自然保護助成基金助成成果報告書
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はじめに
目次
第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 特定テーマ助成
  • 福島 慶太郎, 井上 みずき, 山崎 理正, 阪口 翔太, 高柳 敦, 境 優, 中川 光, 平岡 真合乃, 吉岡 憲成, 池川 凛太郎, ...
    原稿種別: 第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 特定テーマ助成
    2020 年 29 巻 p. 1-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    西日本でも有数の生物多様性を誇る京都大学芦生研究林内のブナ・ミズナラ天然林では,2000年代に入りシカによる過剰採食が原因で急速に下層植生が衰退した.2006年に防鹿柵で囲んだ集水域,2017年に囲んだ集水域,防鹿柵を設置していない対照集水域の3集水域を対象に,植生・渓流水質・細粒土砂の調査を行い,集水域単位の防鹿柵設置の効果と実用性を検証した.スポット的な植物保全用の防鹿柵に比べ,集水域単位の大面積防鹿柵の設置は,植物保全だけでなく植物-土壌-渓流水一連の生態系全体を保全する上で非常に有効であることが示された.また,2017年柵設置集水域では,2006年柵設置集水域に比べて設置後の植生回復が遅く,生態系機能への影響が長期間継続する可能性が考えられた.2017年柵集水域で回復が遅かった理由として,採食圧の継続によりシードバンクが劣化していたことの他に,シカの侵入を一時的に許してしまったことが挙げられる.柵の経年劣化や,クマの侵入・台風による倒木等で柵が破損することでシカが侵入することを防ぐため,ネットの交換,定期的な柵の見回りや補修を複数の人員が交代して行う体制を整備することができ,集水域スケールの防鹿柵の長期的な維持管理方法を見出すことができた.

  • 前迫 ゆり, 幸田 良介, 比嘉 基紀, 松村 俊和, 津田 智, 西脇 亜也, 川西 基博, 吉川 正人, 若松 伸彦, 冨士田 裕子, ...
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 14-26
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    2017から2019年に実施されたシカと植生に関するアンケート調査でN=962の回答が得られた.北は北海道知床半島から,南は鹿児島県屋久島まで,また,植生的には海岸植生から高山植生まで,森林から湿地,ササ草原など,日本の代表的植生から多くの調査データが集約された.その結果,2008-2009調査に比して,シカの植生に対する影響が進行していることが示唆された.5kmメッシュの区画数による影響度評価(N=669:5kmメッシュ)は,シカによる植生への影響が「激甚」7.0%,「強」21.1%,「中」16.7%,「軽」16.0%,「なし」39.2%であった.一方,2009調査ではそれぞれ6.5%,13.7%,11.6%,15.9%,52.3%であったことから,「強」と「中」の比率が増加傾向を示した.さらに,かつてシカのインパクトは太平洋側に集中していたが,2019調査では,より内陸部側や日本海に近い地域でもシカによる影響が報告され,シカによるインパクトの変化と林床植生における多様性の劣化傾向が顕著に示された.

    本研究は,シカによる植生への影響およびその保全を考えるうえにおいて,重要なマイルストーンとしての役割を果たした.

  • 小山 明日香, 内田 圭, 中濵 直之, 岩崎 貴也, 尾関 雅章, 須賀 丈
    原稿種別: 第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 特定テーマ助成
    2020 年 29 巻 p. 27-35
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    霧ヶ峰高原は多くの絶滅危惧動植物の生息地であり,国内有数の観光地でもある.しかし近年ニホンジカによるニッコウキスゲの被食被害が深刻化し,対策として複数の防鹿柵が設置されている.本研究では,亜高山帯半自然草原での防鹿柵設置による生物多様性保全効果を検証することを目的に,植物・昆虫調査およびドローン画像解析を行った.結果,植物の開花種数,開花数および絶滅危惧種の開花種数はいずれも柵内で柵外より多く,チョウおよびマルハナバチの種数・個体数も柵内で柵外より多かった.また,ドローン空撮画像をもとに防鹿柵内外のニッコウキスゲの花数を計測し,防鹿柵による保全効果をより広域で視覚化した.本成果は,防鹿柵の設置が観光資源植物および絶滅危惧動植物を保全するうえで不可欠であることを示している.

  • 冨士田 裕子, 明石 信廣, 小林 春毅
    原稿種別: 第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 特定テーマ助成
    2020 年 29 巻 p. 36-51
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    エゾシカによる農林業被害は深刻で,影響は自然林や草原,湿原にまで及ぶ.各行政機関はエゾシカの生息状況や植生への影響について個々に調査を行い,膨大な調査データを所有するが,これらのデータを横断的に用いて影響評価を行うことはほとんどなかった.本研究は,全道レベル及びサロベツ湿原とその周辺を対象に,複数の行政機関が収集したデータの再解析と現地調査により,現状把握と保全策等を提案することを目的とした.

