日本古生物学會報告・紀事 新編
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525. 四国, 登層の地質年代は中新世か, 鮮新世か
内尾 高保
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1967 年 1967 巻 67 号 p. 114-124

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抄録

唐の浜層群は従来下部鮮新統とされたが, 1953年に下より登・奈半利・穴内層にわけられ, 相互に傾斜不整合とされた。底棲有孔虫化石群により登層は最下部鮮新統, 穴内層は下部鮮新統とされ, 特に登層には印度洋のKar Nicobar島の中新統との共通種が多いと強調された。その後登層の浮游性有孔虫は詳細に定量され, ベネズエラのGloborotalia cultrata cultrata/Globigerina nepenthes帯および模式のTortonian階(イタリー)に対比された。筆者は登層typeの試料の底棲・浮游性有孔虫を研究すると共に, 高柳・斎藤の有孔虫分布表を再検討して次の結論に達した。(1)登・穴内層の底棲有孔虫群集の差は堆積環境によるもので, 地質年代の差によるものではない。Kar Nicobarの中新統と共通な種の数は登・穴内層ともに少い。(2)高柳・斎藤の記した浮游性有孔虫51種のうち, 中新世に限られるとされたものは6種で, それらの個体数は全浮游性有孔虫個体の約2.9%にすぎない。6種のうちでGlobigerina nepenthes, Sphaeroidinella seminulinaを除く他の4種は非常に稀であり, この2種の同定にも疑問がある。同定が正しいとしても, 最近の研究によると, それらの6種は太平洋・大西洋・Java・Jamaicaなどの鮮新統にも発見された。従って, 浮游性有孔虫からみても登層の地質年代は中新世に限る必要はなく, 鮮新世でもよい。(3)このように底棲・浮游性有孔虫・軟体動物化石を綜合的に考慮すれば, 登層の地質年代は鮮新世初期の可能性が最も大きい。野外調査の資料もこれを支持するようである。

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