日本古生物学會報告・紀事
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22. 陸前石巻附近現生貝類の地質學的考察
野村 七平畑井 小虎
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1936 年 1936 巻 5 号 p. 109-114_1

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抄録

宮城縣石巻渡波間の海岸に沿うて波浪に打ち上げられた貝殻の採集結果の概報をする。或物の個體數は極めて多量ではあるが種類は多くない。分布的に見て面白さうなものもあるが, 筆者等の述べたいことは採集中に氣づいた地質的方面のことである。石巻渡波間は所謂白砂青松の海岸で北上川口と萬石浦の出口に岩石の露出がある。北上川口を去る凡そ300米の地點の砂濱に岩石に附着して生活する貝, 陸産, 淡水産の貝が, 砂中生活を營むものと一緒に發見せられる一事は極めて興味深く感じた。陸産, 淡水産の貝の存在は砂丘を越へて海岸に來たと考へるより, 北上川によつて一旦海に出でそれから潮流で濱邊に打ちあげられたと考へた方が合理的であるし, 岩石上に棲息するものは多分北上川口附近から風と浪の力で轉々採集地點に運搬されたものと考へたい。生物によつては死ぬ場所も生きる場所も, 死んで埋もれる場所も同じなものもあるが, 或物によつては大に異るものがある。之等の事實より推論して化石を含む地層の沈澱相を從來より深く考へ見たい。

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