    全道レベルでは,北海道森林管理局の「エゾシカの立木食害等が天然更新等に与える影響調査」データの解析から,エゾシカの個体数変動の地域パターンと林床植物の嗜好性との間に関係性を見出した.また,稚樹の採食痕の有無データから,エゾシカの高密度状態が続く地域で稚樹密度が低いこと,樹種嗜好性は地域間で概ね一致するが嗜好性の高い種には地域差が存在することを示した.

    サロベツ湿原では,環境省のGPS首輪データから,湿原周辺部を夏期に利用する個体群が存在することが明らかになった.湿原内に設置した自動撮影カメラやシカ柵を用いた植生調査・食痕調査から,夏期に湿原周辺に留まる個体群の採食や休息は認められるが,植生への影響は現在のところ小さかった.これらの個体群の駆除を提案するとともにモニタリングの継続が望まれる.

  • 江成 広斗, 江成 はるか, 加藤 亜沙美
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 52-60
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    豪雪地を含む東北地方に分布を拡大させるニホンジカ(Cervus nippon;以下,シカ)の予防的対応が急がれている.そこで,従来技術では検知が困難な侵入初期段階の低密度シカ個体群でも,個体検知可能な新手法としてボイストラップ法を考案し,その技術の高度化を目的とした評価試験を東日本各地で実施した.ボイストラップ法は,オスジカの鳴き返し行動を利用したAAM法(active acoustic monitoring)と,野外に設置したレコーダーを用いてオスジカの鳴声(howlとmoanの2種の咆哮)を録音し機械学習により検知するPAM法(passive acoustic monitoring)の2つからなる.AAM法は6調査地で7セット実施し,那須地域および朝日・飯豊山系にて鳴き返しを得ることに成功した.これは,当該地域にオスの定着個体がすでに分布していることを示唆する.PAM法は5調査地で7セット実施した結果,那須地域と朝日山系にてhowlの鳴声を検知した.これらの調査地は,既往のモニタリング手法では検知が困難なシカ低密度地域であることを考えると,ボイストラップ法の検知力の高さが本研究を通して明らかにされた.

  • 石田 朗, 釜田 淳志, 江口 則和, 加藤 顕, 高橋 啓
    原稿種別: 第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 特定テーマ助成
    2020 年 29 巻 p. 61-71
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    愛知県奥三河地域でもニホンジカ(以下,シカ)の増加に伴い,農林業被害だけでなく希少種の減少など植生への影響が懸念されている.筆者らは先行研究でシカがどこで捕獲しやすいかという「シカ出現予測モデル」を開発した.現在運用中の予測モデルは主にGPS首輪データから構築したが,適用範囲がGPS首輪データのある地域に限られる点,予想単位が250mメッシュと広範囲な点が問題であった.そこで,今回新たに地域住民や行政職員等から寄せられたシカ目撃情報と無人航空機による航空写真情報を組み込むことを検討した.その結果,シカ目撃情報を加えることでモデルの改善効果が認められた.また,250mメッシュ内のどこでシカが滞在する確率が高いか明らかにするため,GPS首輪データでシカの滞在頻度の異なる地点で,地上レーザースキャナを用いた立地環境調査をした.その結果,立木密度が低く下層植生の豊富な場所でシカ滞在確率の高いことが示された.

    本成果は公開中のシカ出現予測アプリ「やるシカない!」に組み込むことで,行政・研究者・地域住民等から引き続き情報収集を行いながら更新を続け,被害対策につなげていきたい.

第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
  • 東 幹夫, 佐藤 慎一, 深沢 南己, 松尾 匡敏, 佐藤 正典, 市川 敏弘
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 72-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,将来的に必要不可欠な諫早湾の常時開門を見据えて,現時点における有明海奥部海域の底生動物群集の詳細を明らかにするとともに,それらのデータを常時開門後に実施される生態系影響解析への比較対象とすることを主な目的としている.今年度の採泥調査は,有明海奥部は2019年6月8日と9日の2日間で,諫早湾干拓調整池内は2019年6月10日に実施した.さらに,前年度2018年6月に有明海奥部50定点で採集した生物試料のソーティング作業を完成させ,過去22年分の同一定点における同一手法によるデータと比較することで,潮止め後21年間の有明海奥部における海底環境と底生動物群集の変化を明らかにした.

