多くみられることから,本研究ではサロベツ湿原エリアでの風車の建設がチュウヒにどのような影響を与える可能性があるか,6・7・8月ののべ62時間の行動観察の結果から推測した.その結果,時期,時間,場所とその環境に関わらずチュウヒの巣から半径1.25kmの範囲内でバードストライク等の発生リスクが存在し,また,日の出から4時間後以降および育雛期(6月)にバードストライク等の発生リスクが高まることが分かった.チュウヒの保護を考えると,チュウヒが営巣していることを確認した場合,巣があると推測される地点から少なくとも半径1.25kmの範囲について開発行為を行わないこと,また,チュウヒが探餌行動していることが確認された環境についても開発行為を避けるなどが重要な保全措置となる.

  • 中野(小西) 繭, 小林 和子, 中島 法子, 古賀 和人
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 58-68
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    長野市南西部の里山にあるため池群は絶滅危惧種シナイモツゴPseudorasbora pumilaの大規模生息地となっている.本研究では,36ヶ所のため池において,シナイモツゴと外来種(アメリカザリガニ,ウシガエル,コイ,ソウギョ等)の生息状況,および,ため池の管理状況を調べた.その結果,過去の調査(1997~2010年)でシナイモツゴが捕獲された33ヶ所のうち,今回も生息が確認されたため池は27ヶ所であった.確認されなかったため池のうち1ヶ所は放棄による湿地化が進行していた.一方で新たに2ヶ所のため池でシナイモツゴが発見され,生息池は合計29ヶ所(2018年)となった.次に調査を行ったため池の保全の緊急性と重要性をスコア化し保全優先度を求めたところ,最優先モニタリングサイトは2ヶ所に絞られた.今後,在来・外来種数や個体数にも着目しながら,在来生態系の記録,管理,再生に資する情報を蓄積したい.

  • 樋口 広芳, 長谷川 雅美 , 上條 隆志, 岩崎 由美, 菊池 健, 森 由香
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 69-75
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    八丈小島は外来種であるイタチや野ネコがいない島として,典型的な伊豆諸島の食物連鎖系が残された唯一の島である.しかし昭和44年全島民が離島の際に残されたノヤギが増加し植生被害が顕在化したため,本研究会がノヤギの駆除を提言し,東京都と八丈町が2001年~2007年に計1137頭のノヤギを駆除した.その後,植生は回復していったが,駆除後の生態学的調査は行われていなかったため,今後の保全と活用に資するための基礎査として本研究を行なった.植物においては,希少種であるハチジョウツレサギ,カキラン,オオシマシュスランが駆除後はじめて確認され,爬虫類では準固有種であるオカダトカゲが他の島と比較してより高密度で生息していることが確認された.鳥類では2013年には準絶滅危惧種のクロアシアホウドリが飛来し,2016年-2017年には2個体,2017-2018年には7個体が巣立ち,同種の繁殖北限地となった.イイジマムシクイやアカコッコ,ウチヤマセンニュウなどの希少種が観察されたほか,準絶滅危惧種のカラスバトも高密度で生息していることが確認され,本島が伊豆諸島において貴重な生態系を有することが示唆された.

  • 上田 昇平, 渡邊 琢斗, 池田 健一, 兵藤 不二夫
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 76-80
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    アルゼンチンアリ(以下,本種)は,南米を原産地とする世界的な侵略的外来種であり,国内の12都府県で定着が確認されている.本種は侵入先で在来アリ類を駆逐することで生態系機能を撹乱するとされる.本研究では,安定同位体分析を用いて本種の食性を検証し,本種と在来アリ類の競合機構を明らかにすることを目的とした.2015年,大阪府堺市では本種の侵入が確認されており,本研究グループは,環境省・地方行政と連携して本種のモニタリング調査と防除に継続して取り組んでいる.2017年10月から2018年6月にかけて本調査地から採集した本種と在来アリ8種を用いて安定同位体分析を行い,δ15N値の種間比較から,アリ類が動物質と植物質のどちらを餌として利用しているかを推定した.本種のδ15N値は,同所的に分布するアリ類の中で2番目に高く,捕食者であるオオハリアリやウロコアリ類と同程度であったこの結果は,本調査地において本種は高次消費者であり,動物類を餌として利用していることを示している.

