平和研究
Online ISSN : 2436-1054
特別寄稿
3 「平和提言構想」と市民的防衛
麻生 多聞
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 62 巻 p. 161-166

詳細
抄録

部会4は、従来認められないとされてきた「反撃能力」(敵基地攻撃力)を憲法9条下での自衛力に含めるという重大な憲法解釈変更を含む2022年安保3文書改定を問題視し、かような軍拡姿勢へのオルタナティブとして「平和構想提言会議」による「平和構想提言」(2023年)の可能性を探究するものであった。青井未帆会員による「平和について憲法論にできること-安保3文書改定を経て」報告は、市民主体の平和構想をめぐり、論理の問題としてのみならず、いかにして安全保障という現実的な文脈への対応力を示すことができるかという視座の重要性を指摘するものであった。川崎哲会員「「抑止論神話」からの脱却」報告は、「軍事力のもつ弱点や危険性」をめぐる認識に基づき、「軍事力中心ではない形で戦争を防止し国際安全保障を向上させる道筋」の具体的内容として、朝鮮半島の平和・非核化、日中関係の安定化、核兵器の禁止と廃絶、信頼醸成と紛争予防のための市民外交等を挙げる。いずれも重要な内容だが、実際に侵攻を受けた場面を想定した「対応力」を持つものとは言えない。そこで筆者は非武装市民による抵抗に基づく非軍事的安全保障論としての市民的防衛論と「平和構想提言」の接続可能性をめぐる問題提起を行うとともに、ロシアの侵攻を受けるウクライナのKIISによる世論調査が市民的防衛の視点を多分に含むことにふれ、これに対するウクライナ市民の回答を参照した。

著者関連情報
© 2024 日本平和学会
前の記事 次の記事
feedback
Top