  • 高木 昌興, 澤田 明
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 83-93
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,絶滅が危惧される南大東島におけるダイトウコノハズクOtus elegans interpositus個体群の絶滅リスクを分散させ,北大東島に亜種ダイトウコノハズク個体群を再成立させるための基礎情報を得ることを目的とする.北大東島には,現在,ダイトウコノハズクが生息していないことをプレイバック実験により確認した.南大東島において,狭い区域になわばりが高密度で集中する区域,樹林地に依存しない区域,営巣が不可能だった場所を巣箱により営巣を可能にした区域の特注を解析した.その情報と航空写真,北大東島の現地踏査により,北大東島において潜在的に繁殖可能な区域を定性的に抽出し,繁殖可能なつがい数を推定した.個体群の存続に重要な冬季の餌量を北大東島と南大東島で比較した.その結果,北大東島には49つがいが生息できる可能性があり,主要な餌となるワモンゴキブリ類とアシダカグモ類の生息数は島間で異ならず,冬季にも個体群を消滅させることなく生息し続けることが可能と判断された.

  • 樋口 広芳, 長谷川 雅美, 上條 隆志, 岩崎 由美, 菊池 健, 森 由香, 亀田 勇一, 伊藤 晴康
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 94-102
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    八丈小島は外来種であるイタチや野ネコがいない島として,典型的な伊豆諸島の食物連鎖系が残された唯一の島である.しかし昭和44年全島民が離島の際に残されたノヤギが増加し植生被害が顕在化したため,本研究会がノヤギの駆除を提言し,東京都と八丈町が2001年-2007年に計1137頭のノヤギを駆除した.その後,植生は回復していったが,駆除後の生態学的調査は行われてなかった.そこで,この貴重な八丈小島を保全し活用に資するために2018年より調査を実施し,2019年には陸産貝類,昆虫類を追加して実施した.

    植物においては,希少種であるハチジョウツレサギ,カキラン,オオシマシュスランが駆除後はじめて確認され,爬虫類では準固有種であるオカダトカゲが他の島と比較してより高密度で生息していることが確認され,形態や行動に他の伊豆諸島と異なる特徴が見られた.鳥類では2013年には準絶滅危惧種のクロアシアホウドリが飛来し,2016年-2017年には2個体,2017-2018年には7個体,2018年-2019年26個体が巣立ち,同種の繁殖北限地の繁殖成功率も向上した.イイジマムシクイやアカコッコ,ウチヤマセンニュウなどの希少種が観察されたほか,準絶滅危惧種のカラスバトも高密度で生息していることが確認され,本島が伊豆諸島において貴重な生態系を有することが示唆された.陸産貝類と昆虫類については,調査を始めたばかりであり十分な結果は得られていないが,陸産貝類では,外来種の多い八丈本島に比べ在来種が多いことが確認された.

    以上のように,八丈小島が伊豆諸島において貴重な生態系を有することが示唆されたと同時に,今後の継続的なモニタリングの必要性が示唆された.

  • 南 正人, 竹下 毅, 近清 弘晃, 須田 千鶴, 井上 孝大, 岸元 良輔
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 103-117
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ニホンジカ(Cervus nippon)捕獲用のくくり罠でニホンカモシカ(Capricornis crispus)が錯誤捕獲されており,その影響を調べた.長野県小諸市は2016年から錯誤捕獲されたカモシカに耳標を装着して記録をしている.千曲川南側の丘陵地帯に2017年からセンサーカメラを設置し,耳標のついたカモシカの負傷状態と生存を確認した.2016年から2019年まで,錯誤捕獲数は減少していなかった.同一個体が平均で2.8回,最大で14回錯誤捕獲されていた.負傷状態を確認できた24個体の半数に負傷経験があり,その内9個体に四肢の一部の欠損が見られた.少なく見積もっても,錯誤捕獲個体全体の約30%に負傷経験があった.捕獲回数が増えると負傷の程度が酷くなったが,傾向は顕著ではなかった.負傷を酷くする他の要因があると思われる.負傷個体と負傷していない個体で,生存率に差がなかった.中長期的なモニタリングが必要である.

  • 鈴木 紀之, 洲合 隼輝, 小林 皆登
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 118-125
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ナミテントウは日本国内では北海道から九州にかけて分布しているが,近年になって沖縄本島と石垣島から国内外来種として記録された.南西諸島には近縁種のクリサキテントウが分布しているため,侵入先で競争関係が生じ,在来の群集に影響が出ると懸念される.そこで本研究では,南西諸島におけるフィールドワークにてクリサキテントウの生息環境を調べるとともに,ナミテントウの侵入の程度を調べた.また,形態によって区別できない個体について,遺伝子解析による同定を試みた.南西諸島のクリサキテントウは,本州の個体群と異なり,ガジュマルなどさまざまなニッチを利用していることが明らかになった.また,保管されているサンプルの遺伝子解析をしたところ,ナミテントウの石垣島への侵入が遅くとも2015年までさかのぼることが明らかになった.今後は,さらに安価かつ簡便に種を判別できる遺伝的手法を解析し,ナミテントウの侵入を高い精度で把握していく必要がある.