  • 澤 祐介, 池内 俊雄, 田村 智恵子, 嶋田 哲郎, Ward David, Lei Cao
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 81-87
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    コクガンはロシアやアラスカなどの北極圏で繁殖地する鳥類で,日本を中心とする東アジアでは約1万羽が越冬する.しかしその渡りルートや重要な生息地については,未解明の部分が多く詳細な生態も明らかになっていない.本研究では,約7,000羽が秋季の渡り時期に集結する北海道野付半島において,コクガンにGPS発信機を装着し,追跡することで,渡りルートを明らかにすることを目的とした.

    2017年11月,2018年3月に野付半島において,コクガンの捕獲を試みた.2017年11月には4羽のコクガンを捕獲し,GPS発信器による追跡を実施した.その結果,4羽中2羽で有効なデータを約1ヶ月間にわたり取得することができた.調査期間中,長距離の移動を確認することはできなかったが,北海道道東部を中心に生息地間を移動していることが明らかとなった.また捕獲方法を確立したことにより,今後の調査に対して重要な知見を得ることができた.

  • 中島 啓裕, 橋詰 茜, 矢島 豪太, 高橋 慶伍, 黒瀬 弘毅, 寺田 佐恵子
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 88-97
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    群馬県利根郡みなかみ町に位置する武尊田代地域には,多量の降雪がおもな涵養源となる湿原が点在している.しかし,近年のニホンジカの侵入・増加に伴い,湿地生態系に変化が生じつつある.本研究では,湿地の周りに自動撮影カメラを設置し,シカの個体数密度とその変動を明らかにする体制を整えた.また,シカ排除柵を設置し,シカが湿地生態系にもたらす影響を定量的に評価した.さらに,両者の結果から,希少植物保護のための方策を確立することを試みた.自動撮影カメラのデータから,平均的な密度は低いものの,比較的大きな月変動がみられることが分かった.6月から7月に個体数密度が高くなるのに対し,8月から10月には低密度になった.こうした変動は,より広域での移動パターンによるものと考えられる.湿地生態系への影響もシカの密度変動に対応しており,初夏には湿地のスゲ属への影響がとくに顕著であったが,夏以降は大きく軽減された.これらの結果から,湿地の希少植物の保護のためには,シカが高密度化する時期に簡易的な排除柵を設置することが影響緩和策として有効であると考えられた.

  • プレブル ジェイソン, ヴィンセノ クリスチャン , 大手 信人
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 98-104
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本調査の目的は,沖縄本島に生息するヤンバルホオヒゲコウモリとリュウキュウテングコウモリの保護に関する生態を解明することであった.2017年秋季から2018年夏季に計6回,人工的に作成したコウモリのソーシャルコールを音響ルアーとして利用し,捕獲調査を行った.リュウキュウテングコウモリに対しては,音響ルアーは捕獲率を上げたが,その有効率は季節によった.ヤンバルホオヒゲコウモリの捕獲を,沖縄本島では,22年ぶりに報告した.捕獲に際して音響ルアーを用いたが,その効果は不明である.さらに,コウモリにとってねぐらは重要な生息地であるため,発信機をコウモリに装着し,ねぐらを確認した.リュウキュウテングコウモリは木の葉,シダ類,樹洞を含む様々な種類のねぐらを利用し,ヤンバルホオヒゲコウモリは主に樹洞を利用している.沖縄本島ではヤンバルホオヒゲコウモリはリュウキュウテングコウモリより分布域が限られている可能性がある.これらの対象種の生態情報を解明,さらに保護計画を策定するためにさらなる研究が必要である.

  • 相場 慎一郎, 藤田 志歩, 鈴木 真理子, 鵣川 信, 川西 基博, 宮本 旬子
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 105-115
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    世界自然遺産候補地となっている鹿児島県奄美群島の奄美大島と徳之島の原生的照葉樹林において,毎木調査区を用いた植生調査をおこなった.本報告書では,このうち,奄美大島西部の標高400 mと600 mに設定した2つの1ヘクタールの毎木調査区の概要について,奄美大島中部(標高330 m)の既存の1ヘクタール調査区と比較しながら報告した.調査対象樹木の下限直径は4.8 cmである.本研究の2調査区はスダジイ・イジュの優占度が低く,イスノキ・ウラジロガシ等の優占度が高いことから,遷移がより進んだ状態にあるとみなせた.3つの1ヘクタール調査区の間に見られる変異は,標高・地形・撹乱の程度などにより説明されると考えられた.また,奄美大島・徳之島の植生調査区の周辺で,カメラトラップによる動物調査もおこなった.その結果,両島の山地に残された原生的照葉樹林は,多くの固有種を含む哺乳類・鳥類の生息場所となっていることが示された.

