霊長類研究
Online ISSN : 1880-2117
Print ISSN : 0912-4047
ISSN-L : 0912-4047
短報
Direct Observations of Savanna Chimpanzees in the Ugalla Area, Tanzania: Characteristics of Their Party Size and Composition
YOSHIKAWA MidoriOGAWA Hideshi
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 35 巻 2 号 p. 87-92

詳細
抄録

タンザニアの乾燥疎開林地帯であるウガラ地域で1995年から2012年にチンパンジー(Pan troglodytes)の直接観察を行った。ウガラはチンパンジー分布の東端にあたり,最も乾燥して開けたチンパンジー生息地の1つである。チンパンジーは単位集団が離合集散してパーティーと呼ばれるサブグループ(以下,単に集団と呼ぶ)を形成するが,発見した52集団のうち59.6%は樹上,32.7%は地上にいた。また,59.6%は川辺林,38.5%は疎開林にいて,草地にはいなかった。彼らはアカンボウを除き平均3.1頭(最大10頭)という小さな集団を形成していた。集団の大きさの平均は乾季には3.6頭,雨季には2.0頭であり,ウガラのチンパンジーは,果実の少ない雨季には小さな食物パッチでの採食競合を避けるために小さな集団を作る一方で,樹木が落葉し樹冠が開いて疎開林がより危険になる乾季には比較的大きな集団を作っていた。オスが1頭のみでいる事は8回あったが,メスがそうしている事は1回しかなかった。複数のオスとメスからなる混合集団にはオスは1.4頭,メスは1.9頭含まれていた。育児中のメスが母子のみでいる集団も3回記録されたが,育児中のメスは肉食獣等に捕食される危険を減らすためにオスよりも多く混合集団に加わっていたと示唆された。発情メスを含む混合集団の大きさは5.7頭だったが,発情メスを含まない混合集団の大きさは4.0頭だった。また,オス1頭とメス1頭からなるコンソート集団は4回記録されたが,複数のオスだけからなる集団は記録されなかった。広大な行動域に非常に低い密度で暮らすため,縄張りをパトロールする必要が低い半面,発情メスとはぐれないようにする必要があるためかもしれない。ウガラのチンパンジーは採食,捕食回避,繁殖戦略に応じて集団の大きさと構成を変えて乾燥疎開林地帯に適応していたと考えられた。

著者関連情報
© 2019 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top