  • 川西 基博, 相場 慎一郎, 藤田 志歩, 鈴木 真理子, 鵣川 信, 宮本 旬子
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 126-139
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    世界自然遺産候補地の奄美大島と徳之島の原生的照葉樹林において森林調査区を設定し,動植物のモニタリング体制の構築を進めている.本報告では,奄美大島の3標高点(標高200,400,600m)の原生的な照葉樹林を構成する樹木と,林床植生を構成する植物群についての結果を報告する.DBH4.8cm以上の樹木は標高200m調査区で2728本52種,400mで2652本64種,600mで3813本53種が確認された.種ごとの大径木の分布パターンから400m調査区の方が,その他の調査区より発達した遷移段階にあることが示唆された.標高200m調査区における低木層の植被率は微地形によって大きく変化し,尾根(約72%),斜面(約68%),谷(約54%)であった.一方,草本層の植被率は逆のパターンを示し谷,斜面,尾根の順に大きかった.出現種はシダ植物が39種,草本植物が12種,低木が27種,高木が26種,つる植物13種であった.シダ植物と草本植物の出現種数は谷がもっとも大きく,斜面から尾根に移るにしたがって種数が小さくなる傾向が認められた.一方,低木種と木本種は斜面で最も出現種数が多く,谷と尾根では比較的少ないことが分かった.

  • 池田 敬, 生島 詩織, 國永 尚稔, 岡本 卓也, 淺野 玄, 鈴木 正嗣
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 140-149
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
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    岐阜県ではカモシカの被害対策として個体数調整が行われる一方で,罠による錯誤捕獲も頻発している.カモシカの地域個体群を保護する上では,最小限の捕獲計画や錯誤捕獲の回避が必要である.そこで本研究は,被害実態の解明,誘引餌による錯誤捕獲の回避法を検討することを目的とした.

    捕獲後,被害地におけるカモシカ再出没までの期間は最長で3か月であり,シカも被害地に出没していた.また,カモシカの出没頻度は,ヒノキ新芽萌出時期以降に増加する傾向が認められた.さらに,カモシカは誘引地点にあまり出没せず,シカやイノシシ,タヌキが誘引地点を夜間に集中的に利用していた.

    以上の結果,被害が捕獲後も継続する理由として,被害の集中発生時期まで捕獲効果が十分に持続していない点,シカによる食害も存在する点が考えられた.また,誘引餌を獣道以外に設置し,他種を誘引することで,カモシカの錯誤捕獲を回避できる可能性がある.

  • 吉田 誠, 馬渕 浩司, 佐藤 克文
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 150-161
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年琵琶湖では,在来生態系への影響が懸念される外来魚アメリカナマズの捕獲が相次いでいる.しかし,琵琶湖全体での分布の現状は不明で,未報告の捕獲情報もあると推察された.本研究では,本種の過去から現在までの動向を明らかにするため,研究・教育機関をはじめ,釣り人など一般市民の方にも広く情報提供を呼びかけ,琵琶湖における本種の捕獲状況を整理した.また,琵琶湖を含む淀川水系内での本種の分布拡大を予測するため,室内実験により本種の活動可能な水温帯を計測した.

    提供された情報を集計した結果,過去19年間に計314個体の捕獲が確認された.捕獲地点の大半は,琵琶湖流出部の瀬田川洗堰周辺に集中していたが,一部個体は京都府内の宇治川および木津川,大阪府内の淀川,奈良県内の布目川で捕獲されており,本種が水系内の下流側へ分布を広げつつあると考えられた.琵琶湖北湖では目撃・捕獲例は直近5年で3件と少なかったものの,室内実験で本種が夏季に水温40℃近くでも活動可能と判明し,夏の高水温化が進行しつつある琵琶湖でも,本種の分布拡大に注意が必要である.