  • 三谷 曜子, 北野 雄大, 鈴木 一平
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 116-122
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    北海道周辺におけるラッコは北方四島を除く全域にて,毛皮を目的とした乱獲により姿を消したとされていたが,2014年にラッコの親子が北海道東部(道東)で確認されて以降,徐々に目撃数が増えている.本研究では,道東沿岸域に再定着しつつあるラッコが,生態系に与える影響について定量化することを目指し,ラッコの行動観察による,行動分類と餌生物判別を行い,アラスカ個体群と比較した.ラッコの行動は,陸,および船上から,ある個体を30分間追跡するフォーカルサンプリングを行い,1分ごとに行動を記録した.行動は,採餌,遊泳,毛づくろい,他個体との接触,見回り,休息に分けた.子連れ個体の場合は,子への毛づくろい,授乳についても記録した.採餌していた場合には,潜水時間と海面に持ち帰った餌の同定,及び海面滞在時間について記録した.この結果,同定できた餌のうち,約7割は二枚貝であり,そのほか,ウニやホヤ,カニを食べていることが明らかとなった.餌生物の少ない環境では,潜水時間が長くなると知られているが,個体数の安定しているアラスカ個体群と潜水行動を比較すると,平均潜水時間は半分程度となったため,環境収容力の限界には達していないと推察できる.

  • 白木 彩子, Pronkevich Vladimir, 奥田 篤志
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 123-130
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    風力発電施設の増加に伴い,北海道ではこれまでに52件のオジロワシの風車衝突事故死が確認されている.現在でもさらに多くの風車建設計画が提出されていることから,本研究は風車立地選定に有用な知見の提供を主目的としているが,風力発電事業を含む,さまざまな環境改変による影響の評価や回避に向け,日露の海ワシ類生息域における重要な飛行経路や生息場所を示すことが最終的な目標である.とくに今回のプロジェクトでは,オジロワシの渡り移動経路や中継地,越冬地の特定を目的とした.

    2018年7月中旬に,アムール川下流域にあるチュクチャギル湖周辺のオジロワシの営巣地で4個体の巣内雛にGPS送信機を装着した.同年11月までの追跡調査の結果,全個体が営巣地から河川周辺に移動した.一方,2017年7月にアムール川中流域の巣で送信機を装着した1個体は日本に渡来することはなく,沿海地方の沿岸にある水産加工場付近にあるゴミ捨て場周辺で越冬した.この個体は,ゴミ捨て場で水産廃棄物などを餌としていたと考えられる.また,特定された3ヶ所の中継地はすべて河川流域で,溯上するサケ科魚類を主な餌としていた可能性がある.

  • 内田 翔太, 篠部 将太朗, 平野 尚浩
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 131-139
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    大東諸島は外来種によって固有陸貝相が壊滅的な状態に近づいていることが示唆されている.しかし先行研究では,外来捕食者のツヤオオズアリやオガサワラリクヒモムシの効果は無視されていた.そこで本研究はこれら 2 種に対する影響の解明を目的として,先行研究が実施された地点で 2 種の分布調査と,先行研究で不十分であった海岸線近くの陸貝調査を実施した.沖縄本島では外来捕食者に対して応答が大東諸島と異なるのかを明らかにすることを目的として陸貝調査を実施した.また,大東固有陸貝の繁殖技術の確立を目的として飼育を行った.その結果,ツヤオオズアリは小型陸貝の個体数を減少させていた.オガサワラリクヒモムシは陸貝への影響はなかった.沖縄本島では外来捕食者に対して大東諸島と似たような応答をしている可能性があった.飼育下ではダイトウノミギセルは繁殖に成功したが,アツマイマイ属は成功しなかった.大東諸島の陸貝相の保全には飼育技術の発達が望まれる.

  • 木佐貫 博光, 熊谷 朝臣, 宮沢 良行, 岡本 榛名
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 140-148
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    大台ヶ原では,森林衰退の原因のひとつであるシカの採食を排除するために建設された柵内において,ササ群落の水消費と以前受けたシカによる剥皮が,生残したトウヒ成木の水分吸収を抑制している可能性がある.2001年度に設置された柵内のトウヒ成木の樹液流速を2018年4月末から11月まで継続観測し,トウヒの樹液流速に影響を及ぼす自然環境ならびに生態的要因の解明を試みた.柵内のトウヒ生残木18個体について,グラニエセンサーを用いて樹液流速を観測した.その結果,樹液流速に対して,日射量や大気飽差による正の影響が認められた.生態的要因についてみると,生残木の樹液流速は,樹高,幹の剥皮割合,辺材面積によるモデルによって最も良く説明できた.ほとんどのトウヒ生残木の幹には,柵設置前につけられたシカによる剥皮痕が残存しており,その辺材部では通導面積の縮小による通水阻害を被っていることが示唆された.

