1938 年 1938 巻 11-12 号 p. 35-39
伊吹山及びその附近は地質構造上興味ある地域として古くは小藤博士, 中村教授, 近くは竹山學士により貴重なる研究が發表されてゐる。又小澤, 小林兩博士も西南日本地帯構造上注目すべき地域なる事を論及されてゐる。
著者は嘗て東北帝大地質古生物學教室卒業論文題目として赤坂町, 醒ケ井町を連ぬる線を略ヾ南限とし北は揖斐川流域に亙る地域の地質を矢部先生御指導の下に研究した。
本地域の地質構造は極めて錯雜してゐるが各所に石灰岩のlensを胚胎し, その石灰岩中の化石は層序決定の上に又構造の解釋の上に重要なる役割を演するものである。
産出する化石は有孔蟲類・珊瑚類・蘚蟲類・腕足類・腹足類等多岐に亙るも最も豊富に産出し, 且つ最も重要なるは勿論紡錘蟲類である。其等化石の詳細なる研究は未だその途中に在る故此處ではその主なるものを列擧し, 他地域との對比に役立てようと思ふ。