  • 今村 彰生, 速水 花奈, 坂田 雅之, 源 利文
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 162-172
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,環境DNAによりニジマスOncorhynchus mykissの分散ポテンシャルをマップ化し,さらに環境DNAメタバーコーディングにより在来魚群集の生息状況をマップ化することを目的とした.その上で,在来魚群集にとって好適な水系や生息地を抽出し,ニジマスの分散から受けるリスクの大小を視覚化した「ハザードマップ」を作成し,在来魚群集の保全への具体的な指針の提示を目指した.調査地はPNF27期助成での調査地の3地点と29期に合わせて追加した地点の計16地点とした.2018年10月—2019年8月にかけて1ヶ月に1回の環境水の採集を計11回実施しMiFish法によるメタバーコーディングを実施した.その結果,サケ科やコイ科を含め12科36群の魚類を検出した.地点ごとの種数の範囲は12–23種で,フクドジョウBarbatula barbatula,ドジョウMisgurnus anguillicaudatus,ハナカジカCottus nozawaeが全地点で検出され,外来サケ科のニジマスは16地点で検出された.国内外来種であるナマズも2地点で検出された.全体として,ニジマスを除くと在来種の比率は高かった.重点を置いているサケ科については,ヤマメ(またはサクラマス)Oncorhynchus masou sspp.の検出地点が15,アメマス(広義イワナ)Salvelinus leucomaenis sspp.が12,オショロコマSalvelinus malma sspp.が11,サケ(シロザケ)Oncorhynchus ketaが11と,在来サケ科は全地点で検出された.立地条件を加味して調査地点ごとに整理すると,石狩川中流域(旭川市内)でも検出種数は多く,なかでも旭川市の中心の調査地点旭橋では最大の23種が検出された.また,鱒取川やピウケナイ川という石狩川への流入河川と忠別川の調査地点で検出種数が多い傾向が見られたが,石狩川の支流でもオサラッペやノカナンでは検出種数が少なかった.また,忠別ダムの周囲は上流側下流側を問わず,全体として検出種数が少なかった.以上から,忠別ダムの周辺での淡水魚相が劣化傾向にある一方で,忠別川下流および忠別川と石狩川との合流点より下流において淡水魚相が豊かである傾向が示された.ニジマスとの排他的な関係については計画当初の予測に反して検出できず,今後の検討課題である.

  • 武石 全慈, WHITWORTH Darrell, PARKER Michael, 大槻 都子
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 173-186
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    カンムリウミスズメはIUCNレッドリストでVulnerable,環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に掲載され,また国の天然記念物に指定され保全努力が要請されている.徳島県牟岐町では2018年の我々の調査で,2島で抱卵個体が認められ新繁殖地であることが確認された.2019年の調査では抱卵個体が3島で,死骸が1島で確認され,これら4島が繁殖地又は繁殖推定地とみなされた.周辺海上でのスポットライトサーベイでは,2018年に965羽,2019年に656羽がカウントされた.集合範囲,密度,繁殖・非繁殖個体比率等を考慮しつつ繁殖個体群規模について検討した.抱卵個体が確認された1島では,2018年にネズミ類による捕食が疑われる死骸が発見され,小型哺乳類と考えられる糞も認められた.そこで,噛み痕トラップや自動撮影カメラによってネズミ類の存在確認を試みたが,確認には至らなかった.一方,地表には,抱卵期初期にもかかわらず卵殻が多数散在することから,営巣中の巣穴に向けて自動撮影カメラを設置したところ,カラス類による卵の捕食が確認された.カラス類の本種繁殖に及ぼす影響についても検討した.

  • 杉田 典正, 松井 晋, 西海 功
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 187-198
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
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    日本ではウミスズメは北海道天売島の海食崖でのみ少数が繁殖する.緊急の保全策が必要にも拘わらず,保護増殖事業は未だ策定されていない.ウミスズメの野外調査が困難なため,保全管理に必要な生態・遺伝情報を得ることができなかったためである.しかし,2016年に営巣地付近で30羽のウミスズメの血液が採取され,天売島繁殖個体群の遺伝的特性の推定が可能になった.ミトコンドリアDNA分析では,天売島個体群とアリューシャン列島個体群は共通のハプロタイプをもっていたが,他の繁殖個体群とはハプロタイプを共有していなかった.この結果は,両個体群は異なる単位で保全管理される必要があることを示している.天売島個体群は,アリューシャン列島個体群と遺伝子流動は活発であり,遺伝的多様性が低いことを示す証拠は無かった.私たちは,天売島個体群の効果的な保全のために,営巣地の保全による管理を提案する.日本近海はウミスズメの越冬場所として重要な海域であり,より広域的な保全管理が必要だろう.

  • 伊藤 彩乃, 庄司 顕則, 糟谷 大河, 山下 由美, 遊川 知久
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 199-211
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    オオウメガサソウは部分的菌従属栄養植物であり,発芽時の栄養供給に菌の関与が必要と考えられる.本種は北半球に分布し,日本では北海道,青森,岩手,茨城県にみられる.分布の南限地,茨城県ひたちなか市では個体数が激減し,絶滅の危機にある.

    南限地での発芽条件を明らかにするため,2018年秋採集の種子を包んだパケットを様々な環境に埋め,5ヶ月後と10ヶ月後に回収し,発芽の有無を観察した.その結果,胚が膨張し種皮を破る発芽初期の状態の種子が確認されたが,発芽時に関与する菌や発芽に適した環境条件の特定のためには,今後も調査を継続していく必要がある.