  • 金子 洋平, 須田 隆一, 中島 淳, 石間 妙子
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 28 巻 p. 149-160
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    夏季に発生する特定外来生物ブラジルチドメグサの枯死現象を明らかにするために,枯死要因として推測された水位,水温,栄養塩(全窒素・全リン)濃度をモニタリングするとともに,これらに係る生活史特性を明らかにした.その結果,1)クリークにおける水位変動は最大で80cm程度であったが,葉柄の伸長等により80cm程度まで適応可能であったこと,2)栄養塩濃度は春季と夏季で差はなく,栽培環境下では栄養塩濃度が極端に低い場合でも長期に生存できたこと,3)水温は最高で35℃程度であったが,栄養塩の吸収速度は25℃よりも35℃条件下で大きかったことから,これらの環境因子が枯死要因である可能性は低いと考えられた.一方,ブラジルチドメグサの茎は,盛んに分枝して階層状に発達し空気中を横走するようになるが,日照時間が長い猛暑日が続いた場合,これらの茎葉に強い水ストレスが生じることで枯死が発生し個体全体に波及していることが示唆された.

第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内活動助成
第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内活動助成 地域NPO枠
第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 海外助成
  • Nguyen Khoa Truong, Tran Van Tien, Le Ngoc Trieu, Nguyen Van Giang, Tr ...
    原稿種別: 海外助成
    2020 年 28 巻 p. 211-223
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ベトナム固有種である2種のマツ Pinus krempfii H. Lec. およびPinus dalatensis Ferréの遺伝的多様性と個体群の動態について調べた.P. dalatensisについては,小さな集団サイズと更新が見られないことが,遺伝的多様性の損失を通して,種の生存に脅威となっていることが明らかとなった.P. krempfiiについても,焼き畑や森林伐採が生育域の森林の断片化をもたらし,集団の縮小をもたらしている.両種において,成木と稚樹間の遺伝的距離は,調査地域(Chu Yang Sin と Bidoup)によって異なっていることもわかった.また,P. dalatensisにおいては,林床に稚樹が見られないことや,高木層に先駆樹種が多く混じることから,集団の更新にはかなり大規模な森林攪乱が必要であると考えられた.一方,P. krempfiiについては,稚樹の耐陰性が高いことから,単木の枯死による小規模なギャップ形成でも,更新には効果的であろうと考えられた.(推薦者:原 正利 訳)

  • Arum Widayati Kanthi, Rianti Puji, Tsuji Yamato, Sofiana Nugraheni Lat ...
    原稿種別: 海外助成
    2020 年 28 巻 p. 224-232
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    我々の研究の目的は,インドネシア西ジャワ州・テラガワルナのエコツーリズムサイトで,人間活動がここに生息するカニクイザル(Macaca fascicularis)の行動にいかに影響するかについての科学的なデータを提供することである.人間活動のレベルが異なる3つのタイプ(平日:42日,週末・祝日:33日,ラマダン期:24日)の計425時間にわたってサルを観察し,サルの行動がタイプ間で異なるか否かを検討した.観光客の1日当たりの平均数は平日が103.3人,休日・祝日が232.2人,ラマダン期が36.8人だった.ラマダン期は,サルの移動割合が他のタイプに比べ有意に高く,逆に休息割合が低かった.このことは,サルが観光客の数に応じて自らの行動を変えていることを示唆する.行動観察と並行して,304人(観光客:162人,住民:131人,管理作業員:11人)にサルとの軋轢に関するインタビューを実施した.サルによるトラブルの多くは食物に関するものであった.サルとヒトとの間に軋轢はないとする回答が70%を占め,またサルに餌を与えたいと考える人が多かった.多くの人は人獣共通感染症のリスクを知らなかった.将来的に,人とサルとの軋轢が強まることが懸念される.(推薦者:辻 大和 訳)

