基礎心理学研究
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長走行時間分化強化と付随行動
山本 豊
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1982 年 1 巻 2 号 p. 91-100

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抄録

時間分化強化手続きを動物に適用すると,定型的な付随行動がしばしば観察される.本研究はこの付随行動の発生機序と機能の検討を目的とし,反応系列の分析に好適な直線走路の長走行時間分化強化(DRLR)手続きを用いた.付随行動の説明にあたっては,Skinnerの迷信行動の解釈と同様に,偶発強化により形成されるとする説明がまず可能である.また,Staddonの指摘する中間行動と類似の,定まった刺激布置の中で定型的に誘発される副産物的行動だとする説明も可能である.上記2仮説の検討のため,実験I,IIではDRLRを走路上の異なる部位に適用し,強化刺激呈示地点との位置関係を比較検討した.結果は1.走路の中央部位に長時間走行を要求してもラットの成績は下る一方であった.2.強化刺激呈示地点と長時間走行を要求する部位との距離が離れている程成績がよい.3.強化刺激呈示地点に近い部位でも付随行動はある程度生じうる.上記の事実の1と2は,偶発強化説を否定し中間行動説を支持するが,3は中間行動説のみでは説明できない.そこで,付随行動の発生機序ほ複数存在すること,反応系列自体が学習されること,報酬獲得率と維持可能な系列には均衡点があること,以上3つの作業仮説をたて,実験IIIで検討した.実験IIIではDRLRに先行する連続強化走行の試行数を群間で変化させ,DRLRは走路全体の走行時間を用いて全群同一手続きで行なった.結果は4.各群は異なった反応系列を形成した.3つの作業仮説により,各々の群の反応系列の形成過程は説明可能である.

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© 1982 日本基礎心理学会
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