    また,南限地と北方(北海道・青森県)の個体群の繁殖状況を比較するため,2019年7~8月に更新状況調査を行った.この結果,いずれも実生による更新は確認できなかったが,北方の生育地のほうが,個体の生育密度・開花数・ポリネーターが多く,種子繁殖の可能性が高かった.南限地ではポリネーターの不足を補う人工授粉が効果的だと考えられる.さらに,次世代シーケンサーを用いて遺伝的集団構造の解析を行った結果,南限地の個体群は遺伝的にほとんど均一で,北方に比べて遺伝的多様性が低いことから,早急に保全策を講じる必要がある.

  • 伊藤 健彦, 岡田 あゆみ, 樋口 尚子, 南 正人
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 212-222
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
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    ニホンジカ個体数が区画踏査法により調査されてきた宮城県金華山島で,小型無人航空機(UAV,ドローン)による島全体のシカ個体数観測手法を検討し,踏査法とのシカ発見頭数を比較した.島を10飛行区画に分割することで全島観測が可能なことを2019年3月に確認し,同年4月のドローン搭載熱赤外カメラによる夜間観測では,島全体で429頭のシカを検出した.同年3月の踏査実施区画(島面積の71.6%)に限ると,シカ発見頭数は踏査で380頭,ドローン観測で377頭だった.島の17.6%を占める常緑樹林におけるシカ発見頭数は,踏査がドローン観測の1.3倍であり,ドローン観測における常緑樹林内の頭数補正の必要性が示唆された.しかし,両調査で総数がほとんど変わらなかったことから,落葉樹林や草原の割合が大きい金華山島では,踏査と同等以上の精度でのドローン観測が可能であることが示された.

  • 森 貴久, 田尻 浩伸, 手嶋 洋子, 山本 誉士
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 223-230
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
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    本研究では,繁殖期のカンムリウミスズメの利用海域を調べる目的で,伊豆下田沖の神子元島で繁殖するカンムリウミスズメを対象にバイオロギングによる行動調査を行い,3羽からGPSロガーで記録した15時間から41時間の位置記録を得た.結果は,ロガー装着後には3羽とも神子元島の北西0.6km付近に移動し,そこから潮流に流されるように島の南側を経由して島の南東2-6km付近に移動した.採餌域は島の北東4-6km付近で,その海域は,水深20mくらいから急に100m前後まで落ち込む急な陸棚斜面だった.これは最初に移動した島の北西の海域の特徴とも一致した.また,島付近の船舶交通量の多い海域と重複していた.飛行高度は40m未満が多かったが,40-120mの範囲で飛行する場合もあった.陸棚急斜面の海域は好漁場であり,本種にとっての重要な利用海域が漁業者と競合する可能性が示された.また,飛行高度からは,洋上風力発電との衝突リスクが生じる可能性が示された.

  • プレブル ジェイソン, ヴィンセノ クリスティアン, 大手 信人
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 231-237
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目標はリュウキュウテングコウモリとヤンバルホオヒゲコウモリの生態を解明して,保護計画につなげることである.そのため,1.VHF追跡調査によってねぐらに重要な生息地を確かめる,2.自動録音装置を利用して,国頭村における分布を解明する,3.遺伝子メタバーコーディング法を用いて各種の食性を確認することとした.2年間でリュウキュウテングコウモリ67頭,ヤンバルホオヒゲコウモリ18頭を捕獲し,それぞれ17頭,6頭を追跡できた.リュウキュウテングコウモリは様々な植物,主に下層植物の枯葉,をねぐらとして利用した.ヤンバルホオヒゲコウモリは川沿いの樹洞をねぐらとして強く好むようである.自動録音装置調査からリュウキュウテングコウモリは森林内に広く分布しており,ヤンバルホオヒゲコウモリはより珍しいため森林内の川沿いでしか確認できなかった.ヤンバルホオヒゲコウモリ生息地要件の解明には更なる研究が必要である.糞解析は全て終えていないが,現時点で,やんばるに生息する小型コウモリ4種は多様な節足動物を採餌することが解っている.今後は,「リュウキュウテングコウモリは植物や地面の上の節足動物を採餌し,ヤンバルホオヒゲコウモリは川上に飛んでいる昆虫を採餌している」という仮説を検証する.重要な生息地である高齢林や川沿いの森林を保全し,下層植物の除去を避けて,出産・哺育期(特に4~7月)の伐採は避けるべきであると考えられる.

  • 戸部 有紗, 中西 希, 佐藤 行人, 和智 仲是, 伊澤 雅子
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 238-248
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,琉球諸島南西部西表島の生態系全体の維持,保全を効率的に行うことを目指して,西表島の頂点捕食者でありアンブレラ種である,絶滅危惧種イリオモテヤマネコとカンムリワシの餌資源の観点から2種の生息環境の保全を効果的に行うための基礎資料を蓄積することを目的とした.近年開発され,野外動物に適用され始めた食性解析法であるDNAバーコーディングを用いることで,両種の食性を詳細に解析した.冬季,夏季に2種の糞を採集し,糞中のDNA解析によって餌動物種を同定した.その結果,それぞれの食性についての先行研究に比べ,多数の餌動物を種まで特定することができ,本手法の有効性が確認された.両種とも多種多様な餌動物を利用し,特にカエル類,トカゲ属,クマネズミ,鳥類,ベンケイガニ,トビズムカデの重要度が高いことが分かった.今後,2種の保全を目指し,これらの餌動物の多様性や生息個体数,生物量を維持していく必要がある.