第3期提携助成 学協会助成
  • 矢後 勝也, 平井 規央, 小沢 英之, 佐々木 公隆, 谷尾 崇, 伊藤 勇人, 遠藤 秀紀, 中村 康弘, 永幡 嘉之, 水落 渚, 関 ...
    原稿種別: 学協会助成
    2020 年 28 巻 p. 233-246
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    シカの急増に伴う林床植生の食害により国内で最も絶滅が危惧されるチョウと化したツシマウラボシシジミの保全を目的として,a)保全エリアでの実践的な保護増殖活動,b)保全エリア候補地の探索に関する活動,c)希少種保全と農林業との連携に関する活動,の大きく3つの課題に取り組んだ.保護増殖活動では,環境整備やシカ防護柵の増設により保全エリアの改善を試みた他,現状の環境を把握するためにエリア内の林床植生および日照・温度・湿度を調査した.今後の系統保存と再導入のために越冬・非越冬幼虫を制御する光周性に関する実験も行った結果,1齢幼虫から日長を感知する個体が現れることが判明した.保全エリア候補地の探索では,本種の好む環境を備える椎茸のホダ場30ヶ所を調査し,良好な環境を保持した11ヶ所のホダ場を見出した.保全と農林業との連携では,アンケート調査から多くの地権者や椎茸農家の方々は本種の保全に好意的なことや,本種を育むホダ場で生産された椎茸のブランド化に賛成で,協力可能であることなども明らかとなった.

  • 中島 敦司, 今西 純一, 入山 義久, 内田 泰三, 小野 幸菜, 橘 隆一, 田中 淳, 津田 その子, 中村 華子, 吉原 敬嗣
    原稿種別: 学協会助成
    2020 年 28 巻 p. 247-262
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    熊本地震および豪雨による崩壊の復旧に取り組みつつ,ススキ等野草地の構成種を主な対象として地域性種苗の活用,流通拡大を目指している.生態系に配慮した復旧事業の推進,地域性植物の活用には地域の生産力,社会全体における価値観の共有化も欠かせない.本プロジェクトを多様な主体と取り組む中で,生物や生態系の多様性の保持,伝統的な視点を大切にした持続的な地域管理,地産資材の活用による地域の活性化などをともに進めている.2018年は阿蘇市波野地区で草原の観察会,花暦の作成等による普及活動,草原の短草型化の試験実施,地域から要望のあった登山遊歩道修復,牧野におけるススキ種子の採取などの現地活動を地域の方と協力して実施した.2017年に採取したススキの種子は,阿蘇地域における復旧事業への活用を推奨し,採取全量の使用が実現した.また,地域性種苗の使用・流通の拡大に寄与すると考えられる情報を整理して発信した.

第3 期提携助成 国際的プログラムに関する助成
  • 中静 透, 石田 清, 蒔田 明史, 石橋 史朗, 谷口 哲郎, 赤田 辰治, 神林 友広, 齋藤 宗勝, 松井 淳, 神 真波, 中山 隆 ...
    原稿種別: 国際的プログラムに関する助成
    2020 年 28 巻 p. 263-271
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    白神山地世界遺産核心地域に分布する典型的でかつ構造の異なる3つのタイプのブナ林について,動態と更新に関するモニタリングを1999年から行っている.調査は,研究者,地域市民ボランティアや学生ボランティアにより行われており2018年で20年目となる.2018年度は,これまでの調査の継続と共に,白神山地世界遺産指定25周年,およびモニタリング20週年を記念するシンポジウムを開催したほか,記念イベントなどを行い,世界遺産やモニタリングの意義を広報するとともに,あらたな参加者の獲得などの活動も行った.また,2018年は数年ぶりにブナの種子生産量が多く,場所によっては1平方メートルあたり数百個以上の種子が落下した.また,大きな台風により倒木が発生した.これらの結果は現在解析中であるが,今後の更新状況にも注意したい.

  • 林 幸大, 中沢 英正, 佐藤 信之, 村山 郁夫, 涌井 泰二
    原稿種別: 国際的プログラムに関する助成
    2020 年 28 巻 p. 272-284
    発行日: 2020/01/10
    公開日: 2020/01/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

    船津川は,津南町の中で源流から信濃川への合流を果たす短い川であるが,水生生物は多く生息しており,多様性を見せている.本研究では,地元の小学生と連携をし,船津川に生息しているカゲロウやカワゲラといった水生昆虫,イワナやスナヤツメなどの魚類から,船津川の水質を判定しつつ,化学分析においても水質調査を行った.ここで重要なことは,私たちだけで行ったのではなく,子ども達と連携をしたということである.これは地元へのふるさと教育と水育を同時に行っているのである.また,過去20年前に調査した結果と照らし合わせ,船津川がどのように変化したのか,あるいは変わっていないのか.捕獲出来た生物に変化が生じていたのかを同時に調査し,ヘビトンボなどがいないことが分かった.捕獲方法や水質の悪化ではないことが分かった.生物自身や生息場所を保護するためにも,町民との交流と台帳への記録は大切なことである.

2016-2018年度 緊急助成
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