  • 曲渕 詩織, 黒沢 高秀, 山ノ内 崇志
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 249-261
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    東日本大震災の津波と地盤沈下により仙台湾沿岸の海岸林の多くは壊滅的な被害を受け,現在,復旧事業として盛土とクロマツの造林が行われている.一方,復旧事業の範囲外にある海岸林跡地にはクロマツの実生が自然更新し始めた場所もある.このような海岸林の植生を把握するために,本研究では仙台湾沿岸の自然更新地4カ所と比較対象として造林地4カ所の植生を調査した.種の在不在を用いたNMDSによる解析では,自然更新地と造林地はそれぞれでまとまり混在しなかった.このことは両地点の種組成が異なることを示す.自然更新地の構成種には高木,低木および海岸生植物の種類数が多く,造林地に比べ種組成の違いが相対的に大きかった.このような差異の原因として,攪乱からの経過年数の違いのほか,盛土を伴う造林地では種子の供給が乏しく,また均一化されていることが考えられた.このことは,自然更新地が海岸林生態系の種多様性の保全の上で重要であることを示唆すると考えられた.

  • 菊地 友則, 篠田 莉奈, 坂巻 彩花, 小澤 ななみ, 小嶋 珠緒, 浪川 有紗
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 262-270
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ヤドカリ類は生命維持に不可欠な貝殻を巻貝群集からの偶発的な供給に依存している.そのため,ヤドカリ類の保全には,巻貝群集動態の知見が重要となる.オカヤドカリ類が多数生息する小笠原諸島父島には,繰り返し外来種が侵入し,オカヤドカリ類が利用する貝殻の供給源である陸産貝類群集が長い間撹乱され続けてきた.そこで,貝殻供給源である陸産貝類群集の撹乱がムラサキオカヤドカリ個体群に及ぼす影響を調査するために,父島と外来種による撹乱が少ない沖縄本島北部個体群の比較をおこなった.沖縄個体群に比べて,父島のムラサキオカヤドカリ個体群では陸産のアフリカマイマイの貝殻利用が多く,体サイズが大型化していた.また,父島では利用可能な貝殻資源が生息地内にほとんど発見できなかった.このことから,父島のムラサキオカヤドカリ個体群はアフリカマイマイ由来の貝殻を主に利用していること,一方で生息地内において利用可能なアフリカマイマイの貝殻が発見できなかったことから,貝殻供給は現在ほとんどないことが推測された.他の研究が指摘しているように,アフリカマイマイに限らず他の陸産貝類の個体数も減少していることから,利用可能な貝殻資源の安定供給が困難な状況になってきており,将来的にムラサキオカヤドカリ個体群の維持が困難になる可能性がある.

  • 中園 和憲, 炭山 大輔, 三谷 奈保
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 271-280
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    トカラ列島では口之島を含む6つの島にイタチが移入された記録がある.テンを移入した記録はないが,近年,口之島でイタチではなくテンの分布が確認された.島嶼に持ち込まれたイタチによる生態系への影響に関する研究は多数の報告があるのに対し,テンの影響に関する研究は多くない.本研究の目的は,口之島のテンの食性および島内の分布域を調べ在来種への影響を推測すること,また,イタチの分布の有無を明らかにすることである.

    自動撮影および糞DNA解析でテンのみが確認されたことから,イタチの生息密度はテンに比べて著しく低い,または分布していないと考えられる.調査ルートの全域でイタチ科の糞が発見されたが,上述のことから,全ての糞がテンである可能性が高い.距離当たりの糞の発見数は15個/kmで,他地域のテンに比べて多かったため,島のテンの生息密度は比較的高いことが推測される.食性分析の結果,固有種の捕食として,トカラノコギリクワガタと,種は未同定であるがトカゲ類が確認された.

  • 西原 寿明, 坪田 幸徳
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 281-294
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    イシヅチザクラは,四国固有のサクラで,愛媛県,高知県において絶滅危惧種に指定されており,温暖化などにより生育域の縮小が懸念されている.厳しい山岳地帯の限られた範囲で生育する本種の保全に向けた基礎的な知見を蓄積するため,分布域,集団サイズ,遺伝的多様性,集団分化について調査研究を行った.

    水平分布では,石鎚山系岩黒山が南限で,赤石山系エビラ山が東北限であることが判明した.垂直分布は集団によって異なり,最も低標高であった赤石山集団では,1,400~1,700mであった.各集団のサイズは,50~1,000個体と推定した.植生では,標高や地質に応じた種が出現し,主に岩礫地のシラベ林の林縁やギャップにナナカマド,ミネカエデ類等と低木林を形成していた.SSRマーカー12座による遺伝的多様性は,タカネザクラの南限集団と同等もしくは高かった.全体のG′STは0.100(ヤマザクラ0.050)で,集団間の遺伝構造の違いにより5集団に分化し,うち3集団で過去にボトルネックを経験していることが推定された.赤石集団では,低標高域で生育する個体にヤマザクラとの交雑がみられた.

第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内活動助成
第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内活動助成
第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内活動助成 地域NPO枠
第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 海外助成
  • MATSUDA GOODWIN Reiko, GONEDELE BI Sery Ernst, BAXT Alec, BITTY E. And ...
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 海外助成
    2020 年 29 巻 p. 343-358
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    コートジボワール北東の角にあるコモエ国立公園でフィールド調査を行った.この調査の主な目的は,モモジロコロブス(Colobus vellerosus)とノドジロマンガベイ(Cercocebus lunulatus)の相乗的保全行動を実施する優先場所を見つけることであった.両種共,種の分布範囲全体において絶滅に瀕している.公園内で3ヶ所の調査地を選択し10のトランセクトを設け各トランセクト上に樹冠自動操作カメラを設置した.また,森林(154km)でのライントランセクトサンプリング法を使用した歩行調査と,他の様々な生息地タイプを通過するレコネサンスサーヴェイ(21km)を実施した.樹冠自動操作カメラで,モモジロコロブスを含む4種を除くすべての霊長類の画像を取得した.歩行調査(両データを集め)の結果では,ノドジロマンガベイとモモジロコロブスの平均視覚遭遇率(グループ/km)はそれぞれ0.22と0.07であり,マンガベイはある程度の個体数が存在し,少なくとも,いくつかのモモジロコロブスのグループが生息していることを確認した.予期せぬことに,歩行調査中にヒヒとマンガベイの雑種のような個体が観察された.しかしながらオリーブコロブスが観察されなかった事は懸念事項である.霊長類の種の相乗保全のための公園内の優先場をしっかり見極めるために,これからもさらに調査を続けたい.(日本人メンバー:松田グッドウィン禮子 訳)

  • カンドゥ ペマ, ゲール ジョージ A., ブンルングリ サラ
    原稿種別: 第29期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 海外助成
    2020 年 29 巻 p. 359-372
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    シロハラサギ(WBH)は,その基本的な生態も種の理解もあまりされないままに,絶滅の危機に瀕している.この研究の目的は,シロハラサギの残された最大の個体群の1つが生息していると思われるブータンの2つの河川流域におけるシロハラサギの採餌時の微小環境の選択性,採餌行動,およびその食性(餌の嗜好性)を分析することであった.河川の瀬と淵は,採餌行動観察で,80事例と62事例が得られ,最も一般的に使用される微小環境であった.シロハラサギは魚の3つの属(GaraSalmo,およびSchizothorax)を主に摂食し,その中でSchizothorax(64%)がもっとも優占される属であった.本研究は,既存の知識の不足部分を埋め,川という生息地のさらなる保全とシロハラサギの種の長期の保全のために必要な餌資源の増殖のために,効果的な政策と管理を支える証拠を提供することになる.

第4期協力型助成 学協会助成
  • 中島 敦司, 今西 純一, 入山 義久, 内田 泰三, 小野 幸菜, 橘 隆一, 田中 淳, 津田 その子, 中村 華子
    原稿種別: 国内研究助成
    2020 年 29 巻 p. 373-384
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー

    熊本地震および豪雨による崩壊の復旧に取り組みつつ,ススキ等野草地の構成種による地域性種苗の活用,流通拡大を目指している.生態系に配慮した復旧事業の推進,地域性植物の活用には地域の生産力,社会全体における価値観の共有化も欠かせない.本活動では多様な主体と協力しながら,生物や生態系の多様性の保持,伝統的な視点を大切にした持続的な地域管理,地産資材の活用による地域の活性化などに取り組んでいる.2019年は阿蘇市波野地区で草原の観察会,花暦の作成等による普及活動,草原の短草型化およびススキ株の小型化を目指した刈り払い作業,ススキの種子採取などの現地活動を地域の方と協力して実施した.採取したススキの種子は,阿蘇地域における事業への活用を推奨し使用を進めている.阿蘇くじゅう国立公園を中心として,地域性種苗の使用・流通の拡大に寄与すると考えられる情報を整理して発信した.

第4期協力型助成 国際的プログラムに関する助成
2019年度 緊急助成
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